3月8日、本日ハ卒業式ナリ。 朝からため息100回超えしているんじゃないかな。それくらい今日という日が来なければ いいと思った。だって、今日はユーリ先輩とフレン先輩が学校から去ってしまう日だから。 なんてこったい。寂しい。そんなの寂しいよう。しょうがないけどさあ。 なにごとにも別れっていうのはつきものなんですから。別に永遠の別れじゃないんだけどさ、 それでもいつでも会えるっていうのがなくなっちゃうんだもん。 「寂しいねえ」 「そうですね。でも会おうと思えば会えますよ」 「そうだけどさあ…学生服のユーリ先輩とかジャージ姿のユーリ先輩とか見れなくなっちゃう」 「…」 とか言っている間に卒業式がはじまってしまった。時間よ止まれえええ! フレン先輩が答辞を読んでいた。こっそりユーリ先輩を見ると、いつもは寝ているのに真面目に 答辞を聞いていた。やっぱり卒業式は特別なんだろうか。 あたしはまだ送る側だから実感が湧かない。来年、自分の番になったら実感するのだろうか。 あたしはもう、生徒じゃなくなるんだと。それってうれしいようで、うれしくない。複雑。 生徒じゃなくなれば、レイヴン先生とも普通に恋ができるかもしれない。でも、生徒じゃなく なれば、先生と会えなくなる。それはいや。でも卒業したい。やっぱり複雑です。 卒業する先輩たちの席からはすすり泣きが聞こえる。主に女子が泣いている。 そんな中、ユーリ先輩やフレン先輩はすごくかっこいいと思う。ビジュアルの話じゃないよ。 なんか、凛としていてすごくかっこいいです。あたしも先輩たちのように凛として卒業できる だろうか。彼らのように、これからのことを見据えて卒業できるのだろうか。 先輩たちを後輩たちが見送る。先輩たちは泣いている。後輩たちも泣いている。 みんな別れを悲しんでいる。でもあたしは悲しみたくはない。だって悲しい別れじゃないから。 良い別れだと思う。そりゃあ寂しいよ。でも新しい場所へと歩く先輩たちを悲しみの涙で 送りたくない。まあ涙は出てるんですけど。ぽろぽろぽろり。 「ユーリせんぱあい…」 「おいおいお前がそんな泣いてどーすんだよ」 「だって…学生服の先輩たちが見れないと思うと残念で仕方がな」 「そっちかよ!」 「うそです寂しいですううううわああああああ!」 「だから泣くなっての」 「これが泣かずにいられますか!ぐすぐす」 「ほら、これやるから」 「うええ?ネクタイ…」 「オレのネクタイ、お前にやる。だから泣きやめ」 「ま じ で か !ってユーリ先輩いっつもつけてなくないですか?」 「いらないのか」 「いりますとも!だれもいらないとは言ってないです!」 「そーかよ。じゃ、大切にしろよ。これ、死守したんだからな」 「…う、うわあああん!!」 「結局泣くのかよ」 「ユーリ先輩ユーリせんぱああい!」 「ったく、今生の別れじゃあるまいし」 とか言いつつやさしく抱きしめ返してくれるところがこの先輩の最高にかっこいいところで あり、最高にだいすきなところであります。 子どものように泣くあたしの背中をたたく先輩の手がやさしくて、また涙が溢れる。 ちくしょう、なんでこの先輩はこんなにやさしいのですか。だいきすきだあああ!!! 「フレン先輩…」 「、目がうさぎみたいだよ」 「そりゃ、なりますよ!先輩たちがいない学校は寂しいです」 「いつでも会えるだろ?」 「呼んだらすぐ飛んで来てくれますか?」 「もちろん」 「ほんと?」 「うん。がもし、勉強に行き詰ったらすぐ飛んで行くよ」 「いや、それは間に合ってます」 「遠慮しなくていいんだよ」 「だからそれは遠慮します来ないでください。…でも」 「うん?」 「寂しい時はいつでも来てください」 「ああ、ユーリと2人で飛んで行くよ」 「はい!」 あたしはユーリ先輩とフレン先輩に会えてよかった。