トラック買取










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まるで夢のようだった。未だにあれは夢だったのかもしれないと思う。
あの時、確かに世界は2人だけだった。あたしはそんな気がしてならない。
先生が間近にいた。先生の温もりと、先生の匂い、先生の鼓動が近くにあったのだから。
離れたくなくて、2人の時間が終わってほしくなくて、先生に抱きついた。
今思えばなにをしているんだきみは!破廉恥!って話だが、その時のあたしはそれが精一杯
だった。少しでも時間を引き延ばすための精一杯の行動だった。
そしてその時間は意外な形で終わることになる。
空気の読めないあたしのせいです、はい。正確に言えば、空気の読めない体?
いやーあの甘い雰囲気が一気にぶち壊れたよね。びっくりだよね。
とりあえずその時の模様をダイジェストでお送りします。提供はです。





「……」
「……」
ちゃん、」
「…はい」
「そろそろ、ね」
「……」
「戻らないと」
「そうです、よね」
「…うん」
「でも、あたし…」
ちゃ」
「いっくしっ!!」
「え」
「くしゅん!!」
「え、ああ、そうよね寒いものね!!えーとえーと、これとりあえず着て!」
「ずずっ。すびばせん…」
「いいから。ほらほら、早く戻ってなんか温かいもの飲みましょ」
「はい…」




あろうことかくしゃみが出た。いやむしろよく今まで耐えてたなくしゃみって話だよね。
でもいっくし!っておやじじゃないんだから…!せめてかわいいくしゃみを出したかった。
もうなにもかも遅いけどね、あはは。
ま、先生が上着貸してくれたから風邪引かなかったよ!そして上着からは先生の匂いが!
にやり。にやにやにやり。結局あたしはこういうことを考えてしまうんです。
良い雰囲気がおやじくさいくしゃみとこの思考回路のおかげでまさに一瞬でふっとんだ。
どっかの恋愛ドラマのようにうまくはいかないようだね。人生ってこんなもん。
女子高生が達観するこの感じ!そのくらい今回は失態を犯したと理解している次第です。
で、このくしゃみで終わってしまい、その後講堂に戻って温かいスープを飲んで、無事
あったまりました。先生はまた女子に囲まれてたけど、なんかうまくあしらってどっか
行っちゃった。上着借りたままだったからどうしようかと思ったけど、パーティーも
終わってからたまたま先生に会えたからちゃんと返しました。
その時の先生はまたいつものような先生に戻っていた。まあでも、いつもよりは大人な
感じだったかも。そしてあたしはそんな先生にまた胸をときめかせ家路に着くのでした。
あー、しあわせな一時でございました。





























クリスマスが終わればもう年末。すぐそこには新しい年が顔をちらちら見せているよ。
去年は大晦日からの流れで初詣行こうぜいえーい!ってなったけど、今年は我が家にみんなを
招待してお泊り会をすることになった。のんびりした年末もすてきでしょ?
こたつに入りながらの年越し。これぞ日本人の真のあり方だと思うんだぜ。まあぐーたらとも
言うんですけどね!いいのさ、あたしはこれが1番だからね!あははん。




「こたつはいいよ、こたつは」
「お前こたつが似合うなー」
「ですよね。ミス・こたつになれちゃいますね」
「まさにミスだな」
「なんかミス違いな気がする…」




こたつに4人はきついよね。足がぶつかりまくってるよ。
と言っても、まあエステルは正座してるし、フレン先輩も正座なので、結局はあたしと
ユーリ先輩の攻防戦なんですけどね。
げしげしやると10倍返しでげしげしやってくる。もう女子にも手加減一切なしですよ。
さすがと言うべきでしょうかね。だからまたげしげしやるとまたげしげしげしげしって
返ってくる。そんでまたーとエンドレスリピート。でもだんだん規模が大きくなってきて
いるのでこたつがガタガタ言ってる。テーブルの上にのっている湯のみが揺れとる。
なのにやめないっていうね。子どもなあたしらです。そろそろエステルとフレン先輩が怒りそう★




「2人共いい加減にしてください!」
「エステルさんの言う通りです!お茶が零れるだろ!」
「ごめんなさーい。さ、ユーリ先輩もうやめてください」
「悪かったな。、早くやめろ」
「ユーリ先輩からやめてくださいよ」
「お前がやめろよ」
「いや、ここは先輩が先でしょ」
「普通後輩が先だろ」
「先輩でしょ」
「後輩だろ」
「先輩」
「後輩」
「先輩」
「後輩」
「先」「後」
「「2人共!!」」
「「ごごごめんなさい」」




こわい!エステルとフレン先輩のタッグはこわい!むしろ顔がこわい!
悪かったです。あたしとユーリ先輩が悪かったです。そうです、あたしらがいけなかった!
だからそんなこわい顔で見ないでえええ!!
そんな大晦日。



















