トラック買取










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結婚、するらしい。先生が、結婚。






















体育祭は無事終了。ちなみに緑が優勝しました!いえい!ユーリ先輩が悔しがってた。
まあ人生そういうこともあるからどんまい★って感じで言ったら案の定殴られたんだぜ。
にしても、体育祭のレイヴン先生はなんかおかしかったよね。
だっこしたかったとか、なんだそれって感じ。だいたいそれってどういう意味なの?
あの時は若干の混乱で脳みそがちゃんと理解しなかったけど、今考えたらおかしいよね!?
あれはおかしかったよ、絶対。先生の真意はいかに?いやまじで。わからないことが多いです。
先生は一体どこにほんとが隠れてるの?先生の心はどこにあるの?早く、見せてよ。
でも体育祭終わってからも先生は別に変わったところはない。あれって気のせいだった?
と思ってしまうほど普通だし、あの話に触れないし、調子狂いまくりなあたしです。
そんなあたしを余所に、季節は学園祭へと移っていくのでした。




「誰か良い案はありませんか?」




学園祭での出し物を決めている今日この頃でございます。今年はなにをやるんでしょうね。
まあ今それを決めている最中なんですけどね!
去年のクラスではあたしの何気ないというかめっちゃ適当に言ったのが採用されちゃった
からなあ。今年のあたしはお口チャックでいきたいと思います。んーんーんー。
さあみなさん思う存分すきな案を出すがいいさ!そしてさっさと決めるがいいさ!




「じゃあお前が案出せよ」
「なんですと?っていうかなに人の心ん中読んでんだよ小野くーん」
「読めるわけないだろ。お前の口からだだ漏れだ」
「うそだー!」




と周りを見たらみんなこっち見てた。あれ、まじか。まじだったのか。チャック壊れてた?
あたしのお口にあるチャックは故障中ですか?チャックしたつもりがただチャックのつまみ
を移動させただけだった?たまにそういうことあるよね。つまみだけ上に上がって下がぺろーん
とかなってる時。あははー。




「早く案出せよ、
「そう言うならあんたが出しやがれ小野このやろー」
「お前が出せよ」
「いやいやあんたが出しなさいよ」
「お前が出せ」
「あんたが出せ」
「お前が」
「あんたが」
「お前」
「あんた」
「ちょっとちょっと2人ともー!そんな争いはいいから案出しなさいな」
「「じゃあ先生が出して下さい」」
「えええ!?なんでこっちにふるのよ!ていうかこういう時だけハモるのなしでしょ!」




うーん。良い案ってなんだよ、だいたい。
去年はプラネタリウムとか適当に言ったら採用されたから今年もそんな感じで適当に言えば
いいんですかね。あーなんかみんなやりたいことないのかねえ。あたしは別にない。
そうね、ユーリ先輩が執事の格好しておかえりなさいませ、お嬢様って言ってくれればあたしは
それで充分幸せなんだって話がずれてしもた。そうだなー。なにがいいんでっしゃろ。




「大正浪漫喫茶とかおもしろそう」
「お、それでいいんじゃね?な、学園祭委員」
「そうだね、じゃあそれで」
「いいんかい!ほんとにそれでいいのかーい!」




こうして今年も適当に言った案で決まってしまうのでした。ほんとに良いんか。
別に良いけどさ。きみたちが良いと言うなら良いんだよ!だからあとは任せた!案は出したし。
ていうか、大正浪漫喫茶ってなに?なにするの?ほんと知らないからね!





























