トラック買取




















「ねえ、頼ってよ」
「……」
「どうして1人でなんでもかんでもやろうとするの?」
「別に、」
「仲間でしょ?あたしじゃ信用できない?」
「……」
「ねえ、ユーリ」
「お前には、関係ない」
「…なにそれ」
「……」
「ばかユーリ」




最低最低最低。お前には関係ない?なにそれ。なんなの。どうしてそんなこと言えるわけ?
いつも1人で無茶するユーリを見ていたくなくて、あたしにもなんかできることがあるかもって。
なのに、なんでそんな突き放すの?そんなに、信用できないの?仲間じゃないの?
悔しい。悔しくて涙出る。というか出た。長いこと一緒に旅してるのに、関係ない?
そりゃないだろ。そんな言い方ってないでしょ。あたしじゃ、だめなの?




















ギルドに依頼がきた。その依頼は、よくある魔物討伐。
ただ、いつもと少しだけ違うことがあった。それは、ギガントモンスターの討伐だったということ。
以前にも確かにあった。冒険王のリッチからのギガントモンスター討伐依頼だ。
しかし、それはもうすべて討伐し終わった。リッチからも新しいギガントモンスターの情報は
なく、確かに終わったと思われた。
だが、日々世界は変化するもので、新たなギガントモンスターの出現も考えられなくもない。
結果、こうして討伐依頼がきたのだから。そして、我ら凛々の明星はその依頼を受けた。
メンバーはみな正義感が強いし、引き受けるのは当然と言ったところである。
こうして、あたしたちはギガント討伐に出発したわけだが、なぜかユーリの様子がおかしい。
口数はいつもより少ないし、どこか上の空だ。なにか悩み事があるのだろうか。
彼は1人で抱え込むくせがあるので心配していた。いつも以上におかしい彼の様子がどうしても
気になり、討伐前日の夜に、彼に話しかけたら冒頭のようなことが起こった。
どういうこと?ユーリは、誰かに心配かけたくなくても、あんな突き放す言い方なんてしなかった。
それなのに、お前には関係ない?いやいや、関係なくねえよと言ってやりたかったが、怒りで
それがポーンっと飛んでしまった。なので、結局なにも聞き出せずに不満だけが残った。
なんでも話してほしいんだよ。守られるばかりはいやなんだよ。あたしにもあんたを守らせてよ。
だから、1人で悩まないで。おねがいだから、あたしにも頼ってよ。寂しいじゃん。
ユーリが勝手にやろうとするなら、あたしだって勝手にするからいいよ。ばか。




「カロル」
「ん?なに?
「あのさ、ちょっとおねがいがあるんだけど」
「なに?」
「明日さ、ギガントさん討伐するじゃん?」
「ギガントさんって…まあうん」
「それでさ、陣形なんだけど、あたしも前出ていい?」
「え!?でも危ないよ」
「それはみんな同じでしょ」
「でもユーリが、今回女の子は後ろに下げるって…」
「それ!それなのよ!」
「え?なにが?」
「おかしいと思いません?それ」
「そうかな?」
「そうだよ!だっていつもあたし前出てるし、ジュディスだって前前前だよ」
「前前前ってめちゃくちゃ出てる!でも確かにそうなんだけど」
「でしょ?というかさ、ユーリ最近おかしくない?」
「うーん?ボクは別に…」
「少年にはわからんか。でも一応女子であるあたしにはわかるんだよ!」
「ふうん?」




絶対おかしいだろう。今回だけ女子は後援だなんて。戦闘狂と言われているジュディスまで
後ろに下げるなんておかしいにも程がある。ジュディスだっておかしいと思っているけど、
たまには後ろもいいかもしれないわね、とか言っておとなしく下がった。
だがしかし、あたしはそう簡単に後ろには下がらない。下がるつもりなど一切ない。
レイヴンとかもおかしいって気がついてると思う。ていうかだいたいみんな気がついてる。
カロルは特になにも思わなかったらしいけど。まあそれは置いておいて良いだろう。
とにかく、誰が何と言おうとあたしは前に出るったら出る。覚悟しやがれ。




「そういうわけだから、これ内緒にしといてね」
「え、でもバレたら…」
「どうせ戦闘はじまったらバレるんだからいいんじゃない?」
「後でいろいろ言われるのボクなんだよ!」
「いいじゃんいいじゃん、それくらい!もし言われたらあたしがなんとかするから」
「本当に?」
「おーいえす」
「…わかったよ」
「よし!明日まで、くれぐれもバレないように頼むよ。特にユーリ」
「うん」




