トラック買取










21











「海だ!海だよエステル!」
「はい!海ですね!」




相変わらず沖縄の海はすてきです。きれいです。透き通っています!
海を見るだけでテンション上がりっぱなしですよ。さあ、海に突入だーい!




「うわーい!冷たい!でも気持ちいい!」
「ですね!」
ー!」
「ん?あ、ツバキ!モニカ!」
「おはよー!」
「おはよう!、エステル!」




実は、ツバキとモニカと呼ぶ仲になったんですね、あたしたち。
そんでエステルにも紹介したので、みんな仲良しこよし!女の子なんてそんなもん!
というわけで、4人で遊ぶことになったよ!わーいわーい!




「ていうかさ、ツバキ胸大きいね」
「どこ見てんのよ!」
「胸です」
「はっきり言うな」
「それでいくつ?」
「なにが?」
「サ イ ズ ★」
「なんでこんなところで言わなきゃいけないのよ」
「だって知りたいもん!ね、エステル!」
「はい!ぜひ教えてください!」
「エステルまで…」
「おしえておしえてー!」
「…D」
「なんと!でーですかでー!」
「でーってあんたおばあちゃんじゃないんだからっていうか声大きい!」
「D…」
「エステル、そう落ち込むなって。そのうち大きくなるさ」




ツバキってば胸大きいのね…。DだよD!高校生でDって…!エステルが気にするのもわかる。
というかどうしてそんな育ったのか知りたい。ぜひ知りたい。




「で、どうやったらそんな大きくなるんですか教えてください師匠」
「別に何もしてないし」
「なん…だと?神さまは不公平だ!うわああん!」
「不公平です…」




こうして打ちひしがれるあたしとエステルなのでした。ちくしょう!





























全力で遊ぶこと数時間。若いからと言って体力がいつまでも続くわけじゃあないのよ。
疲れました。休憩を入れましょう休憩。ターイム!




「お腹空いたよう!お昼にしようお昼」
「そうですね」
「うん、確かにちょっと疲れた」
「じゃあご飯買いに行こっか?」
「あたし買ってくるよ」
「わたしも一緒に行きます」
「じゃあ頼んでもいい?」
「おっけー」




というわけで、あたしとエステルがご飯を買いに行くことになりました。
さあて、なに食べようかなあ。やっぱりやきそばとフランクフルトと焼きとうもろこしとー、
って考えて、ここにもしユーリ先輩がいたらどやされる気がした。絶対なんか言われるな。
お前食い過ぎなんだよとか、腹出るぞーとかいろいろ言われそう。なので、ちょっとひかえめに
しようかなあ。あは。
去年よりは少なめにした。うん、このくらいが普通なんだなきっと。今気がついた!




「じゃあ戻りましょうか」
「あ、ちょっと飲み物買ってくる!」
「わたし、ここで待ってますね」
「うん!」




水分補給は大事だよ!この暑い中じゃあ水分は必須ですよう。もうカラカラになってまう。
ので、いそいそと飲み物を買うあたしです。うふ。
と、ここで見覚えのある後ろ姿を発見!




「せんせー!」
「おーちゃん」
「先生も海にいたんですねー!」
「一応先生ですから、生徒を見てなきゃでしょ」
「あ、なるほど!おつかれさまです」
「ほんとよう。って水着だ水着!」
「どこ見てんですか」
「そんな冷めた目をしないでえ!かわいいわねってこと!」
「へへー!」
「まあ、ちょっと胸が足りな」
「は?」
「いえ、なんでもございません」




どこ見てんのよほんとにこのおっさん!セクハラだよセクハラ!ぷんぷん!
いやまあたしかに胸ちょっと足りないような気もするんですけど、これからだもん!
と言いつつちょっと胸に手を当て確認。育つ気あるよね?胸!




「先生は泳がないの?」
「んーめんどくさい」
「どんだけ!でもおっさんだから仕方ないかー」
「おっさん関係ないでしょ!むむむ」
「じゃあバタフライとかしたらいいと思う」
「いや海まで来てバタフライするのもなんか…ね?」
「というかバタフライできるんですか?」
「やったことない!」
「自慢気に言わないでください…あ、」
「ん?」
「エステル…!」
「ちょ、ちゃん!」




先生の肩越しにエステルが昨日の後輩たちに絡まれているのを見た。
あきらかに嫌がってるしというか無理やりくさい。許すまじ!フレン先輩の代わりに成敗!