「結婚!?それほんと!?」
「うん、そうらしい」
「そ、そうなんだ…」




ただ今エステルのお家で学園祭の準備をしているところです。
というのは、大正浪漫喫茶で必要なものを作っています。なんか大正浪漫喫茶では、クラスの
みなさんが大正時代の格好をして、教室の中も大正パーラー風にするんだと。まあすてき!
そんなわけでその服装を繕ってるんです。女子が。クラスの女子が!内装は男子がやるので、
女子が裁縫をやるらしいです。てか女子全員が裁縫できると思ったら大間違いなんですけど!
あたしってば裁縫不得意だよ。いえい!それでもやらなきゃいけないみたいなんで縫ってます。
そしてたまにあたしの服を縫ってます。ぬいぬい。たいへーん!みたいな。
どんだけ不器用やねん。こんだけ不器用です。針だって自分の指にぶっすぶす刺さってるよ。
絆創膏だらけだよ。痛いよ痛いよ。少女漫画のヒロインがすきなひとのためにいろいろやって
指に絆創膏貼ってるような感じだよ。あいにくあたしはクラスのためにやってるんですけどね。
ちくしょうばかやろう!あ、でも明日あたり先生の服も作るらしいから寸法測るんじゃない?。
じゃあ先生の寸法を測るのはもちのろんろん、あたしがやりますやります!やらせてください!
、全力で先生の体に触りますって変態か★うそだよ真面目にやるからあたしに
寸法測らせてください!おねがい誰か!
そうそう、今ツバキとモニカもエステルのお家に来てて、彼女らもクラスの出し物の裁縫
担当らしく、横でぬいぬいしている。ちなみに2人は文系さ。
で!ここからがとっても重要なお話なんですけど、結婚するらしいよ。先生が。結婚!!
先生って言ってもレイヴン先生じゃないよ。まさかレイヴン先生なわけないよ!もしそんな
ことがあったらあたし卒倒してますから。
話を戻しまして、結婚するのは元担任のキャナリ先生です。お相手はイエガー先生らしい。
ツバキたちの担任がキャナリ先生なんだって。それでまあ結婚するっていうお話が出たんだと。
ていうかイエガー先生て…!説明しよう。イエガー先生とはルー語を話す英語教諭である。
ルー語を話す英語教諭ってどんな!胡散臭さが比じゃないけど。だいじょぶ?
しかもそんな胡散臭い先生とあの魅力たっぷりのキャナリ先生が結婚だなんて信じられない!
あ、もしかして去年の学園祭の買い出しで話していた恋人とはイエガー先生ってことかい?
その上学生時代の友人となると、レイヴン先生もイエガー先生とお友だちだったということか。
なにそれ複雑。先生失恋したんだね。イエガー先生にとられてしまったんだね…かわいそうに。
でもだいじょぶさ!あたしが愛をたっぷり与えますのでご心配なく!なんつって!きゃっふー!




「まさかルー大柴とキャナリ先生が結婚だなんてねえ」
「ルー大柴じゃないからね。イエガー先生だからね」
「でもびっくりじゃない?イエガー先生って…真面目に話せる気が一切しないんですけど」
「いやー意外と2人の時はちゃんとしてるらしいよ」
「うっそだー」
「まじまじ」
「真面目なイエガー先生っていうのもまあ想像できないよね」
「確かに」
「顔は良い方だけどね」
「黙っていればね」
「ほんとだよねーあはは」
「ねー。あはは」
「2人共失礼ですよ!」
「そうだよ!イエガー先生だって人間なんだから」
「いやいやモニカさんよ、その言い方もどうなんだ」




別にキャナリ先生をちゃんとしあわせにできれば、ルー語だってなんだっていいよね。
結婚かあ。あたしも結婚できんのかな…。お見合い結婚とかだったらどうしましょしょしょ!
ってそんなもの今考えたってしょうがないわな。今を全力で生きるぜーい。
さーてさて、時間もないんでさっさとぬいぬいしますかねえ。
あうち!さっそく刺した!あひー!





























「先生、ちょっといいですかー?」
「なになにー?」
「寸法測りたいのでこっち来てくださーい」
「はいはーい」




あたしやりました!やってやりました!先生の寸法測る係を無事ゲットしました!
最初は違う子がやるとかなってたんだけど、いやあたしやるよーと自然な感じでいきました。
おかげでこうして先生にボディタッチができるわけですね!もう今から顔がにやにやしちゃう!
ひゃっほーい!あたしってば相変わらずそういうことしか考えられないんですね!
でもいいんだ!しあわせだからいいんだ!うっへっへ!




