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すてきな夏の物語。
そんな小説が書けてしまうような気がするくらい、今回の臨海学校はすてきだった。
自分が勝手に思っているだけだろうけど、先生とちょっと距離近くなったと思う!思いたい!
思い過ごしかもしれないけど、そうだと自分は思いたいのです!
さて、臨海学校最終日はどうしたかっていうのをざっくりさっぱり話すと、主にお土産を
あさってましたよ。先輩たちへのお土産です。サーターアンダギーを買ってみた。無難に。
あとは去年のようにのほほーんて過ごして終わりました。たのしかったよ、うん。
先生との思い出も増えたことですし。
というわけで、夏休みもだらだらと過ごし、エステルのお家の別荘にお泊りする日がきたよ。
そういえば、久しぶりに先輩たちに会うわー。元気かね。元気か。
きっとあたしに会えなくてさみしかったんだろうな!あはは!




「ユーリ先輩!フレン先輩!お久しぶりですー!」
「おう」
「久しぶり!」
「さみしかったですか?ユーリせんぱーい!」
「いや特に問題なかった」
「またまたー!そんなこと言って!さみしかったくせに!」
「なんかごめん」
「ええ!?謝るほどの拒絶!?」




先輩ひどい!あたしがいなくても問題ないって言うのね、ぐすぐす。
あたしだけか、あたしだけがさみしかったっていうんだ、そうなんだ…。




「しょぼぼーん」
「…ユーリ、すごい落ち込んでるよ」
「あーわかったわかった。ほら
「ちらっ」
がいなくてさみしかったー。来いよ」
「ユーリせんぱーい!」




来いよと言われたら本能に従って先輩の胸にダイブするしかないよね!やっほーい!
しあわせ!ユーリ先輩の匂い久しぶり!とか言って変態すぎる!それはさすがにアウト!
放送で流れそう!、アウトー!って。
なんかさ、先生の胸にダイブした時とは違う幸福感だよね。なんだろうね、この感じ。
とにかく、こんな男前の先輩に来いよって言われたあたしは、それだけでご飯は10杯いける。
そんなあたしです。
あ、そうだ。肝心なことを言い忘れてましたが、エステルの別荘はいくつもあるらしい。
もちろん海外にもあるんだって。今回は日本国内ですよ。だって花火大会行くのに、海外に
行ってたら帰って来れないもん!これが正解なのですよ。




「それにしてもエステルってすごいよねえ」
「そうだな」
「別荘だなんてねー…しかもなんか場所よくわかんないけどとりあえず、湖の近くのすてきな
 ところですわー。ジェイソンとか出ないよね?」
「出るかよ」
「出ても僕たちが守るよ」
「よっ!さすがスタンド!」
「あはは…」
「どんなほめ方してんだよ」




日本のどこかは秘密です!うふふ!っていうコンセプトで開催されたこのお泊り会ゆえに、
ここがどこなのかは正確にはわかりません。というか日本っていうことしかわからん。
ま、たのしめればおっけー?だと思います。はい。とりあえずきれいな湖の近くにある別荘。
別荘ってこれ別荘!?というレベルの大きさだけどね。やっぱり想像を上回っていた。
ジェイソン出ないといいなジェイソン。出てもスタンド先輩が守ってくれるそうなので安心
ですけどね。安全第一!
つーわけで、別荘に無事到着れーす。れれれのれーす。




「これ呼び鈴ならすの?呼び鈴。りんりーん」
「まあそうだろ」




よし、じゃあ押すぞって押すやつがねえ!お口が悪いわよちゃん!
呼び鈴がないです呼び鈴。かわりにノックのやつがあった。外国でしか見たことないよ!
しかも外国っていってもテレビで見たって話なんですけどね!ごめんね庶民で!
とりあえずどすどすやってみた。どすどす。




「あ、いらっしゃい!」
「エステルー!ほんとエステルいたよ!」
「そりゃそうだろ」
「お久しぶりです、エステルさん」
「とりあえずあがってください」
「お邪魔しまーすすすす」
「いちいち動揺すんな、お前は」
「だってかなしいかな、庶民なんですもん」
「確かに」




庶民はこういうの慣れてないんだよう!だからいつでもびくびくしてます。
もしここにある花瓶を壊したら…!とか、はたまたこのお皿を割ったら…ひいいいい!
ってなるんだよ。考えるだけでももらしてしまいそう。ははは。





























