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目が覚めると、真っ白い天井が見えた。視線を横にずらすとレイヴン先生がやさしい眼で
あたしを見ていた。窓から射し込む光は、橙色。もう、夕方だった。
あれれのれ?あたしってばどうしたんですっけ?寝過ぎたためか、頭がぼーっとする。




「ほい、これ飲みな」
「え、あ、ミルクティー…あったかい」
「おしるこはまた今度ね」
「おしるこ…?あ!そうだ、マラソン大会だった、今日!」
「そうよう。ほんとちゃんはおっさんを心配させてばっかりねえ」
「あはは、ごめんなさひ…」
「いいのよ。もうお腹痛くない?」
「え?あ、はい。あれ、なんでお腹痛かったこと知ってるんですか?」
「あーそれはそのーいろいろと」
「?」
「えーと、もう起きられる?」
「はい、もう元気です!」
「そ。じゃあこれ着替えね。着替えたら呼んで。家まで送って行くから」
「だいじょぶですよー。1人で帰れます」
「だめだめ!今日はおとなしく送られときなさい」
「…はあい」




なんかよくわからないけど、マラソン大会でぶっ倒れた後、保健室へ運ばれ、今に至る?
そんな感じなのかな。レイヴン先生の前でぶっ倒れたから先生が運んでくれたのかしら?
なにそれ!ハッピー!でも記憶にない…。あたしのばかばか!なんつーもったいないことを!
もったいないお化けでてしまうよ!あひー…もったいない。
とりあえず着替えをぱぱっと済ませ、せんせーいと呼んでみたんだじぇ。




「ん、終わったみたいね。忘れ物はない?」
「ないです」
「よし、じゃあ帰りましょーか」
「はい」




どうしてこうなったんだろうね。まあしあわせですからいいんですけどね。問題ないよ。
しあわせなら問題ないヨ!わーるどぴーす!世界平和万歳。
そういうわけで、あたしは先生に送ってもらうことになって浮足立っています。るんるん。



















先生との帰り道は穏やかな空気が流れていました。他愛無い話をしながらのんびり歩いて、
とってもしあわせでした。なんだか、生徒とか先生とかそういうものを忘れてしまうような
そんな時間。あたしは少なくともそう感じたのでした。
駅までで良いって言っているのに先生は家まで送る!と頑なだったので、結局家まで送って
もらった。




「今日はいろいろお世話になりました!ありがとうございます」
「いえいえ。夜も冷えるからちゃんとあったかくして寝なさいね」
「りょーかいです」
「それじゃあまた学校でね」
「はあい」
「あ、そうだ」
「どしたんですか?」
「これ忘れてた」
「はい?」
「あげるー」
「うわわっ!あめがいっぱい…」
「具合悪いのにがんばったごほーび!ま、今度あんなことになったら怒るけどね!」
「ええー」
「そりゃそうでしょ!ぷんぷん!…とにかく、おつかれさん」
「ふふふ」
「なーに笑ってんの。じゃ、帰るわね」
「せんせいありがと!また学校で!」
「はいはーい」




先生はあめ玉をあたしの手のひらいっぱいに残して帰って行きました。どこにこんなに
たくさん隠してたんだか。でもありがたくいただきます。うふふ!
――と、以上がぶっ倒れた後のお話でした。いわゆる後日談ですね、はい。
そういえば、そのまた後日にジュディス先生にもお世話になったのでお礼しに行ったら、
こないだのおじさま面白かったわようふふって言ってた。なにがおもしろいの?って聞いた
けどさすがに答えてくれなかった。秘密ですってー。気になるううう。
でもまあ、いい思いをさせていただいたので許すとしよう!そして次はバレンタイン!
乙女の決戦日なり!血の雨が降るぜ…うそです。





