「こらこらこら!離しなさい!」
!」
「あんた昨日の…」
「あんたじゃなーい!先輩ですけどこれでも!っていうかその手を離してください!」
「別にちょっとくらいいいだろ」
「よくない!嫌がってるでしょ。ていうかそんな強く掴まないで。女の子なんだから」
「うるせーな!」
「なんだとコラ!」
「離せよ!」
「お前が先にエステル離せコラ!」
「ちっ…!」
「うわっ!」
!?」




ずしゃーって砂に倒れたあたし。恥ずかしい!なんか恥ずかしい!そしてなんか痛かった!
ひどいよひどいよ!押すなんてひどいよ!こんないたいけな少女をちくしょうこのやろー!
むかつく!極限にぷんすか第2弾だぞ!ぷんぷん!
ってしてる間になにエステル連れてこうとしてんだーい!どこの不良だよ!




「ちょっと!エステルを離しなさ…!」
「こらこら、嫌がってるんだから無理強いしちゃだめでしょ」
「レイヴン先生!」
「はいはい、少年早く離す」
…!」
「エステル!だいじょぶ?」
「はい!それよりは、」
「だいじょぶだよ!」




エステルが半泣きでこっちに来た。もう、なにもなくてよかった。ほんとよかった。
なにかあったらどうしようかと冷や冷やだったわ。




「女の子は傷つけるんじゃなくて守らなきゃだめでしょ?」
「はい…」
「じゃあ、さっさと謝る!」
「すいませ…」
「俺に謝ってどーすんの。この子に謝りなさい」




先生は未だ座り込んでいるあたしの方を向き、後輩たちに謝るよう促した。
なんか小さく見えるね、後輩たち。




「「すいませんでした!」」
「許す!…今度からは、乱暴にしないでね?エステルのこと」
「はい…すいませんでした」
「ん!」




ほんとに反省した様で、ちょっとしょんぼりしながら後輩たちは去って行った。
ま、やんちゃな年頃だから仕方ないね。エステルになにもなかったからまあいいさ!
って、あたしもいつまでも加藤茶のちょっとだけよ体勢から脱しなければ。いやん。




「よし、じゃあ行こう…か!?」
?どうしたんです?」
「うん!?いや、なんでもないよ!」




あれれれ。ちょっと足が痛いような気がするぞ?気のせい?いやでも、んんん?
ちょっと見てみよう、うん。ちらっ。
あ、切れてます。ふくらはぎが切れてます。血がああああああ!いやー!なんてこったい。
まあ倒れた時なんか当たったような気がしたんだよね!それどころじゃなかったから
スルーしたけど。やっぱり当たってたよ!
でもどうしようかな、エステルにバレたら心配するしな。どうしようかな。
ええっと、こういう時はちょっとお手洗いにってごまかすか。そうするか。




「エステル、あたしちょっ…と!?」
「え、!?」




あらやだあたしってば宙に浮いてる!空を飛んで…ないよ!空は飛んでないよ!
でも目と鼻の先に先生の顔があるよ。そんなあたしはどっきどきです。
というかどういう状況?あ、なるほどこれが俗に言うお姫様抱っこか!ま じ で ?




「せんせ、」
ちゃんを医務室に連れて行くから、お嬢は先に戻ってて。ちゃんと誰かと一緒に
 いなさいね」
「先生、わたしも一緒に…!」
「だいじょぶだから、お嬢は戻って、ね?」
「…はい」
「エステル!あたし平気だから、先に戻ってて?」
「…はい、わかりました」




エステル落ち込んでたな。エステルのせいじゃないのに。あとでちゃーんとなぐさめなきゃね!
というか今さらだけど、この状況結構恥ずかしいかも。でもうれしいかも?複雑!
そんでまあ、無言で医務室に参りまーす。みたいな感じです。





























プレハブみたいな医務室に入ると誰もいなかった。ちょうど出払っているみたい。
先生はあたしをベッドの縁に下ろした。それから、消毒液やら包帯やらを持ってこっちに
戻ってきた。あたしに向かい合ってイスに腰掛ける。
どうでもいいけど、なんかここちょっと冷房きいてて寒い。無意識に腕をさすった。
と、急に先生がTシャツを脱いだ。すてきなボディですね!じゃなかった。どしたどした!




