トラック買取










24











「先輩、好きです!」
「は?」




















残りわずかだった夏休みは瞬く間に過ぎていった。目を閉じ、開けた瞬間にはもう新学期。
んなわけあるか。でも1週間もなかったからすぐっちゃあすぐだったんですけどね!
そんなわけで、2年生も折り返し地点です。早いねえ。
そうそう、9月はユーリ先輩とフレン先輩、修学旅行なんですよう。修学旅行は毎年変わる
らしい。ちなみに先輩たちはハワイらしいですよ。ワイハですワイハ。アロハですね。
南の島にてあははんですね。そうなんですね。うちらはどこに行くんだろうなあ、来年。
あ、もちろん先輩たちにお土産ねだっておきました!ぬかりはないぞ!うふふ。
先輩たちが海外へと旅立った学校は、なんだかいつもより静かな気がしなくもない。
正直あんまり変わらないです。でも食堂とか購買はいつもよりすいてるかもしれない。
それだけはすごく良いと思います、ええ。まあちょっぴりさみしいですけどね。
そしてあたしたち1、2年生は特に変わらず平凡な日々を過ごし、9月中旬ですえ。
今頃先輩たちはきゃっきゃうふふしてるんだろうなあと遠い目をしながら授業をうけている。
この空は先輩たちのいるワイハともつながっているんだ!なんてロマンのある女子でしょう!
とか考えてたらアレクセイ先生に頭をはたかれました。ちくしょう!この変態!
うそですあたしが悪かったです。でもアレクセイ先生が変態なのは変わらないただ一つの
真実。ダイソン的なキャッチフレーズ。いえす!
で、そろそろ本題に入ろうと思うんだ。きっと冒頭の出来事が一体なんなの!?と気になって
しかたがない人がいるはずとあたしは思っている。その中の1人が、あたしである。
うそだ。これはうそだ。はい、それでは続きにいってみよう★




















「先輩、好きです!」
「は?あんだって?」
「だから、先輩が好きなんです…!」
「ほー」




いつもの放課後、いつも通り秘密の花園に行こう!ひゃっふーい!と思っていたあたしの
下駄箱にはいつも通りMYローファーさんが入っていた。しかーし!その上には紙が1枚
のっかっていたのである。
あたしはすぐさま過去の回想をした。そういえば前もこんなことあったんじゃなかった?
まあそれはもう解決したあれなんですけどね。ツバキさんに呼び出しされたあの日々が
懐かしいぜ。みたいな。
なもんで、あたしはまたそういう類なんだろうなあ、いやだなあと思っていたわけです。
とりあえずこっそり紙を開いてみたら、ただ一言、『放課後、校舎裏で待っています』と
ありました。
おやおや、呼び出しは呼び出しでもちょっと違うのかしら?と思ったわけよ。
あっちの呼び出しはもっと紙に怨念オーラ的なものがあるからね。これ経験者は語るです。
そんなわけで、ちょっともしかしれあれ?あれなの!?ついにあたしにもあれが来ちゃった!?
とか心なし優越感に浸りながら足を校舎裏へと運んだわけです。はい。
そしてまあ今に至るなんですけど、これちょっと誤解を生むシーンだよね。ほんとに。




「ごめん、もう1回言ってくれる?」
「は、はい!あの、俺、先輩が好きなんです!」
「うん、誰が誰を好きだって?ちゃんとゆっくりはっきり言ってみようか」
「俺が、エステリーゼ先輩を好きなんです!」
「ほー。あのね、後輩くん。あたしエステリーゼじゃなくてなんですけど」
「知ってます!」
「ああそうかい!だったらなんであたしがエステル宛ての告白を聞いてるんだよ!」
「それは、あの、先輩に協力してほしいんです!」
「無理」
「え!?そんな!!」
「エステルがマドンナ的存在だっていうのは知ってるよ。というか知ってるからこそ、
 抜け駆けはいかんと思うよ後輩くん」
「それは…そうですけど」
「じゃあ自分でがんばんなさいな」
「あ、先輩!」
「なーんだよまだあるのかい」
「エステリーゼ先輩の情報だけでもいただけませんか!」
「情報ー?情報ってそれ協力してんじゃーん。だめだめ」
「じゃあなにかと交換っていうのはどうですか?」
「交換ねえ。後輩くんはなにをくれるっていうんだい」
「今巷で人気のスイーツ店、pesheのスイーツを毎日お届けします!」
「なん…だと?だけどあれって高いし、そんなんさすがに気が引けるよう」
「大丈夫です!あれ、俺の家なんで」
「うっほほーい!まさかの展開にあたしとってもびっくりです」
「どうですか、先輩」
「交渉成立だ」
「ありがとうございますっ!」




