去年の今頃なら、夏休みひゃっふー!ってなっていたはずなのに、今年はそうもいかない。 夏期講習ひゃっふー…ってなっちゃうのもうなずけますね。 期末が終わって、気がついたら夏休みになっていた。いやーまったくもって時間が流れるのは 早いもんですわーあはあは。とかそんな余裕もありゃしない。 8月になれば暑い。ものすごく暑い。汗やばい。脇汗とか特に。制汗スプレーかかせない。 汗ふきシートとか。乙女は大変よ。まあ正直乙女とか関係なしに必要なんだけどね。 そんなこんなで暑い中予備校に通っているわけでございます。そして、あたしはここで1つ 言ってやりたい。声を大にして言ってやりたい。 「なぜお前がいるんだ小野おおおおおおおおおおお!!!」 「いちいち声張るなよ、聞こえてるっつの」 「だったらさっさと答えろボケェェェェェ!!!」 「そんなのたまたまお前と同じ夏期講習に申し込んだからに決まってんだろ」 「むかつく★なんだろうね、どうしてきみはそんなにも反抗的な態度で来るのかね!」 「お前が反抗的なんだろ」 「いやどう考えてもあんたでしょ。もっと友好的に来なさいよ!あ、うそついた。来んな!」 「が帰れよ」 「なんでだし意味わからんし小野が帰れ」 「帰ってくださいさん。はいこれでいい?」 「めんどくさそうに丁寧に言っても意味ないからね、そしてあなたが帰りなさいよ」 「なんでだよ。ここはお前が素直に帰るとこだろ。素直さがウリらしいからな」 「だーれが小野に素直になるって言ったよ。え?こら。言ってみろや何時何分地球が何回 まわった時ですかー!」 「小学生か」 「中学2年生か」 「お前いい加減にしろよ」 「それはこっちの台詞ですけど」 「お前だろ」 「あんたでしょ」 「おま」「あん」 「あんたたちうるさいのよさっきから!!」 「ひえっ!ツツツツツバキさんじゃんひさしぶりー!?」 「の知り合いか?まじびびった」 「ここ予備校なの、わかる?勉強するとこなの。子どもの喧嘩するところじゃないの!!」 「「はい、どうもすみませんでした」」 あれ、なんかエステルの役をツバキさんが引き継いでる?よく見ればツバキの横にはモニカが 微笑んでこっちを見ているじゃないか。久しぶりだー。そして久しぶりに会ったのにも関わらず ツバキさんは容赦なくお怒りになったとということですね。なるほど。 でもね、あたしは悪くないって思いたいんだよ!だってだってあいついつもあたしを小馬鹿に するから…!だからあたい、つい殴りたくなってしまうのですわ!ぷんすか! 「えと、ツバキさんもこの夏期講習とってたんだね!あーていうかひさしぶりー!」 「ったく、うるさいバカはだれかと思ったらあんただし。まあ、予想範囲内だけど」 「それはそれでいやだ!!」 「だったらおとなしく勉強しなさいよ」 「ですよねー…すみません、ほんとに。あの、反省してます、はい」 「にしても、本当久しぶりだよね」 「ねー!」 「エステルは夏期講習来てないの?」 「来てるよ。でもコースが違うんだ」 「あー国立とかそっちのコース?」 「ま、そういうことです」 「あ、そうだ。今日これ終わったらご飯食べに行こうよ」 「いいね!モニカも行くよね?」 「うん、行くー」 ここは小野のことなんか忘れて、講習終わりのガールズトークに花を咲かせてなんぼやねん。 という気持ちで行きたいと思います。あーもうがんばれあたし! ◆◆◆ 「終わった…!」 「本当、あんたたち静かに小競り合いしてたわね」 「地味なことでもこう、あいつに負けるのはくやしいんでね!」 「でも喧嘩するほど仲が良いって言うから」 「ばーか言ってんじゃないよモニカさんんんんんん!!あいつと仲が良いなんていやだ!!」 「まあ、そんなこと置いといて早くご飯食べに行こう。もうお腹すいたー」 「そんなことって言われた…」 予備校近くのサイゼリアに入りました。女子高生にやさしいファミレスですね。 夏休みというだけあって、店内は若者が多かった。ま、夏休みじゃなくても若者だらけだけど。 予備校帰りの学生が多く見られますね。はい。 そして席に着いたあたしたちはそれぞれ注文して、ドリングバーで喉を潤す。 「最近どうよーみなさん」 「なに、にやにやしてんのよ。気持ち悪い」 「ひどいよツバキさんんんん!」 「そういうはどうなの?というかって好きな人いるの?」 「あらやだモニカったら意外と食いつくわね!きゃっ!」 「いいから早く言いなさいよ」 「焦らさせてよ!ちょっとはあたしにも焦らさせてよ!」 「うん、わかったから早く言いなよ」 「はい…います」 「へえ!誰ー?どこのクラス?同じ学年?それとも後輩とか?」 「もしかしてモニカ、こういう話すごくすきだったりする?」 