縁側にて、除夜の鐘を待つ。4人で縁側に並んでいます。
12月なので寒いです。とっても寒いです。だから半纏を羽織っています。日本って感じ。
こたつには半纏。縁側にも半纏。
今年の回想をしてみる。今年は去年よりもいろんなことがあったような気がするんだぜ。
とりあえず今年1番うれしかったのは、レイヴン先生が担任になったこと。これに限る。
だって、先生が担任にならなかったら、あたしと先生の距離もそんな変わらなかった気が
するんだよね。ほんと、よかった。
今年は絶対先生との距離は前より縮んだ。これは気のせいじゃないと思う。
先生は、いつもあたしの前に現れるんだ。先生がいたらいいのにってあたしが望むと先生は
必ず来る。どうしてだろう。ねえ、どうして?ほんと不思議で仕方がない。
来年は、先輩たちが卒業してしまう。あたしも再来年には卒業。まじか。早いよね。
時間は待ってはくれない。ほんとに。だから来年、行動しなくちゃ。アタックやアタック!
先生に告白、とか。こここここくはく!!緊張する!それを考えただけで緊張ううう!
その時のあたしがんばれ。過去のあたしは応援してる。未来のあたしがんばれまじで!
というか恋もそうだけど、進路とかも考えなきゃですよ。あー大変だなあ。





「そろそろじゃないか?」
「そうだね」
「早いもんですなあ」
「ですねえ」
「あ、年明けた」
「明けましておめでとう。今年もよろしく」
「あけおめ、そしてよろしく」
「明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします」
「あけましたおめでとう!今年も来年もずっとずっとよろしくおねがいしまっす!」
「いやだ」
「まさかの!!」




そんな感じで去年とは違いまったりと年が明けました。そしてこのあいさつ。
拒否されたけどね。いやだって…!いやだってひどいよ!
いいけどね!別にいいけどね!拒否されたってずっとよろしくするもん。勝手にずっと
よろしくするからいいもん!ふーんだ!
それにユーリ先輩はどうせツンデレだってわかってるからね。あたしはわかってるんだ!
だからもうよろしくしませんって言うと、ふうんとか言いつつ寂しい顔するはずなんだから!
わかってるんだからね!「しねーから」さいですか…。



















「ういー。冷えた体にはおこただよね」
「おっさんか」
、お茶ここに置いておきますね」
「おお、悪いのうエステルちゃん」
「いいえー」
「もはやおばあちゃん?」




除夜の鐘が鳴ったのを聞いてからさっさとこたつに移動してきました。寒いからね。
テレビでは初詣の様子やらジャニーズJr.のカウントダウンからのライヴというか
コンサート?がやっているよ。
去年はここ行ったねえ、あははとか言ってるあたしたちってちょっとどうなの。
若者らしくカウントダウンパーティーだいえーい!とかやったらどうなの。だが断る。
自分で提案しておいて自分で断る。これなかなか高度な技術だよ。テストに出るよ!





「そういえば先輩たちって卒業したらどうするんですか?」
「大学行く」
「僕もそうだね」
「どこ行くんですかー?また一緒?」
「いや、オレはここらへんの大学」
「僕は国立に行くよ」
「ほほーう!じゃあついに2人の道は分かれるんですね」
「そうだな」
「でもいつでも会えるしね」
「あたしにも会いに来てくださいね★」
「やだ」
「やだって!ひどい!会いに来てよユーリせんぱあああああい!!」
「気が向いたらな」
「出た!ツンデレ!」
「はは、ユーリは素直じゃないからね」
「ほんとですよねえ。あたしのことがすきなくせにいいいいだだだだだ!!」
「ユーリ!」
「つい手が出た。悪い」
「の割には本気でしたけどね!!」




今年初のげんこつぐりぐりをいただいた。痛い。でもこの痛みさえも愛!!
でも先輩たちは違う大学行くんだー。そっかあ。まあこの2人なら卒業しても同じ学校
なんでしょ?ってくらいつるんでそう。良いことでございまする。
大学生になっても遊んでほしいな。できることなら一生お世話になりたいです。
あれ、これプロポーズですか!?いいえ、ケフィアです。なにが?




「お前たちは考えてんのか?卒業後のこと」
「わたしは女子大に行こうかと」
「おおーエステル女子大っぽい!」
はどうするんだい?」
「そうですねえ、お嫁さんにでもなりましょうかね!うふふ!」
「え…」
「へー」
「す、すてきなお嫁さんになれるといいですね!」
「あれ?なにこの空気?これあたしのせい?」




引 か れ た !
エステルとフレン先輩に。冗談に決まってるでしょうに!それなのにドン引きですか…。
フレン先輩は固まってるし、エステルは必死にフォローするっていう。
ユーリ先輩に至りましては、スルーでございます。興味なさげに返事をされました。
彼だけはわかっていたようでなによりでございます。