「これが学生服のユーリ先輩に渡せる最後のバレンタインだなんて…!あたしは悲しゅう
 ございますお館様!」
「最後のってまだ2回目だろうが。それからお館様って誰だ。むしろお前が誰だ」
「いやーこれからも渡す気満々なんですけど、学生服のユーリ先輩っていうのがポイント
 なんですよねえ」
「ふうん」
「これからは私服のユーリ先輩にしか渡せないんですよ!悲しいですう。あ、でもパジャマ
 姿のユーリ先輩に渡すのもいいなあ。ぐへぐへ」
「安心しろ、そんなん一生訪れないから」
「なん…だと…?」
「で?早く出せよ、チョコ」
「カツアゲみたいに催促しないでくださいよ!夢ががっしゃーんてなる!」
「ほらほら早く」
「…ほい」
「おー良い子だ」
「わんわんっ!」
「なんだかの将来が心配だよ…」
「わたしもです…」




残念だね。先輩たち、もうすぐ卒業しちゃうなんてさ。あたしったら寂しくって枕を濡らす
毎日だよ。ヨダレで。なんつって!汚いでしょ!
でもほんとに残念なのよ。学生服のユーリ先輩に会えないなんて!学生服っていうのは1つの
こう、萌え?萌え要素的なあれがあるんだよ。だから、学生服という萌えを背負った先輩を
見れないっていうのは非常に残念でございます。ああ、無理やり着せるっていうのもまた
すてきなシチュエーションだ。でもそんなことほんとにやったら殺される。もしくは半殺し。
だからやらない。やらないんじゃなくてやれないが正解!




「そうだ、フレン先輩にもあるんですよ!」
「本当かい?あ、でもまた5円チョコとか…」
「まさか!フレン先輩にも今年は手作りチョコでっす」
「それは嬉しいな!ありがとう
「いえいえ!はいどうぞ!」
「ありが…異常に大きくないかい?」
「フレン先輩への愛ですよ!お返しは30倍で!ちゃんとお家まで回収に行きますから
 安心してください!きゃっふー!」
「…うん」
「もうあきらめろフレン。こいつはこういうやつなんだから」
「割り切って行くしかないですよ、フレン」




30倍のお返しがたのしみだなあ!って今思い出したけど、去年はそれでひどい目にあった
じゃないか自分!いやでもさすがにあれはもうないと思うな。それにフレン先輩召喚券なんて
使わないしー。ありゃあ資源の無駄だ!無駄無駄無駄無駄!もうフレン先輩の鬼コーチも
慣れちゃったし。さーいよいよたのしみになってきましたね!おふおふ。
ユーリ先輩は一体なにをくれるんだろうか、お返し!愛かな。やっぱり愛かな。そうなのかな。
困っちゃうな。あたし困っちゃうなあはあは!ユーリ先輩の愛はありがたいけど、ほら、
やっぱりあたしは先生に恋しちゃっているわけだし?その愛には応えられないというか?
いや、申し訳ないなあ、ほんとに!悪いなあ。ごめんねユーリ先輩!




「いい加減しばくぞ」
「えええ!?心読まないでくださいよ!」
「お前の口は心と直結しすぎなんだよ」
「なんと!」




相変わらずお口のチャックがゆるいあたしなのですた。てへてへ。
あ、もちろんエステルにもチョコあげたしもらったよ!これが友情という名の愛なのです!
これからもよろしく愛です!うふふのふ。
そして恋とか愛とかの方のチョコもとい甘くないお菓子さんは放課後渡すからね!
待っててせんせい!



















ありり?おかしくなあい?それっておかしくなあい?どうしてこうなっているのかな?
ぶん殴ってやろうか女子共!!あたしも女子だけどねん★いや違うんだよ。わかって。
朝のHRが終わったらね、なんかね、クラスの女子がね、せんせーい!きゃっきゃ!って
感じでね、愛しのレイヴン先生のところにチョコらしき物体を持って行ったんですYO!
なあにそれ?なんなのお嬢さん方あああああああ!しゃーっこら!やんのかこら!
あたしは笑顔でそれを見守っているけど、正直血管がぶち切れそうです。どのくらいぶち切れ
そうなのかと言いますと、ポルノグラフィティのアキヒトがうたっている時こめかみの
血管切れちゃいそうで見ているこっちがはらはらするわってくらい、あたしの血管が切れ
そうなんですよ。おk?
あ、でも先生ならきっともらわないよね!そうだよね!だって甘い甘いチョコは食べられ
ないもんね!そうでしょ!そうなんでしょ!
とりあえず先生と女子共を見守っている。それをあたしが妄想と想像と観察で再現をして
みたいと思う。