この学校で会えてよかった。 先輩たちの後輩でよかった。一緒の時間をたくさん過ごせてよかった。 でも、これは永遠の別れじゃないから、悲しくはない。あたしはいつだって先輩たちに 会いに行けるから。 あたしは、自分の胸元についているリボンを外し、ユーリ先輩にもらったネクタイをつけた。 「ユーリ先輩、フレン先輩。卒業、おめでとうございます!」 「おう、さんきゅ」 「ありがとう、」 ほら、笑ってお別れできるよ。 ◆◆ 3年生が無事卒業し、次はあたしたちが3年生になる。 と、その前に2年生最後のイベントが残っているんですねえ。ホワイトデー。 今日はその前日です。そして休日です。明日は学校。つまり、先生からもらえ…るのか? だって、先生ってば今年はめっちゃもらってたし。お返しするなら大変なことになるよね。 ううむ。それってどうするつもりなんでしょうか。想像できません。 ブルルル。あひゃっ!あたしの携帯だた。 「もももしもし」 『おう、オレだ』 「オレ?おれおれ詐欺?」 『オレの携帯登録してんだろ』 「でした!で、どうしたんです?ユーリ先輩!卒業してからまだ6日しか経ってませんよ! もうあたしが恋しくな」 『今から外出てこい』 「スルー!相変わらずスルースキルが高いこと高いこと!って今ですか?」 『早く出てこいよ。じゃあな』 「ちょいちょいちょーい!まだ話終わっ…てしまた」 もう!ユーリ先輩ったらオレ様なんだから!だが、それがイイ! というわけで、とりあえず先輩の言うとおり外に出てみることにしたぜ!いえい! 「よう」 「ユユユユーリ先輩!なぜここに!」 「いやだいたい想像つくだろ」 「ま、そうなんですけどね!で、どうしたんですか?」 「ほら」 「ん?こーれーはー!?まさかこれのためにあたしのお家まで来てくれたというのですか!」 「おう。感謝しろよ?」 「ヒーハー!」 「意味がわからん」 思わずヒーハー状態になったあたしです。明日のホワイトデーのために、わざわざ前日の今日、 ユーリ先輩は来てくれたんですってよ!明日はあたしが学校あるからという配慮ですね! なんてすばらしいんでしょうか!やっぱりあたしの中のキング・オブ・先輩はこの人です! フレン先輩、ごめんごめんご★キングの座はユーリ先輩に渡しちゃいました! で、話を戻しまして、ユーリ先輩がくれたものというのが、ななななんと!小さな袋? 「これ、なんですか?」 「開けてみろよ」 「うい」 とりあえず手のひらサイズの紙袋を開けてみることにした。ガサガサ。うん? これは!ブレスレットでござる!皆の衆!これは巷で噂のブレスレットでござるうううう! パワーストーンがぎっしぎしのブレスレットでござりました! 「うわーいうわーい!ユーリ先輩ありがとうううううう!」 「おう。大切にしろよー」 「了解でっすううううふふふ」 「うまくいくといいな」 「なにがですか?」 「おっさんとの行く末」 「あひー!恥ずかしいですよう!もう!」 「いや、まだなにもないだろうが」 「ま、そうですけどー…」 「受験とかも大変だろうけど、そこらへんうまくやれよ」 「はい!なんかあったらユーリ先輩に泣きつきますね!」 「断る」 「な ん で !?」 でもねでもね、先輩はこうは言いますけどなんだかんだ面倒みてくれるのですよ! あたしは知っている。もう誰もが知っている先輩のツンデレ。これを言ったらまた怒るから 言わなーい!むふふ。 そういえば、後日フレン先輩にもお返しいただいたんですよう。お菓子詰め合わせ。 それもただのお菓子詰め合わせじゃございませんよ。相手はフレン先輩ですよフレン先輩! いやーさすが金持ち!世界のお菓子詰め合わせです。そんじょそこらの駄菓子屋さんとは訳が 違います。豪華なお菓子詰め合わせでした。 