愚かなあたしを許しておくれ、エステル!別にスイーツにつられたとかじゃないからね!
あのーほら、あれよ。やっぱり恋する乙女としたら恋する男子にもやさしくあるべきかなあ
とか思ったわけで。うん。
あとね、そのスイーツ店のpesheっていうのはヘルシーな野菜とかで作るスイーツなんですよ!
しかも今すんごーい人気。もう並んでもなかなか買えないっていう。それにちょっとお高めな
値段なので一端の女子高生には手が出せません。それをタダで食べられるなんて!夢のよう
ですね!ひゃっほーい!というわけでなんかごめん。結局ごめん。
あ、そうそう。この後輩くんはエンシオ・ハハリという不思議な名前です。エンシオって
呼ぶのもなんかあれなのでこれからえっちゃんと呼ぶことにする。かーわいい!うほうほ。
実際この後輩くんことえっちゃんはかわいい顔立ちしてんだ!それがちょっぴりむかっと
くるのは秘密ですよ。どうせお前もモテるんだろ、そうなんだろっていう顔してる。
数年経てばきっと良い男に成長するんだろうなあ、うふふと遠い目しちゃう感じだね。
こんなかわいい弟がいたら割と楽しい人生かもしれない。でもそれはお姉ちゃんもかわいい
ことが前提なわけですよ。だってあたしにこんなかわいい弟いたらそれはそれは腹立たしい
ことこの上ないっつんだよばかやろーう!と妄想はもういらんね。
ま、そんなわけであたしは恋する男子のために協力を惜しまないんだぜ!
スイーツを補給しつつ、エステルの情報をやんわりと提供したいと思います。





























「で、まあエステルは結構動物に弱いよ」
「動物ですか?」
「おうよ。でもなんでか動物の方にはあんまり好かれないっていう謎」
「へえ!意外ですね!エステリーゼ先輩って動物に好かれそうなのに」
「確かにねえ。まあ世の中すべてがそうじゃないってことよーあはは」
「でも男子にはすごい人気ですよね」
「ええい!だまらっしゃい!それは言ったらいかんよ!むしろそれはNGワードだよ!」
「どうしてですか?」
「はん!えっちゃんには繊細な乙女心がわからないよ!ぷんぷん」




ほんとわかってないねこの男子は!エステルが男子に人気なんて親友のあたしが1番早く
気づいてたわこんちくしょう!でもね、それはとてもデリケートな問題であって、それを
あえてあたしに言うっていうのはだめなんですよ。あたしの心が無駄にへこんじゃうから。
そういうあたしです。どうせめんどくさい女子ですよ。
でもそんなあたしはえっちゃんが持ってきたスイーツで機嫌が瞬時に直ります。人はそれを
単純と言う。余計なお世話です。ぷーんだ。
というか、えっちゃんとはなんだかんだで仲良くなってしまった。いや別にいいんですけどね。
スイーツ食べれるし。だがしかし、1番ネックなのは放課後にエステル会議をしているもの
だから、先生と会える時間がいつもより減っているのです。それ結構問題だと思う。
だってあたしだってえっちゃんがエステルをすきなように、レイヴン先生がすきなんだよう!
そんな乙女の時間を割いてまでえっちゃんに協力するなんて、あたしってば良い人だね。
そしてちょっぴりおばかな乙女だね。ま、スイーツをいただいてるんですから仕方ない。
これは仕方ない。あたしにも一応良心っていうのものがあるんでね。人気店のスイーツを
タダでもらってるのに時間を割かないなんていうケチなことはできないのよ。
何より、えっちゃんが良い子だからここまでしてるんだよ!正直エステルにアタックして
うまくいくかって言ったらいかないような気が120%くらいするけどね。いやでもほら、
しないで後悔するより、当たって砕けて後悔した方がいいじゃない?そういうもんです。




「ここまで協力してるんだからお友だちくらいにはなってくれよ、えっちゃん」
「がんばります!ありがとうございます、先輩」
「おう、がんばれ若人」
「なんかおっさんくさいですよ」
「……」





























ちゃーん」
「はい?」
「物理準備室にあるプリント、次の授業までに配っておいてくれる?」
「あ、はーい」
「悪いわねえ」
「いいえー。物理係ですから、不本意ながら」
「そんなに不服!?」
「まあ、致し方あるまいって気分です」
「武士!?」




こんなちょっとした会話でもあたしはうはうはです。文句言ってるけど心の中ではお花畑。
ツンデレか!これがツンデレなのか!とかなんとか。
あたしはしあわせものだーい!うふふ。きっと今のあたしの顔は穏やかなのであろう。
このまま先生とお昼ご飯を食べようぜってならないからな。なるわけねえよな!
調子に乗るな自分★げふ。