「せんせー!これぇ、バレンタインなんですけどぉ、もらってくださいっ!きゃっ!」
「いやー、ちょっとこういうのは困るのよねえ」
「ええー!そんなこと言わないでもらってくださいよぉ!おねがい、せんせ!」
「そう言われても、いただけません!」
「せんせー!待ってぇ!」




こういう感じかな?よくわからないけど。女子のこの鬱陶しい感じとかすごいうまく表現
できてると思います。アカデミー賞一人芝居部門総なめだな、これ。
でも、今のはあくまであたしの頭の中での様子なのでここは実際近づいて確かめたいと
思います!いってくる!
さりげなーく教卓の近くにだるまさんが転んだ的な速度で近づいています。ないす!
そろそろ声が聞こえてくるはずだ。どれどれ。




「先生!これ、バレンタインのチョコです!」
「んー?ああ、チョコねえ…残念だけど先生甘いの苦手なのよ。だから他の子にあげて
 ちょーだい」
「大丈夫ですよ!甘くないビターチョコですから!甘いものが苦手な先生でも食べられる
 ようにって作ったんです。もらってもらえませんか…?」
「えーあー、じゃあ、もらおうかな。ありがとさん」
「はいっ!それじゃあ!」




もらってるうううううううう!!!おかしいよ!それおかしいよ!なにお前もらってんだよ!
そこは断れよばかか!このおっさん!チョコは苦くたって所詮チョコはチョコだよ!
甘いの苦手なら徹底しなさいよ!軸ぶれてんじゃないよ!
そして女子!先生に渡した後、友だちと、先生もらってくれたよ!ちょーうれしいんだけど!
まじよかったじゃん!脈ありかもよ!やあだー!あふあふ!みたいな会話しちゃってさ。
たのしい?たのしいよね、そりゃあたのしいよね。ずるい!!
まじないわー。ほんとないわー。萎えた。全力で萎えた。萎えすぎて枯れた。
なにに1番萎えたってあんた、女子がレイヴン先生が甘いの苦手っていう情報を掴んでいた
ことだよね。ショック。ショックすぎておなかすいた。
あたしだけかと思ったのに。先生が甘いの苦手って知ってるの。あたしだけが、知ってる
先生の情報だと思ったのに。ばかじゃん、あたしが。





























放課後なう。このまま帰ってしまおうかな。
朝のHRの出来事はその後も続いた。あれ、デジャヴ?っていう頻度で起こりました。
どうしたの、女子。そんなに先生かっこいい?かっこいいよね。でも先生は書生さんの格好
していなくても、ずっとずっと前から先生はかっこよかったよ。いつだって、あたしには
かっこいい1人の男の人だったよ。どうして先生との時間を奪うの?横から出てきたくせに。
あー、みっとないやきもちです。こんなのひとりよがりのやきもちです。だって、先生は
みんなの先生。あたしだけのレイヴン先生なんかじゃないんだから。先生が誰のチョコを
もらおうが、誰にやさしく笑おうが、誰に恋しようが、そんなの先生の自由。
あたしがとやかく言って良いことじゃない。だから、あたしはただただ悔しくて仕方がない。
ただ、それだけのことです。




…。そうだ、ユーリとフレンのところに行って甘いものを奢ってもらいましょう!」
「エステル、そんな眩しい笑顔でたかる気かい…ってなんか気を遣わせてごめんよ」
「そんなことないです。、元気出して下さい」
「うん、ありがとう!でもユーリ先輩たちにたかるのはまた今度にするよ!他にもチョコを
 渡さなきゃいけない人いるし」
「そうですか…、じゃあ今度2人に奢ってもらいましょうね!それもとびっきりのを!」
「うん!じゃあ、またね」
「はい、また明日」




エステルちゃん、ええ子や。おばちゃんそんなやさしさに涙がちょちょぎれそうだよ。
気を遣わせてしまってなんか申し訳ないな。あたしはそんなにへこんでいるだろうか。
いや、へこんでるんですけどね。地面に顔が半分入っちゃってるよっていうくらいへこんで
いますけどね。この気持ちはどうやったら空へ向かって元気に真っ直ぐいくのでしょうね。
誰か教えてあげてください、憐れなちゃんに。


