アメリカの着色料パネェ…!っていう怪しいお菓子とかじゃなかったので安心です。 安心、そして安全なお菓子だった。ありがとうフレン先輩! ◆◆ バレンタインデーもそうだったけど、ホワイトデーも生徒たちがちょっと浮足立っている。 若干いつもよりテンション高めというかなんとうか?そんな感じよね。 バレンタインは男子がめっちゃそわそわしてたけど、ホワイトデーは女子がそわそわしてる。 えー、もらえるかなあお返し。もらえるって!そうかなあ。というような会話があちこちで されているようです。正直、周りなんかどうでもいいんですけどね。 だって!あたしも大勢いる恋する乙女の中の1人なんですから!というわけで、顔には出して ないものの、心の中はどっきどきですよ。思わず吐きそうになるくらいどっきどきですよ。 いやそれはどうなんだヨ★っていうツッコミが今すごいほしいなと思いました。 とかなんとかで、教室に到着してしまた。どきどきどき。どきどき。どきどきうるせえええ! 「おはよ、エステルちゃん」 「おはようございます、。なんだか今日顔こわばってますね」 「あらやだ、ほんと?なんかいつもより変に緊張してしまってねえ」 「先生にもらえるか、心配ですか?」 「いや、先生にもらえるか否かというか、他の人のことで気になっちゃってさあ」 「今年はたくさんもらっていたみたいですからね」 「そうそう。ほんと困るわあ」 「大丈夫ですよ!の方が特別です」 「エステルちゃん…!良い子!」 思わずフォローしてくれたエステルをぎゅってしてぐりぐりしちゃいました。 もうこの子は!なんてかわいいんでしょう!あたしはこの子がいてくれてしあわせですう! エステルに癒された心はさっきよりも強くなりました。きっとそう簡単にはブロークンハート にならないでござりましょう。あたしはそう信じてる! そして、あたしのレベルが上がったところで教室にレイヴン先生が入ってきた。 いらっしゃーい!覚悟はいつでもできてるよ! はい。気になったこと1つ。 先生が教室に入った時に、クラスの女子が、先生がきたよ!きゃっ☆っていう感じになった こと。その時のあたしはさぞかし冷めた眼をしていたことでしょう。ブリザード! それまであたしもちょっとまだ緊張してたし、いろいろどきどきな気持ちだったけど、その 女子たちを見たら冷めた。熱々のおでんが一気に冷めた。うわあ、これで大根も食べれるね! 興ざめとはこのことか!違う?それは違う?いやもうなんでもいいわー。どうせ、あたしの 小さなやきもちですから!小さな餅焼いて食べるからいいよ!きなこをつけてな! 1人悶々としているあたしを置いて、HRは終わってしまいました。そしてより一層女子たちは 先生にもらえるかもどきどき、きゃっ☆だそうです。破 滅 し て し ま え ! 「あ、そうだ。先生にチョコくれたお嬢さんたち、ちょっとこっちきてー」 なんと!ここで先生自ら集合をかけました。 それにまんまと釣られた女子は、えーなに先生ー?とかちょっとわからないフリして小走りに 教卓に向かうところがよりむかつく!なんかもう胃が爆発しそうだよ!いっそお前らを巻き添え に爆発してやろうか!ってぐらいむかむかしてきた。胃に穴が開いちまうよ! そんなわけで、女子に対しては心の器が小さめにできているあたしは、無駄に反抗してみた。 あえて先生のところに行かなかった、ということですね。でも様子はうかがうよ。じと目で。 なんか横にいるエステルが心配そうな視線を送っているけど、悪いが無視して先生と女子たち を見させていただきます。このやろう! 「先生なにー?」 「ほい、これバレンタインのお礼」 「なにこれかわいいー!先生これ自分で買ったの?」 「そりゃそうよー」 「うけるー!なんか先生がたくさんこれ買ってるのとか想像できるー!」 