「あ、白衣脱いでもらってもいいですか」
「ほいほい」
「じゃ、失礼しまーす」
「んー」




どっきどきいいいいい!先生のウエストとか胸囲とかも測っちゃうんだよ!
冷静な顔とは裏腹にあたしってば心ん中が不純すぎるんだけどどうしよう!捕まっちゃう!
それでもイイ!よくねーよ。落ち着けあたし。




「あ、先生って身長いくつですか?」
「うーん、170だったかな」
「はい、おっけーです」




先生て170cmなんだって!ひゃっふー!意外と背が高くないところもだいすきです!
ちなみにあたしは162cmと微妙なとこなんですよ。しかもエステルよりちょこっとだけ
小さめにできております。エステルはああ見えて意外と165cmなんですって。意外よね。
そしてユーリ先輩とフレン先輩はでかい。ありゃあ180cmはあるかもしれないね。
身長聞いたことないから知らないけど、たぶんそんくらいあるんじゃないかな。すてき!
でも先生のがすてき!いやどっちもすてき!あふー。
よし、そんな感じでウエストとか測りつつメモりつつで、ついに!つつついに!胸囲です。
ここがメインイベントだとあたしは思っているよ。どきどきだよ。背中に手を回しちゃうよ!
あたし鼻息とかだいじょぶかな。気をつけよう。とりあえず深呼吸をしてからにしよう。
すーはーすーはー。、いきます!




「じゃ次胸囲測りますね」
「あいよ」
「よいしょっと」




はう!先生の匂い!こら!自重しなさいあたし。それにこんなん別に一瞬だしね。
ちょっと残念だったりしてね…。うそだよ十分だよ!これだけでもしあわせですううふふ!
えーと、なになに?んー、メモメモっと。




「ちょっとそこどいてー!」
「え?うわわっ」
「おっと!」
「ぎゃん!」




もっと周りを見てくれ男子いいいいいい!そんな大きい荷物を運ぶ時はもっと前に言ってよ!
あたしの背中に見事にクリーンヒットしたんですけど!そしてこけた。
なんであたしはいつもぶつかられるんですかね。みんなあたしになんか恨みでもあるのかい!
ちくしょう!…ん?でもこけても痛くなかったというか、あれ、ま さ か ?
とりあえず上半身を起こしてみた。あらららららー!あらららららー!?ひいいいいい!
あたしってば先生を押し倒してるうううう!ごめんなさいいいい!恥ずかしいいいいい!
でもうれしいいいいい!うそですごめん。不謹慎だね。でもね、先生の温もりがああああん!




「だいじょぶ?ちゃん」
「え、ああ、はいいいい!だいじょぶ、です…」




いつもより先生が近いよう!胸がどきどき最高潮。心臓爆発秒読み入りました。やばいです。
先生ってばやっぱりかっこいいです。とってもかっこいいです。30代だからなんだというの
ですか!すきなもんはやっぱりすきなんです。30代のおっさんだってあたしにとっては、
とってもとってもかわいくてかっこよくてすてきな男性なのです!あたしの恋する相手なのです!
先生の目がとってもきれいです。先生の温もりがたまりません。先生から良い匂いがします。
すべてがだいすきです。どうしたらいいですか、この気持ち!




「あの、ちゃん?」
「はひ!」
「いや、あの、どいてもらってもいいかしら?」
「え?ああ、そうでした!すんません!」
「いえいえ」




先生に魅入ってたらどくの忘れてた。うっかりうっかり。これだから乙女の暴走はいかんね。
もうちょっと自重っていうのものをしたらいいと思うぜ。うん、そうします。ごめん。
とりあえず名も知らぬ男子よ、礼を言うぞ。さんきゅー。とってもさんきゅーです!あふん。





























「教室ではどうもすいませんでした」
「ん?なんかあったっけ?」
「ほらー男子がぶつかってどーんばたんあはん!ってやつです」
「あはん…?あー、あれね!別にだいじょぶよ」
「あ、そういえば先生知ってますか!」
「なにー?」
「実は、」




と思ったけどこれ言わない方がいいか。たぶん。
キャナリ先生とイエガー先生との結婚のこと。もしかしたらショック受けちゃうかもしれない。
泣いちゃうかもしれない。泣いてる先生も見たいけど。ぜひ胸を貸してあげたいけど。
こんな貧相な胸でよければってどういうことやねん!と1人ツッコミ。
あーどうしよう。別にあたしが言う必要はないか。そうだよね。余計なお世話だもんね。
それに仲良いならキャナリ先生に直接聞くよね。むしろもう知ってるよね。
あたしってなんて余計なお世話をしようとしてたんでしょう。このばかもの!