えー、こちら現場のです。ただ今職員室の前にいます。
ここ、職員室には多くの先生が見えます。中の様子を見てみると、男性職員の机の上には
女子生徒からもらったであろうチョコレイトが見受けられます。しかし、顔が整っている
男性職員に限るようです。というのも、変態教師で名を馳せているアレクセイさんの机には、
チョコレイトの山が見えません。どうやら、これが世間の答えのようです。
ではここで、わたくしもチョコレイトを片手に突撃レポートをしたいと思います。
それでは、一度スタジオの方に返します。はい、カットー。
じゃあ改めて職員室へ突撃します。相手は秘密です。うそです。デューク先生です。




「デューク先生いますかー…?」
「どうした?」
「あ、デューク先生。あのー、これ」
「……」
「チョコレートなんですけど、もしかして甘いものきらいですか?」
「いや、大丈夫だ。ありがとう」
「いえいえ!デューク先生にはいろいろお世話になっているので、そのお礼です」
「そうか、ありがたくいただいておく」
「はい!それでは失礼します」
「ああ」




再び、現場のです。無事、目的のデュークさんにチョコレイトを渡しました。
わかりにくいですが、どうやら喜んでいたように思えました。
あと、アレクセイさんから若干の視線を感じましたが、それをスルーさせていただきました。
こちらは以上です。スタジオにお返しします。
さーてさて、どうしようかなあ。実はさっき、ここに来る前に保健室に寄ってジュディス
先生にチョコ渡してきたのよねえ。だからあとは一応、レイヴン先生だけなのさ。
どーしよ。なんかもう帰りたいぜえ。でも毎日行ってるのに行かないのも怪しいもんなあ。
あーん。あーん。とりあえず行くか…。


















いなかったら帰ろう。いなかったら帰ろう!いなかったら帰る!
今のあたしを支える呪文を唱えながら、おそるおそる秘密の花園に足を運ぶ。
なんだか妙に臆病になってしまい、入り口のアーチの影からこっそり様子を窺ってみた。
ちらり。ちらりずむ。ちらちらり。いつもの東屋に視線を巡らせると、そこにひとは、




「いない!よし!帰ろう!」
「帰っちゃうの?」
「え」




ガッツポーズまでしたというのに。確認した矢先にまさかのパターンですか。
声をかけられたままの形で固まってしまったあたしです。目が見開いているんだぜ。
まさか後ろに来てただなんて!タイミング悪くなあい?いやんばかん!




「あっれー!先生じゃないですかー!おつかれさまでえす、ではここらで失礼し」
「帰っちゃうのー?どうせここまで来たんだからもうちょっといなさいな。ほらほら」
「いいいい!引っ張らないでえ!」




結局連行された★様子窺ってないで早く帰ればよかった!後悔先に立たず。
腕を引っ張られていつものイスに無事着陸しました。ぶああか!




「いやーつかれたー!」
「そうですねえ、じゃあもう帰りましょうか!」
「今座ったばっかでしょ!」
「あるぇ?そうでした?」




どうにか早く帰ろうとしている自分、がんばって!世界があたしを応援しているよ!
さあどうにかして切り上げて帰ってしまおう!帰れば暖かいこたつが待っているよ!
別に寒いから帰りたいとかじゃないんですけどね。




ちゃん」
「はい?」
「なんかあったの?」
「いえ別に」
「そ?」
「はい」




めんどくさい!もうなんかすべてがめんどくさい!どうでもいいんじゃなあい?
こうなったらもうどうにでもなったらいいよ!もともとは女子生徒からチョコを受け取る
先生が悪いんだから!いやでも違うか。それは先生の自由だから…でもいやなものはいや
なんです!ふん!