「若人に紛れておっさんがんばったわよ」 「あははっ!先生えらーい!」 ヨカッタネー。オ嬢サンタチヨカッタネー。頬ヲ染メテ、アラマアカワイイコトー。ウフフ。 なにあれ、すごいたのしそーう。でも全然混ざりたくなーい★ウケルー。 お嬢さんたちが先生からもらったものは、女の子らしいラッピングがされたお菓子。中には 甘いお菓子が入っているのでしょうね! なんと言ってもお嬢さん方がさりげなーく先生にボディタッチしているところがなんていうか あれよね。うん、あれよあれ。すっごく、むかつくんだZE! 先生にボディタッチした瞬間をあたしは見逃さなかったよ。そして手に持っていたプリントを 思わずぐしゃってやりました。ぐしゃって。春休みの過ごし方のプリントがぐしゃですよ。 知るかそんなもんんんん!過ごし方なんぞあたしの自由だばかやろう! あーもう!これもどうせ放課後まで続くんでしょうね。ああ、そうだろうね。あーあ。 ◆◆ まじで続いたよ。放課後まで。今までで1番むかつく午前授業でした!あははのは★ ちょ、先生どんだけ人気なの。あたしびっくりたまげた。玉手箱開けたい。意味わからん。 でさ、1番気になったこと言ってもいい? あたしは先生のところにお返しをもらいに行ってないわけですよ。なのに、なんで先生は あたしを呼んでくれないのですか。なんて傲慢なちゃん!って話ですけどね。 でもさ、来いや!なんで来ないのだよ!来なさいよ!いつでも来たらよかったよ! 先生、呆れてしまいましたか?こんな子どもっぽいやきもちで意地を張ったしょうがない あたしのこと、きらいになってしまいましたか? それでも、いやだったんです。とってもとってもいやだったんです。だって、先生のことが 誰よりもすきなんだもん! 怒りを通り越して自己嫌悪。しょぼーんな空気を纏いながら、秘密の花園に行こうとしました。 そしたらなんか呼びとめられた。どなたでしょうかしょぼん。 情けない顔を上に持ち上げると、そこにはなんとも顔の整った男性が!デューク先生だた。 最近やたらこの先生と話す機会が多いような?話をしてるかと言ったらそこは疑問ですけど。 会話って言っても全然しゃべらないし、デューク先生が。いいんですけどね。 「デューク先生、どうしたんですか?」 「これを」 「はい?…え、これ、くれるんですか?」 「ああ」 「なんでですか?」 「今日はホワイトデーだと聞いた。先月、お前にチョコを貰った」 「そういえばそうでしたね!じゃあ、ありがたくいただきます!」 「ああ。チョコ、美味かった」 「どういたしまして!」 デューク先生って癒しだよね。マイナスイオンとか出てそう。のほほん。 こう、柴犬みたいな。ちょっとおとなしめのわんこです、かわいがってくださいって感じ。 ちなみにデューク先生がくれたのは、ねこのキーホルダーだった。先生、やっぱりねこすき なんだね。うん、よくわかった。でもかわいいのでさっそくカバンにつけてちょっとHP回復。 さーとりあえず秘密の花園へゴーゴゴー。 ぶへー。なんかなあ。なんだかなあ。 あたしっていつも先生に勝手に振り回されてるよね。ちっちゃなことでもやきもち焼いて、 でもそれはただのわがままで、自己嫌悪で悲しくなって。そんなあたしをすくいあげてくれる のはやっぱり先生で。だけど元をたどるとそれって先生が原因でへこんでるのに、持ち上げる のも先生って、とんだループだよね。ぐるぐるぐるぐる、ずーっとまわってる。 それがいやならやめるしかない。だけど、やめられるほど簡単な気持ちじゃなくて。 とっても複雑だよなあ。はひー。 「ちゃーん」 落ち込んでいる時にはいつも先生がやってくる。それで落ち込んでたことが吹っ飛ぶ。 我ながら、なんて単純なんだろうと思います。仕方ないことですけどね。 