別荘でなにしてんの、あんたら?っていう話なんですが、それはまあいろいろなんです。
なにって言ってもねえ、ぐだぐだ話してるだけっていうか。あとはゲームやったり?
去年、エステルのお家で勉強お泊り会したけど、その時と同じようなことしてる。
さすがに勉強はしてないけどね。してたらそんなの詐欺だ!ってなるもんね。
それに、先輩たちも勉強はしたくないみたいですよう。大変ですもんねー3年生は。
そんなぐだぐだしていると不思議と時間は早く過ぎるものです。
ですが!ここはいつもと違う楽しみがあるよ!4人で同じ部屋で眠るのです!うへへ。
あたくしたっての希望です。もううはうはですよね。うはうは。ヨダレ注意報!
広すぎない部屋で布団を敷いて寝る。すてき!あたしとエステル、ユーリ先輩とフレン先輩が
隣同士で、向かい合ってる感じですね。修学旅行的なものを想像してくださいな。




「うわーい!たのしいよー!」
「早く寝ろよ」
「えええ!?ここですぐ寝ちゃうとか萎えるー!めっちゃ萎えるー!」
「じゃあなにすんだよ」
「お話です」
「なんの」
「んー…恋バナ?」
「寝る」
「なんでええええええ」




ちょっとくらい食いついてくれたっていいじゃん!女の子だったらすぐに食いつくよ!
餌がなくなったら自分たちで疑似餌を作り出すほどだよ!それくらい食いついて!
でも男の人ってそういう話しないのかな。あんまりしなさそう。だけど、ユーリ先輩の
恋愛事情とか気になりません?とってもとっても気になりません?




「ユーリ先輩って彼女いませんよね?」
「おう」
「すきなひとは?」
「いねーよ」
「もしかしてあたしのこと…!?」
「ジェイソン呼ぶぞ」
「呼べるの!?」




ノリ悪いよ!もっとのって!
思ったより難航しそうですよ、この人から聞きだすのは。でもせっかくだから聞きたい!
それが冒険家っていうものです。はい。




「恋バナしましょうよ、恋バナー」
「やだ」
「なんでなんでなんでー」
「自分の手の内は隠しておきたい派」
「いやいやいやーここでポロっと出してしまいましょ!」
「なんか、やだ」
「なんかって!なんかって…!ぼんやりしてるほうが逆にぐさっとくる!」
「じゃあお前が話せよ」
「いやーん!そんなの恥ずかしいー!ね、エステル!」
「……」
「エステル?」
「……」
「寝てる…だと!?女子がここで寝てどうするの!」
「寝かせてやれよ。それに、フレンも寝てるぞ」
「なにいいいいいい!?スタンドなのに寝るの!?」
「スタンドだって疲れるんだよ」
「そうなのか…」




あたしとってもびっくりネ。ここはみんなできゃっきゃうふふするとこでしょ!
なのに寝てるよ!寝ちゃってるよ!女子はここで一番食いつかなきゃいけないもんですよ!
女子はガールズトーク何時間もいけるって、そういう生き物なんだよ!エステルー!!
でも仕方ないか…。スタンドも寝ちゃってるんじゃねえ。がっかり。




「でもまだまだ眠くないヨ。あたし全然眠くないヨ」
「目、瞑ってりゃそのうち寝れるだろ」
「先輩」
「なんだよ」
「おもしろい話して」
「無理言うな」
「じゃあ子守唄うたって」
「もっと無理だろ」
「じゃあ恋バナ」
「振り出しに戻ってんだろ」
「じゃあどうしたらいいっていうんです!」
「寝ればいいだろ」
「やだやだ寝れないーまだ眠くないヨー」
「寝ろ」
「寝れないー」
「寝ろって」
「寝れないえい」
「寝ろ」
「寝れないえっふー!」
「寝ろ」
「ひゃっふー!」
「……」
「うわっふー!」
「お前ちょっと来い」
「あだだだだ!耳ひっぱらないでえええ!なんちゅー古典的なひっぱりかたををををを!」




ついに先輩に連行されました。耳をひっぱられるという荒業で。痛いよ!
女の子にはやさしくしてよう!ひどいよひどいよ!あだだだだだ!どこまで耳持ってく気!





























と、耳を引っ張られ三千里。そんな距離耳引っ張られたらきっと耳伸びちゃうね。
気がつけば夜の涼しい風が気持ちいい庭に出ていたよ。そして近くのベンチに座った。
なんておしゃれな庭だーい!




「お前な、あいつら寝てんだから静かにしろよ」
「ごめんなさあい…」
「ったく。おかげでオレも目が覚めちまった」
「好都合ですぜ、きらりーん」
「……」
「ストーップ!もう耳は引っ張らないで!伸びちゃう!さすがに伸びちゃう!」




色気もくそないよ!すっかりお兄ちゃんぶりが板についてしまってー!
妹にはもっとやさしくしないとだめよ!お兄ちゃん!