ちゃん?」
「はい!」
「良い返事ね!じゃなくてなに言いかけたの?」
「え?あー、いやーなんでもないです」
「ええ!気になるじゃなーい。教えて教えてー」
「ほんと大したことじゃなかったです、はい」
「もしかして」
「え?」
「あれのこと?」
「どれ、でしょうか」
「購買限定メロンパン!」
「は?」
「すごい人気だから作る量増やすらしいわね!ま、俺は甘いもの苦手なんで食べないけど」
「はあ」




ちげえし!誰がメロンパンの話するんだよここで!そんなこと1mmたりとも考えてないわ!
別にいいけどさ、ごまかせたみたいだし。
ちなみにあたしそのメロンパン1回だけ買えたことあったけど、めちゃくちゃおいしかった
です。だからまた挑戦したいと思います。なんつって。




「じゃああたし帰りまーす」
「あいよー。気をつけてねー」
「はあい」




鞄を掴んで出口に向かう。今日も帰ってから裁縫しなきゃなあ。
こんなあたしでも数をこなしてたらちょっとうまくなるという奇跡が起こった。
ま、相変わらず指に針が刺さるんですけどね。前よりはその回数も減ったもんよ。
それでも指はまだ絆創膏だらけだけど。気にすんな!ははん。












「…キャナリが結婚するんだって」
「え?」




出口のアーチまであと少しのところで、後ろからそんなつぶやきが聞こえた。
思わず後ろを向きそうになったけど、横で止まった。もし、今先生の顔を見て、その顔が
悲しみに染まっていたら?苦しみで顔を歪めていたら?あたしはきっと、すごくつらい。
そんな顔を見てしまったら、だめな気がしてしまう。
先生のつぶやきからはなにも読みとれなくて、だから知りたくて、でもこわい。
どうしよう。見てしまおうか。いや、でも、どうしよう。
心は戸惑ってどうしたらいいかわからないのに、体は心の言うことを聞いてくれなくて、
勝手に先生の方を振り向いてしまった。このばか。
後悔しながらも先生にピントを合わせた。思わず目を見開いてしまった。声にならない声が
こぼれた。なんでそんなに、やさしい顔をしているの?どうして、そんな、




「しあわせみたいよ、キャナリ」
「……、」
「前にちゃん聞いたわよね?」
「…なにを?」
「俺がキャナリをすきなんでしょ?って」
「う、ん」
「正直ね、学生時代はすきだったのよ」
「…へえ」
「でも今は心からおめでとうって思ってる」
「そうですか、」
「しあわせそうでよかったわ」
「…どうして」
「ん?」
「どうしてそれを、あたしに言うんですか」
「なんででしょ」
「あたしが聞いてるんです」
「俺にもわかんないわあ。でも、俺がキャナリを今でもすきで、それを知って泣いてるー
 とか誤解されたくなかったからかしら」
「…ふうん」
「ま、泣いてちゃんの胸を借りるのもそれはそれでよかったかもしれないわね!」
「ばあか!」
「あはは」
「…貸すようなことがなくて、よかった」
「え?」
「先生さよならー!」
「ちょ、ちゃん!」




確かに先生が泣いてるのは見たいけど、あたしじゃない誰かのために泣いてるとこなんて
ほんとは見たくない。
あたしのために泣いてくれるのならいいよ。でも他の人のための涙なんて流さないで。
欲張りでごめんね、先生。あなたに恋をしてごめんね。
先生がどうしてその話をしてくれたのかわからないけど、うれしかった。あたしは先生に
近づけてる?先生の気持ちとあたしの気持ちは近づいてる?そうだといいなっていつも思うよ。
もどかしいこの距離を飛び越えていけたらいいのに。

















あなたに続く道をあたしはずっと駆けている。