「うん、大好き」 「あらかわいい★って、うん、秘密!」 「なんでよ言いなさいよ、ここまできたら」 「うんうん、聞きたい!」 「ええー」 どうしましょ。この2人になら言ってもいいかしら。そうだよね。仲良いし、良い子 だし、別に言っても問題ないよね。というか恥ずかしい。なんか恥ずかしい! 自分のすきなひとをカミングアウトって結構恥ずかしいものなんですね!きゃっふー! 「あとで言うからとりあえず2人の近況報告してクダサイ」 「なんでやねん」 「まさかの棒読みツッコミ!」 「いいじゃない、ツバキ。私は好きな人いるよっていうか、その、彼氏できたんだ」 「ぶふっ!まじすかモニカちゃーん!いつの間に!」 「わたしもいるけどね」 「え、ええ!?なにそれなにそれ!聞いてないよ!」 「聞かれてないもん」 「ひどい!あたしとの仲はその程度ってことなの!?」 「なにこれめんどくさい」 「うわーん!」 「違うんだよ、!その、私もツバキも最近彼氏できたんだ」 「え。そうなの?」 「うん、だからそのことを今度とエステルに話そうって言ってたんだ。でもこういうの 結構言うの恥ずかしいから」 「まあ確かに」 びっくりしたわよこんちくしょー!去年の2人はどこへ行ったというの!すっかり新たな 好きな人つくって、あげくの果てにはちゃっかりゲットしておる!なんてこったい! でも2人ともかわいいからなあ。いいないいなー。うらやましいんだぞう。 「それでそれで?2人はどこの誰とお付き合いしてるんですう?」 「私は、そのー、ユーリ先輩のこと好きだったじゃない?」 「はっ!まさかユーリ先輩とつつつつつきあってたりするの!?」 「まさか!確かにユーリ先輩のことは好きだったけど、あの後ちゃんとあきらめたの」 「あ、そうなの」 「でね、私部活の先輩にユーリ先輩のこと話してたんだ。それで、まあ相談しているうちに その先輩のこと気になって、向こうからつい最近告白してきてくれて、うん」 「なにそれうらやましーーーーーーーーーーーーーい!!!」 「そういうわけで、1こ上の先輩と付き合ってます。えと、大学生の」 「へえ!しあわせそうですね!うわーあたしにもそのしあわせをわけてくれよー!きゃっふー!」 「なんであんたがテンション上がってんの」 すてきな恋のお話じゃあーりませんか!ベタだけでもそれがイイ!それがイイんだよ! ベタだろうがなんだろうかすてきな恋の物語には変わりないんですよう!ひゃっほい! ほんとなぜだかあたしがテンション上がってきたよ急に。 でも、よかった。モニカがしあわせならあたしはそれでいい。うれしいです。 なんだかとってもうれしいんです。やっぱり、恋する乙女の成就っていうのは良いものです。 同じ恋する乙女としてあたしは自分のことのようにうれしいのです。はっぴー! 「じゃ、次ツバキさん行きましょうか」 「…本当に言うの?」 「言わないならあたしも言わなーい」 「あーもうわかったわよ!後輩と付き合ってる」 「ま じ か !年下キラーっぽい顔してるもんね!」 「どんなほめ方してんのよ」 「それでそれで?」 「まあ図書館ではじめて会って、それからよく話すようになってって感じかな」 「すってきー!!どっちから告白したんですかあ?」 「言い方うざす。…わたしから」 「うっそ、ほんとに?ツバキって積極的なのね!あたしがなんかどきどきした」 「ま、そんなわけでこんな時期だけど、しあわせでーす」 「いいないいなーずるいずるいずるいずるい!」 「しつこい」 年下に甘えちゃうツバキがちょっと想像できるんだな、これが。 でも自分から告白だなんてやるわね。あたしも先生に告白することになるだろうから、参考に させていただこうかしら。どんな風にしたら相手は落ちますか。なんつって。 あ、年上用じゃないからだめかな。通用しないかもしれない。やっぱり先生用に対策を練って おいた方がいいかもしれん。 「で?わたし達は話したんだから、ちゃんと言いなさいよ」 「うんうん」 「…誰にも言わない?」 「誰に言うってのよ」 「言わない言わない」 「あのね、」 「……」 「うんうん」 「実は、」 「……」 「うんうん」 「あのあの、」 「……」 「うんうん」 「きゃっ!やっぱり恥ずか」 「だああああ!!!早く言わんかいこるぁ!!!」 「いいいいいいいいま言うところ!!!」 こわい!ツバキがこわい!想像以上の般若顔で迫力がものすごい! まさに3Dやねん!とか思ったら、心の中を読んだかのごとくすごいにらまれた!!ごめん! 「いや、ほら、あれです、レイヴン先生がすきなんです!(小声)」 「ああそう」 「うわあ素敵!」 