「それじゃあおねがいねー」
「わっかりましたー。あ、そうだせんせ」
せんぱーい」
「あん?」
「お?」




先生とほんわか話をしていたというのになんだこら。なんだっていうんだこら。
ちょっとガラの悪いお兄さんみたいになってしまった。あん?ってあんた。乙女がそんな。
で、声のした方を向いてみると、そこにはいつもの後輩が。えっちゃんだた。
お前お昼休みに来るなよ!ていうか教室来るな。むしろ今この瞬間来るなよ。来てるけど。
せっかく先生とお昼休みだからってちょっとお話延長してもいいかな、あはあはとか思って
たのに、これなによ。なんなのよ。ひどいよ!ひどすぎるよ!あたしだって恋する乙女の
ターンあったっていいじゃない!今この時だけは先生とお話させてよばか!




ちゃんの知ってる子?」
「え?ああ、まあそうですね…最近お世話している後輩のえっちゃんです」
「えっちゃん?」
「エンシオって名前なのでえっちゃんです」
「なるほど。仲良いのね」
「いやーそういうわけじゃあないんですけどねえ。なんでしょう、同胞?」
「こらまた、同胞て!なんの同胞?」
「それは、うん。秘密です」
「ええ、秘密なのー?おっさんとちゃんの仲じゃなーい」
「同盟組んでる人にしか教えられないんですう」
「まさかの同盟!」
「じゃ、ちょっくら行ってきまーす。すんげえめんどくさいけど」
「こらこらそう言わないの。いってらっしゃーい」




先生のいる教卓に後ろ髪を引かれつつえっちゃんの元へ向かった。まじしょぼん。
えっちゃんはいつにも増し、きらきらしててとってもうざーい★
なにその輝き。無駄な輝きすぎる。そういうのはほんといらないからね。




先輩!」
「なん…ぐえ」
「俺今日エステリーゼ先輩と話せたんです!もう嬉しくて嬉しくて!」
「わかったから離してぐるじい」
「あ、すいません」




きらきらしているえっちゃんに羽交い締めにされた。たぶんハグの方だと思うけどそういう
レベルを超えたしめつけだった。苦しかったまじで。そしてなんのときめきもない現実。
これが先生とかユーリ先輩とかだったらきっと爆発しそうなほど胸がどっきんどっきんする
だろうに。想像しただけで胸きゅん。きゅんきゅーん!
で、後輩くんはなんて言ってた?苦しくて全然聞いてなかった。




「それでなんだって?」
「エステリーゼ先輩と話せたんです!」
「あっそよかったねさよなら」
「待ってくださいよ!話聞いてください!」
「いやだよばかだよ帰りなさい」
「朝、先輩がハンカチ落として、それを拾ったら笑顔でありがとうございますって!」
「話を聞きなさい。ていうかどこの少女漫画だよ。まあよかったね。ああ、もうほんと
 よかったーだから帰れ」
「嬉しくてつい先輩に報告に来ちゃいました!前の俺だったら絶対話しかけられません
 でした。これも先輩のおかげです!」
「あらそうなのよかったわねーそして帰れ。ていうかこのクラスにエステルいますけど。
 そんな声でかくていいんかい」
「ええ!?それはやばいですね!俺帰ります!あ、それじゃ、また放課後に!」
「いやいや今報告来たからもういいよ放課後とかって聞いてから帰れ!おいいいいい!」




なんだったんですか。えっちゃん人の話聞いてよほんとに。もう今来たから放課後いいよ。
どうせ同じ話するんでしょ。うわあ、とってもめんどくさいネ。
もうスイーツいらないよ。だから今日は大人しく帰ってよ!おねがいだからさああああ!
あーあ、もうほんと困っちゃうネ。後輩くんに手を焼く先輩ヨ。あれ、それってどこかの
先輩もそうじゃない?まあいっか。
めっちゃつかれたーとか思いながら、賑わう教室に戻るあたし。くるりと後ろを向いたら
先生がこっちを見ていた。あら、まだ先生いたんだ。てっきりもう職員室にゴー!かと
思っていたよ。まだここにいるなら話せるかなあ。小走りで先生に近づこうと思ったけど
先生に目を逸らされてしまた。なんでやねん。なんかいつもと雰囲気違くね?
とりあえず先生のとこにー…あ、他の子のとこに行っちゃった。ちぇ。しょうがない。
エステルのとこに戻ってご飯食べよう。先生とは放課後話そうーっと!












「体育祭の種目決め、よろしくね」
「はい、わかりました」
「ん、頼んだわよー」




男の視線の先には、友人と楽しく話をしている一人の少女。





「…なんだかねえ」




少女の知らないところでもう一方の秘密も動く。

















ゆるやかに走り始めた感情のその先は。




















時速30km 感情