「なんですかーせんせー」 「あら、なんかあったー?」 「べっつにい」 「むくれてるじゃなーい!じゃあそんなちゃんに…じゃーん!」 「なんですか、それ」 「ホワイトデーのお返し!」 「ウレシイデス」 「ちゃん!たぶん自分で思っているより棒読み!」 「そんなことないですう」 「なあに、うれしくないの?」 「だからうれし…ん?あれ?これ2つありますよ」 「そうよー」 はて?なんで2つあるんじゃろ。 1つは教室で女子たちに渡していたお菓子の箱。それとは別になぜかもう1つある。 謎の物体もどうやらお菓子のようだ。というか、なんか重い気がする。 「こっちは、なんですか?」 「俺様特製クリームブリュレ!」 「はい?」 「知らないのー?クリームブリュレ!」 「いや、知ってますけど。じゃなくて俺様特製って?」 「その名の通り、おっさんが作ったクリームブリュレ!」 「え」 「もう甘いもの作るとか大変だったわよう。何度挫折しそうになったことやら」 「…先生の、手作り?」 「そうよ!よーく味わって食べてちょーだいよ?」 「他の子にも作ったんですか?」 「まっさかー!こんなのいくつも作れないわよう。ちゃんだけ特別よ!みんなには 内緒よ?」 「どうして、ですか?」 「んー?おっさんとちゃんの仲だし?」 「なんですかそれ」 「もういいじゃないのよー!ぷんぷん!しかも器にしてあるマグカップもプレゼント! ちゃん、相当ラッキーなのよ」 「あははっ!ありがとうございます!」 特別、か。あたしが望む特別じゃなくても、今はそれでいいかもしれない。いや、今はそれで いいんだって納得しなきゃいけないよね。でもやっぱりうれしいや! 苦手な甘いものをあたしのために作ってくれて。手作りだよ手作り!ほんと、先生はあたしを 喜ばすのがとっても上手みたいです。 家に帰ってから味わって食べようと思った。でも少しだけラッピングを解いて中身をみたら 赤いリンゴがワンポイントにはいっているシンプルなマグカップに、おいしそうなクリーム ブリュレがおさまっていた。 先生を見ると、ちょっと得意げな、でもすごくうれしそうな顔をして微笑んでいた。 すきすぎると、胸ってこんなにも痛いんだね。きゅんきゅんしすぎて苦しいよ。胸が、痛い。 だけど、しあわせな痛みだなあって今は思う。だってうれしくて、すきすぎて、胸が痛いとか 悪くないでしょ? 「先生」 「なーに?」 「来年は、あたしも卒業だよ」 「そうねえ…」 「寂しい?」 「そりゃあ、寂しいわよ」 「ふうん。そっか」 「もう卒業する気でいるのー?まだ卒業はできないわよー」 「わかってますう!…でも、」 「ん?」 「なんでもなーい」 「なにそれ気になる!」 でも、別れは必ずやってくる。だからそれを考えると、寂しい。 あたしはその時、なにを思うのかな。先生は、なにを思うのかな。寂しいって思ってくれる? ほんとに寂しいって思ってくれる?あたしがいなくなって、寂しいって。 卒業したらあたしは先生の生徒じゃなくて、先生も先生じゃなくて。そうしたらなにかが 変わるのかな。それとも、忘れられちゃうのかな。 いつか、ひさしぶりに学校を訪れて、懐かしいなあなんて思いながら校舎を歩いて。 たまたま先生に会えたら、顔は覚えててくれているかもしれないけど、名前とか、忘れちゃう のかな。遠い記憶にしまわれちゃうのかなあ。 先生、あたしは忘れられちゃうことが1番寂しいよ。なかったかのようにされちゃうのが、 すごくこわいよ。どうか、先生の記憶にずっといられますように。 あたしのこの想いが、先生に迷惑をかけなければいいな。 残り1年、鮮やかな日々を送れますように。モノクロの毎日なんか送りたくない。 最後まで、後悔することのない時間を過ごしてみせるよ。 覚悟 を決めろ! あたしは 武器 を掴み、駆る。 |