準備万端です。ユーリ1人にがんばってもらおうなんて思ってない。みんなで力を合わせた方が
よっぽど早い。そうでしょ?だから、あんたが怒ったってあたしはやめてやらないから。
でも、なんで今回だけそんなこと言ったんだろうか。前のギガント討伐の時だって、そんなこと
言ってなかったのに。何か知ってるの?何かを知った上であたしたちを下がらせたの?
でもその何かってなんだ。わからん。もし、ユーリが何かを知っているのだとしたら、なんで
言わないわけ?それはそれでおかしいし。だから誰かに話せって言ってるのに。わからずやめ。
誰でもいい。レイヴンでも、カロルでも、ジュディスでもエステルでもリタでもパティでも
ラピードでもいい。あたしに話してくれなくてもいい。誰かに頼ることをしてくれさえすれば、
あたしはいいんだよ。ほんとは、あたしに話してほしいけどさ。














  ◇◆◇














ギガント討伐の場所は、エレアルーミン石英林。
ここには、他にもギガントモンスターがいた。フェンリルというギガントモンスターだ。
言ったらまあ、でかいわんこだよね。憎たらしかったが。
話を戻し、フェンリルのいた場所とはまた違う、あそこよあそこ。エアルがいぱーいのとこ。
なんだっけ、エアルクレーネ?あそこでギガントさんが待ち受けているらしい。
そのギガントさんは、情報によると飛行タイプで、人攫いをするので比較的ここに近い街の
人々は完全にびびっちゃってるんだと。そりゃそうだ。
あたしだって、もし突如現れたでかい魔物に攫われたら焦るもん。一般人は気絶するよね。
だからこそ、これはあたしたちがぱぱっとやっつけておかないとというわけだ。
そして今日もユーリは変。変というか、顔こわいっていうか。やっぱりなんか知ってるんだろう。
ちなみに予定では、ユーリ、カロル、ラピードが前衛。その後ろにはレイヴン、ジュディス、
あたし。後衛に、エステルとリタって感じの陣形を組んでいる。
だけど、昨日の打ち合わせ通りに行きますと、あたしがこっそり前に出てしまうっていうね。
まあ怒るだろうね、彼は。でも戦闘がはじまってしまえばこっちのもん。
きっと、戦闘がはじまればわかる。ユーリがなぜおかしかったのか、どうして女子を下げたのか。




















「これまたでっかいわねえ」
「レイヴンがんばれー」
「ちょ、そりゃないわよ!」
「あはは」




目的のギガントさんはギガントさんだけあり、でかいことでかいこと。しかも飛んでおる。
実にめんどくさそうである。やりますけど。やりますけどね。ばっさばさしてるよ。
見た目的にはそうだなあ。硬そう。皮膚が。黒い龍みたい。真っ黒で、目はぎらぎら。
皮膚はがっちがちで、爪がしゃきーん。頭に生えた2本の角は長くて鋭い。刺さったら危険。
背中に生えた翼はなんと4枚もあります、ばっさばっさ。さぞかし高く飛べるのでしょう。
こわいわー。とってもこわいわー。あ、よく見れば額に第3の目があるよ!すごいな。
もしかしてその第3の目を見たら石になるとか?かっちかちやぞつって。やだ。




「早いとこ、ぶっとばした方がいいんじゃない?」
「おっさん賛成ー」
「ようし、じゃあやりますか」
、ジュディ、エステル、リタ。お前たちは下がってろよ」
「はいはーい」
「わかったわ」
「わかりました」
「しょうがないわね」
…」
「なあにカロルくん」
「な、なんでもない」
「よっしゃ、突撃ー」




カロルがほんとにやるの?っていう目で見てきた。やるっつったらやるんだっつの。
ギガントさん、みんなで倒せばこわくない!それでいいじゃないか。と、あたしは思うよ。
そんなわけで出撃です。どんどんぱふぱふ。
いつものように、ユーリが先陣切ってギガントさんに飛び込んだ。横にはラピードも。続いて
カロルくんが重い武器を持ってせっせと走る。レイヴンは若干離れてユーリを援護。
ここで、満を持してあたしが前衛に合流!ひゃっふー!レイヴンの横を通り過ぎた時、彼の
驚く声が聞こえた。ちなみに、カロルは遅いので抜かしちゃいました。
あたしは体に似合わない大太刀を抱えて敵に突っ込んだ。どっこいしょー。
とりあえずギガントさんの後ろから斬りかかってみたけど、なにこれ硬い。想像よりも。
けども、まあがんばって刺してみたりした。そこで、横から怒鳴り声。