「もう、先輩ってばーもっとやさしくしてくださいよう」
「お前にさ、聞きたい事あんだけど」
「はい?」
「おっさんと仲良いよな」
「レイヴン先生のことですか?」
「ああ」
「まあそうですねえ、気が合うというかそんな感じですかね」
「へえ」
「それがどうかしたんですか?」
「お前さ、おっさんのこと好きなんじゃねーの?」
「すき?すきってまあ普通にすきですよ」
「そうじゃなくて、お前の言う“恋”ってやつじゃねーのかって話」
「え」




な ん で す と ?
すきですよ。ええ、あたしレイヴン先生がすきです。はい。ってえええええええ!?
ちょ、ユーリ先輩おそろしい子!あたしどうしたらいいんですか!ここはどうごまかせば!
いやいや、え?ちょ、え?落ち着け自分。落ち着け。うわわわ、どうしよう。
ごまかす言葉が一切でてきません。えええっとおおおおお!?




「ここここここここいって先輩なに言ってるんですかー!相手は先生ですよ、先生!」
「いやお前いくらなんでも動揺しすぎだろ」
「動揺?動揺ってなんですか動揺って!」
「おっさんはやめておけ」
「…え?」
「お前がどうにかなる相手じゃないだろ」
「べつに、あたし先生のこと、すきじゃないもん…」
「って言うと思ったか?」
「はい?」
「別にいいんじゃねーの、おっさんのこと好きでも」
「は?え?ん?」
「オレは、お前がおっさんのこと好きでもいいんじゃねーのかって言ってんだよ」
「だって、今…。は?なにこれ?え?」
「悪かったな、試すようなこと言って」
「試す?」
「最近のお前見てると、なんとなくおっさん絡みでいろいろあるみたいだったからな」
「あ、はい…そうですか」




なんですかこれ!あたし1人で焦ってどうしようかとパニックいえい!ってなってたじゃん!
しかも先輩にやめとけって言われたかと思って、すんごく悲しかったし。ばか!




「ユーリ先輩のばか!」
「悪かったって」
「ばかあ!」
「泣くなよ」
「だってだってえ…!」
「悪かったって。ほら、こっち来い」
「ううー」




呼ばれて、とりあえず先輩の膝の間に座る。なにこれ、おいしい。じゃないだろ自分。
これじゃあほんとにお兄ちゃん子だな、あたし。
先輩もなんだかんだで妹に甘いお兄ちゃんみたいな感じだし。




「確認しておきたかったんだよ」
「確認?」
「お前がほんとにおっさんのこと好きなのか」
「どうして?」
「最近、おっさんも変わったと思う」
「先生が?」
「ん。お前も変わったけどな」
「あたしも、ですか?」
「おっさんのことになると、お前女っぽくなる」
「あたし女ですう!」
「ちげーよ。そういう意味じゃなくてだ、妹みたいながちゃんと女に見えるってことだよ」
「へえ。先輩よく見てらっしゃる」
「手のかかる妹だからな」
「あは」
「だからこそ、心配だったわけだ。中途半端におっさんに恋なんてした日にゃ、お前が
 泣くだけだと思ったしな」
「どうしてそう思うんです?」
「おっさんはなー、まあくせがあるからな。逃げるのがうまいっつーか。本気にさせるには
 お前がおっさんを変えなきゃだめなんだよ」
「あたしが先生を変える?」
「おう」




そんなことあたしにできるのかね。先生を変えるだなんて、そんなこと。
というか先生を変えるってなに。なにを変えればいいっていうんだい。別に今までなんかした
わけでもないし。うーむ。




「でも変えるってなにをすればいいんですかね」
「なにもしなくていいんじゃねーか」
「なんですと?どっちなの!いったいどっちなの!変えるですよね?だったらなんかするんです
 よね!?」
「今まであのおっさんになんかしたのか?」
「してないですよ!だから聞いてるんですー!」
「だからなにもしなくていいんだろーが」
「はい?」
「お前はそのままでいいんだよ。なにもしなくてもいい。そのまま一緒にいたら変わるだろ」
「ほんとに?」
「さあ?お前次第じゃねーのか」
「あ、そうですね…がんばります?」
「おう。ま、適当にやってりゃどーにかなるだろ」
「そういうもん?」
「そういうもん」
「ですか」




適当なんだか真面目なんだからわからないアドバイスだよう。でも真面目とはなんか違うけど。
真面目っていうかこう、なんだろうね。とりあえずこのままでいいってことみたい?
変わった、か。そしたら、先生、あたしのことすきになってくれるかな?そうなのかな?
先生があたしのことをすきになってくれるなら、がんばる!あ、でもがんばらなくてもいいのか?
よくわかんないけど、今までみたいにちょいちょいがんばればいいんだな。よし。




「ユーリ先輩、ありがと」
「おう」

















あたしとわるつをおどりませんか?




















真夜中 わるつ