「先生、去年とは違って今年はもてもてでしたね!うれしいんじゃないですか?」
「んー?いんや、おっさん甘いものはてんでだめだから結構きついかも…くすん」
「でもちゃんともらってたじゃないですか」
「邪険に扱うわけにもいかんしねえ」
「ふうん」
「あり?なんかご機嫌ナナメ?」
「いえ別に?さーてさて、あたしはほんとにもう帰りますよーっと」
「え、ちょっとちゃん!」
「さよならー」




呼ばれたってあたしは帰る!帰るったら帰る!帰る帰る帰る!
こんなことでいちいちやきもち焼くあたしの方がどうかしてるんだよ。頭を冷やせ。
去年先生があたしのを受け取ってくれたのは、今日他の子からもらったのと同じ理由なんだ。
特別なんかじゃない。ちょっと他の子より先生と仲良いからって特別になったわけじゃない。
特別になんか、なれないんだよ。所詮は生徒と先生なんだから。これは卒業するまで決して
逃れることのできない壁。今のあたしにその壁を乗り越えられる自信なんかないよ。
あたしだってわかってるよ、そんなのちゃんとわかってる。それなのに、どうして先生は
いつもあたしの腕を掴むの?どうしてあたしを引きとめるの?どうして、そんな、期待を
させるようなことするの?どうかしてる。あたしも、あなたも。




「…なんですか?」
「俺にはくれないの?」
「なにをですか?」
「バレンタインのお菓子」
「先生いっぱいもってるじゃん」
「そうだけどー…チョコは食べれないもん」
「じゃあなんであたしにチョコねだるんですか」
「チョコをねだってるんじゃないわよ。お菓子をねだってるの!」
「は?」
ちゃんはいつもチョコじゃなくてマフィンとか甘くないお菓子くれたじゃない」
「そう、かもしれないけど…今日は持ってないんですっ!」
「うそだあ!ほんとは持ってるくせに!」
「持ってないったら持ってない!」
「うそつき!」
「うそじゃないもん!」
「じゃあじゃあちゃんは俺には用意してなくてデューク先生とかジュディスちゃん
 には用意するの?」
「な ぜ そ れ を !」
「ジュディスちゃんに自慢された!デューク先生にもちゃんはお菓子作るのうまいって
 ほめてたもん!」
「余計なことをしよって…。とにかく!レイヴン先生の分はないんです!」
「なんでー!」




どうしてあたしにかまうんだよ!ほっといてよ!あたしのことなんか、ほっといてよ!
先生に掴まれた腕をぶんぶん振って振り払った。ばかめ!さいならー!




「あばよ!」
「こら」
「えっ…!?」




さっきよりも思いっきり引っ張られて、結果先生の胸にぶち当たりました。
あたしぐるっと一回りしたんだよ。つまり先生のすてきな胸板にぶつかったわけです。
どうしてこうなった。




「もう、いい加減大人しくしなさい」
「ななななにするんですか!セクハラ!変態!」
「こらこら。そんなこと言うならもっとやっちゃうわよ。ぎゅーっ」
「ぎゅうううううううううう!?」




死ぬ!もう死んじゃう!いろんな意味で死んじゃう!だめだ死ぬううううう!
先生に抱きしめられた!というらぶしょっくと普通に息が苦しいっていうので爆発しそう!
生きているのがつらい!もはや生きているのがついらい!でも生きる!




「いろいろ苦しいですう!」
「あ、ごめんごめん。もう逃げない?」
「はひ!」
「ん、良い子!」




先生に解放されちゃった…いや解放されていいんだけど、こう残念な気持ちが、ね!
そんで、あたしはうまいこと丸めこまれてるやん!だめじゃんよ!




「はい、じゃあさっさと出す!」
「え?なにを?」
「レイヴン先生用のバレンタイン」
「あ、はいはいって…なんで知ってるんですか」
「先生とちゃんの仲だから?」
「ふうん…はい、どうぞー」
「やたー!ありがと!」




なんでこんなに喜んでるのよ。ばかばか。…ばか。
先生は残酷だよ。あたしの気持ちを知らないからそんなことできるんだ。
先生はきっと、あたしのこの気持ちを知ったらどうせいなくなっちゃうんだ。
逃げちゃうんでしょ?先生と生徒だからってあたしの気持ちを見てもくれないでしょ?
それなのに、あたしはこんな先生が見れてうれしいって思ってる。期待すれば期待するほど
自分が苦しくなるっていうのに。
あたしはそれでも、あなたをすきでいることをやめられない。
あたしの想いはどこに流れ着くんだろう。
あたしを受け入れてくれる確証もないのに、あたしは先生にすべてを捧げる。

















どうか、宙ぶらりんのあたしの想いをすくってください。




















ユノ