「下がってろって言っただろ!」
「うるさい!1人でどうにかしようとするなってんですー!」
「そういう問題じゃねえ!」
「じゃあどういう問題よ!」




案の定お怒りのユーリくんと言い合いながら、ギガントさんにひたすら斬りかかる。おらおら。
尻尾とか切り落としたらいいんじゃないかな。と思ったので後ろにまわって尻尾を攻撃。
援護している女性陣も魔術やらなんやらで攻撃中。




「いいから下がれ!」
「なに怒ってんの?意味わかんないから!ていうか怒りたいのこっちだし!」
「黙って下がれ!こいつはな…くっ!」
「ユーリ!」




いつになく、すごい迫力で怒るユーリに確実に理由があるのだとわかる。
どうして彼が女子だけを後ろに下げたのか。そこにどんな理由があるかはわからないけど、
言うことを聞いた方がいいような気がした。今さらだけど。
だが、それを聞こうにもユーリが吹っ飛ばされてしまった。目の前の敵をほっとくわけにも
いかないし、どうしましょう。一瞬悩んだが、やっぱりあたしがやるしかないか。




「あんたのせいでややこしくなったんだから…ねっ!」
!いいから戻れ!」
「よっしゃ!尻尾切っ…!?」
!!」
「え…?力が抜け、る」
「おっさん!早くを戻せ!」
「了解!」




ギガントさんの尻尾を切り落とした瞬間、花の香りがすると思ったら急に体から力が抜けた。
意味わからないんですけどね?ああ、どうしよう。レイヴンとユーリがこっちに向かって走って
くるのが見えるが、ギガントさんの方がこっち来るの早いんじゃない?やばい、力が、入らない。
もしかしてユーリはこれ知ってたの?だから女子下げてたの?でもそれ言っておいてよまじで。
あたし以外は素直に聞くけど、あたしはあいにくあまのじゃくにできてるから、さ。
あ、もうこれアウト。




「きゃあっ!!」
!!」
ちゃん!!」
「おっさん!をエステルに!」
「わかった!」
「ラピード、カロル、行くぞ!」
「う、うん!」
「わおんっ!」




アウトと思った瞬間ほんとにアウトだった。
そしてものすごい衝撃で、肩持ってかれた。しゃきーんっていう鋭い爪にやられました。
あたしも女の子みたいな声出せるんだなあと思ったりして。ああ、未だ力入らず。
レイヴンに運ばれて泣きそうなエステルに治癒術をかけてもらった。ごめん、色んな人にごめん。
特にユーリ・ローウェルくん、ごめんなさい。でも、尻尾落とした。剥ぐのやりたかった。
ぼやける視界の中で、ユーリがギガントさんの首を落とす瞬間が見えた。
ああ、かっこいいなあ、やっぱり。
まわりの声はあまり聞こえず、自分の息遣いがやけにくっきり聞こえた。
ギガントさんにやられた肩がすごく熱くて、燃えているようだった。これ生きてるのだろうか。
わからない。ユーリがこちらに走ってくる。険しい顔で、来た。絶対怒られる。おやすみ。














  ◇◆◇














意識浮上。目を開けると、船の中だった。運ばれたらしい。いや、ほんとにごめんなさい。
とりあえず辺りを見回して見たが、誰もいなかった。
窓から射し込む光はオレンジ色だった。というわけで、夕方らしい。
みんなはどこに行ったんだろう。部屋で休んでるのかな。でも女子部屋にあたしがいるんだから
そういうわけじゃないのか。ううん、どうしようかしら。
とにかく起き上がろうと思ったが、体が動かない。ギガントさんにやられた肩は包帯ぐるぐる巻き
で動かしにくい。ああ、ほんとにどうしよう。
と思ったらタイミング良く誰かが入って来た。エステルかな。




「…あ、ユーリ」
「……」



まさかのユーリでした。ここ女子部屋だよ。ノックしてから入ってきなさいよ。
彼は、ベッドの横にあるイスに腰掛けた。あれ、なんかすごい顔こわいよ。でもかっこいいね。
ずるい。