「あの、冗談だからね。そりゃあいつかはお嫁さんになりたいけど!でも本気で言うわけ
 ないじゃーん!幼稚園児じゃないんですから」
「だよね!いや、のことだから本気なのかと思ったよ」
は子どもがたくさんいそうですね」
「で、結局どーすんだよお前は」
「まあ大学に行こうかとは思ってはいますけど、そんな深くは考えてはないです」
「ふうん。やりたいこととかあんのか?」
「うーん、花嫁修業?」
「……」
「無言の圧力!冗談です!留学とか?」
「理系なのに?」
「それも冗談でえす★」
「……」
「ストップ!暴力はだめええ!」
「お前も少し真面目に考えてた方がいいんじゃねーのか」
「あひー!そう言われるとあいたたたなんです」




だって考えてないんですもん。今この瞬間のことしかあたしには考えられないよ。
高校生もいろいろ大変なのよ。青い春を過ごすという使命もありますからね。
別に大学とか社会人になったら青い春を味わえないとは思ってないです。
でも、高校生には高校生の青い春があるのです。だからあたしは今を全力で生きたい。
とりあえずレイヴン先生をどうにか落としたいんですうふうふ!
あたしだって若いんですからね、ここはやっぱり恋に対して全力でもいいんじゃないかと。
相手が先生っていうのはやっぱり大変ですけどねえ。いや、でも相手が誰とか関係ないか。
先生だろうと先輩だろうと同級生だろうと後輩だろうと恋は恋なんだから。
がんばれあたし!今年は先生にあたしの気持ちを伝えるんだああああ!ひゃっほい!




「青い春っていいね」
「そうですね」
「お前はいつも頭が春だからな」
「いやいやそういう意味じゃないですからね」
は青春しているのかい?」
「いつだってあたしは青春ですよ!きっとこれからもずっと青春です」
「いい迷惑だな」
「あらやだひどい!」
「結婚式には呼んでくださいね!」
「もちろんだよう!先輩たちも来てくださいね!うふふ」
「結婚できたらの話だけどな」
「できるもん!…たぶん」
「どーだか」
「ひどいー!ああ、でも先輩たちもいつかは結婚しちゃうんですね…なにそれ寂しい!」
「なんでお前が寂しがるんだよ」
「だって先輩にちょっかい出せなくなりそう。おねがいですから嫉妬深い女性とは結婚
 しないでくださいね」
「そう言われても困るわ」
「フレン先輩とか尻に敷かれそうーあはは」
「確かに」
「それがフレンの味です」
「いやいや!適当なこと言わないでくれよ!」
「これは真実です」
「そう遠くない未来だ」
「現実なんですよ」
「……」




相変わらずフレン先輩をいじるのはたのしいです。とってもとってもたのしいです!
でもほんとにフレン先輩って奥さんに頭上がらなそうだよね。
いやー結婚しちゃうと寂しくなりますね。まあまだ先の話なんですけど。
にしてもユーリ先輩が結婚しちゃったらあたしショックで3日は寝込む。絶対寝込む。
ちゃんとしあわせは願うけどね。ショックはショックなんだよ!寝込むううう。
あ、でもレイヴン先生が結婚するってなったらあたし死んじゃうけどね^q^げふ。
ショックは計り知れないよ。さすがに無理だよ。あたし立ち直れる自信ないよ。無理無理。
想像するだけで胃がキリキリします。だけど先生も良い歳ですからねえ。
そろそろ結婚してもいいんでねえのか?って感じです。あうあう。結婚しないでえ!
結婚するならぜひあたしとおねがいします。世間がなんて言ったっていい!ロリコンって
言われたっていいじゃない!あたしと結婚してくらさい!しあわせにします!
先生のが立場が厳しい世の中ですね。少し前の時代ならこんな歳の差わけねえです。
ほら、政略結婚とかそういうのって若い子と結構なおじさまがーとかってあるじゃん。
だから気にすんな!周りなんて見なくていいのさ!あたしだけ見てればいいのよ。
そういうわけで、今年はより力を入れてアタックをしていこうと思う次第です。
そうだ。心配なことが1つがあるんですよね。なんかさー、レイヴン先生ってば最近人気
じゃないですか。女 子 に !
まあ本人としてはうれしいんでしょうけどね!ぷん!あたしとしてはとっても心配です。
だってさだってさ、もし先生のことを本気ですきな子が現れちゃったらどうするよ!
これ死活問題。ほんとにそんなことあったらどうしましょうううう。あーもうなんかすでに
いそうな気がしてならない。こわいよー!やめてー!とらないでー!
どうかあたしよりも魅力がない子でありますように。あれ、あたしより魅力ない子って
いるの!?なにそれどういう意味!?と、自分で混乱するほど焦ります。
どうかおねがいだからそんな子がいませんように!!初詣で祈っとこ。




「おねがい神さま!」
「うるさい近所迷惑というかオレたちに迷惑かかってる」
「そんなに!?」

















新しい朝があたしを呼んでいる。




















おわり よこ はじまり