「あれ、なんか想像よりもあんまり盛り上がらないのが残念に思うのはなぜでしょう」 「さすがに先生は大変だろうけどがんばれ、あんたなら大丈夫よ」 「うん、私もなら大丈夫な気がする」 「どういう根拠で?」 「根拠なんかあるわけないじゃん」 「さいですか…」 「根拠はないけど、なら先生だって落とせちゃうっていう自信が、なんでかあるんだよ。 私も、ツバキも」 「なんで?」 「あんたは、いつもまっすぐで、単純だけどそのばかみたいな素直さが胸に響くのよね」 「ほめられてんだかけなされてるのかちょっとわからないんですけども」 「ほめてるよ!だって、私達ものおかげで勇気を出せたんだもん。それから、新しい 恋にもまっすぐに行けたんだよ」 「…そう?」 「だから、あんたは自信を持ってぶつかっていけばいいの。それがでしょ?」 「うん!えへへ!ありがとね、ツバキ、モニカ」 「がんばってね、」 「しょうがないから応援してる」 もう、あたしの周りはみんな良い子ばっかりでどうしましょう! エステルもツバキもモニカも、ユーリ先輩もフレン先輩も、みんなあたしを甘やかすんだから! でも甘やかされてる分、いつもみんなのためになにかしてあげたいって思ってるよ。 あたしにできることならどんなことだってやる。だから、これからもよろしく。なんてね。 「あー久しぶりのガールズトークはたのしかったね」 「そうだね、また講習のあとご飯食べに行こうね」 「その時はもっと詳しい話しなさいよ。あんたの好きな人のこと」 「いやーん恥ずかしいよう!」 サイゼリアに居座ったあたしたちは、やっとこさ重い腰をあげて帰ることにした。 にしてもたのしいね、ガールズトーク。女子にしかわからないだろうこのたのしさ。 なんで女子と男子ってこういうところが違うんだろうね。男子は絶対こんな長く話できない だろうに。もったいない!お話するのとってもたのしいのにねー!ふふふ。 今度はエステルも一緒にガールズトークしたいなあ。あ、勉強もちゃんとしますよう! 「先輩!」 「え?あれ、アラシくんじゃん」 「はい!講習終わったんですか?」 「うん、今日の分はとっくの昔に終わって、友だちとご飯食べてたんだー」 「そうなんですか。あ、はじめまして、1年の時枝アラシです」 「ご丁寧にどうも、三田ツバキです」 「私はモニカ・ノリスです」 「この2人は文系なんだよー。でも講習で同じコースだったんだ」 「よかったですね、先輩」 「うん!まあめんどくさいやつも1人いるんだけどね…。そういえば、アラシくんはどして ここにいるの?あ、コンビニ帰りか」 「はい、今日発売の雑誌を買いに行ってたんです」 「そかそか、夏休みを満喫中かい?」 「まあまあ満喫してます」 「うらやますい!今思ったけど、もうすぐ臨海学校じゃない?」 「明後日からですね」 「うわー沖縄いいなあ。ぜひたのしんできてくださいませ」 「先輩の分も楽しんできますね。お土産期待してて下さい」 「うわあい!ありがとー!さすがアラシくん良い子!」 「あはは、それじゃあ俺はこの辺で失礼しますね」 「うん、じゃあまたねー」 「はい、また!」 いやー良い子だ。やっぱりアラシくんは良い子だ!どっかの小野って人とは比べものにならない くらいね!まったく見習ってもらいたいものですわーあの純粋さと爽やかさを! 「あ、なんかごめんね2人とも」 「別にいいわよ。それにしてもあんなかわいい子いつの間につかまえてたの?」 「つかまえってってツバキさん。彼氏じゃないよ!」 「知ってるわよ。さっきあんたの好きな人聞いたばっかりなのに、あの子が彼氏とか言ったら 今すぐ顔面をグーで殴ってるわよ」 「まじか」 「でも成長したらすごいかっこよくなりそうだね」 「だよね!あたしもそれ思ったわー。でも先生にはかなわないけどね!きゃっ言っちゃった!」 「…ばかか」 「ふふふっ」 「さーて、あたしホームあっちだから。またねーん!」 「じゃあね」 「ばいばーい」 今日はツバキとモニカに先生のこと話せてよかったなあ。 これからは2人にも先生のこと相談とかできるね。先生のことあんまり人には相談できるような ことじゃないから、ほんとよかった。 エステルとかユーリ先輩にも話せるけど、やっぱり相談できる人は多い方がいいもんね! まあフレン先輩は言ってないけど。言ったら言ったでめんどくさそうだしね。ごめん★ さー、明日もがんばろうっと! 「モニカ」 「ツバキ」 「やっぱりそうだと思う?」 「うん、絶対そうだと思う」 「だよねえ。は全然気が付いてないみたいだけど」 「でもしょうがないんじゃない?は別に好きな人いるもん」 「そうだけど。ややこしいことにならなきゃいいけどね」 「うん…」 友人たちは、恋する少女の行く末を案じる。 朱色の太陽が支配する夏で、少女は海を目指す。 |