「ユーリ、みんなはどうしたの?っていうか、ギガントさんは」
「なんで前に来た」
「はい?」
「下がってろって言ったはずだ」
「なんの説明なしに下がれないもん」
「ジュディは下がってただろ」
「あたしジュディスじゃないし」
「屁理屈言うな、ばか」
「なによ…いっ!」
「動くな、結構ひどい怪我なんだぞ」
「起こしてよ」
「動くなって今言ったばっかだろうが」
「起こして」
「…ったく」




ユーリに無理を言って体を起こしてもらった。
だけど、1人で体を支えられなくて、ユーリに肩を抱かれる状態になった。ちょっと恥ずかしい。
しかもユーリくん、とっても良い匂いです。なにこれフェロモン?髪もさらさらだぜこのやろう。




「あいつは自分の一部が破壊された時、女にしかわからない匂いを出す」
「それで?」
「それを嗅いじまうと、体の力が抜け、麻痺状態になる」
「ふうん。で、どうして言ってくれなかったの?」
「言ったら下がってたか?」
「いんや」
「怪我、大丈夫なのか」
「ユーリには関係ない」
「…そうかよ」
「ねえ、ユーリ」
「なんだよ」
「関係ないって言われてどう思った?」
「別に」
「あたしは寂しかった」
「……」
「寂しかったし、悔しかった」
「……」
「あたしはユーリの仲間だよ。だから、なんでも言ってほしい。仲間なんだからさ、1人で
 抱え込まないでよ。話してよ、誰でもいいから」
「悪かった」
「別に謝ってほしいわけじゃないし」




ユーリの肩に顔をうずめた。
あたしは、ユーリにわかってほしかったんだよ。1人じゃない。みんながいるって。




「心配なんだよ。いつも1人で解決しようとするユーリが」
「悪かったって」
「ほんとにわかってる?あたしは、」
「お前だってすぐ無茶するだろ。だから今回だけは、大人しくしててほしかったんだよ」
「無理だし」
「結局、似た者同士ってことだろ」
「どこが」
「オレは無茶するだろうお前が心配だったんだよ」
「…そうなの?」
「そうなの。で、お前は無茶するオレが心配だった、と」
「まあ、そうですね」
「似た者同士だろ」
「そうなのかね?うーん、なんか腑に落ちないけど、とりあえず頼ってよーユーリくん」
「だったらお前もオレに頼れよ」
「頼りっぱなしだよーお兄ちゃーん」
「ばか。…お前はオレだけに頼ればいいんだよ」
「え?」




それって、なんかすごい期待しちゃうよね。期待させちゃう言葉だよね。
これってどう受け取ったらいいんだろう。どうしたらいいのかわからなくて、ユーリの顔を
こっそり見たら、こっちユーリもこっち向いていた。あれ。




「ねえ、ユーリ。それってさ、」
「おっさんとかには間違っても頼るなよ」
「ええ?」
「カロル先生にもな」
「なあにそれ」
「そういう意味だよ、ばか」
「ばかはユーリでしょ、ばあか」
「うるせえ、ばか」
「ばーかばーか」
「すきだ、ばか」
「ばー…か?」
「ばかながすきだ」
「強くてかっこよくてばかなユーリがだいすきだ」
「はは、ほめてんじゃねえか」
「だってほんとのことだもん」
「オレはどんなもきっとすきだ」
「きっとってなんだし。自信持ってよー」
「もう、無茶するなよ」
「…ユーリもね」




でも、きっとこれからもあたしもユーリも無茶をするんだろう。
それで、またお互いを怒るんだ。どうして無茶するのって。だけど、お互い同じ理由なんだよね。
あたしはユーリを、ユーリはあたしを守りたいから、だから無茶しちゃう。
お互いのために無茶してる。ばかだってまわりは思うだろうな。あたしもそう思う。
それでもやめないよ。だって、これはあたしの特権だもん。そうでしょ?




「あたしのためだけになら、無茶していいよ」
「はいはい」
「あたしもユーリのためだけに無茶するから」
「意味ねえな、それ」
「いいじゃん」
「ま、ある意味斬新かもな」




小さく笑ったユーリは、やさしくキスをくれた。
無茶したあとには、こうやってちゅーしてよ。愛のためにあたしは無茶するよ!
全部は、愛ゆえってことでおっけー?













ユークリッド









点と点







(愛ゆえだったんだね)(愛されてんなーお前)(いやいやあたしの方が愛してるけどね)
(オレだろ)(いやいやいやあたしだし)(オレだって)(あたしだって)(オレ!)(あたし!)