「こんなんで悪いけど、これ着てて」
「え?」
「ここじゃ身体冷えちゃうでしょ」
「あ、はい…ありがとう、ございます」




先生は冷房の効いた部屋じゃ冷えるからってTシャツを貸してくれた。
先生のぬくもりが…ってどうしてあたしはこう変態ちっくに考えるのかね。だめな子。
というか、先生の体すてきなんだけど、一つ気になることが。
左胸にある傷。どうしたのかな。もしかして心臓悪かったりするのかな。どうなのかな。心配。
そんなことを思っているあたしを尻目に、先生はてきぱきと消毒をし始めた。




「ちょっと滲みるわよ」
「はい…いっ!」
「我慢して」
「はひ」




ちゃんと消毒をしてから丁寧に包帯を巻いてくれた。ちょっと大げさじゃない?
絆創膏を2、3枚貼れば問題ないと思う。雑だな、あたし。あはは。
にしても気になる。先生の胸の傷。痛くないのかな?だいじょぶなのかな?




「気になる?」
「え」
「この傷」
「え、あ、ごめんなさい」
「いいのよ。これは昔事故にあってね。その時の傷」
「…もう、痛くないんですか?」
「うん、痛くないわよ。もう10年くらい前の話だからね」
「そう、ですか」
「…そんな顔しなーいの」
「え?」
ちゃんが痛いって顔してる」
「だって、」
「やさしい子ね、ほんとに。それから無茶しすぎ!」
「あは、ごめんなさい…」
「先生は怒ってるんじゃなくて、心配なの。わかる?」
「はい、」
「女の子なんだから、あんまり突っ走らないの!…心配するでしょ」
「せんせい、」
「もう、目が離せない子なんだからー。ちゃんは」
「あ…」




どうしてそんな顔するの?どうしてそんな目をするの?どうしてそんなやさしく触るの?
先生、先生、先生。そんな顔しないで。そんな目をしないで。そんなやさしくしないで。
勘違いしちゃう。先生がすきなの止まらない。言いたい。先生がすきって、言いたい。




「せんせ、」



  
  バァンッ!




!大丈夫!?」
「ツバキ…モニカってエステルも。みんなどしたの」
「どうしたのじゃないでしょ!あんたが怪我したって聞いて来たんでしょ!」
「あひ!そんなこわい顔で迫らないでえ!」
!」
「うわ、エステル?」
「…ごめんなさい、わたしのせいで」
「エステルのせいじゃないよ!エステルが悪いことなんか一つもないよ!悪いのは、
 貝殻です。ね!」
…」
「ほらほら、泣かないの」
「はい…すんすん」
「じゃ、先生はもう行くね。ちゃん、今日はもう海入っちゃだめだからね」
「あ、はい!先生、ありがとうございました!」
「はーい」




先生はそっと医務室を出て行った。あ、Tシャツ返してないや。
…あやうく先生にすきって言いそうだった。あぶねーまじで。でも、言っちゃいそうな
空気作ったの向こうだもん。ほんと、先生ってばあたしのことどう思ってるのよう!
ちょっと仲良い生徒か。所詮、生徒だよね。あうー。すきになれよ、ばか。





























「レイヴン?あら、傷痕いつも隠してるのに珍しいわね」
「だから今Tシャツ着てるんでしょ」
「その前に着てたのはどうしたの?」
「まあ、ちょっとね」
「そう。なにかあったの?」
「べつにー?」
「顔、こわいわよ」
「……」




一人の男は、戸惑いを胸に抱く。





























去年と同じく1人散歩。海岸まで歩き流木に腰掛ける。
散歩してくると言ったらエステルがだめです!ぷんぷん!って感じで迫ってきたけど、
おねがしますよーエステルおねがいだよーと押してみたら許可してくれました。いえい。
なので、先生に借りたTシャツを持って海岸を散歩です。
なんとなく、先生もここに来る気がしたから。だから持ってきた。
夕日の海を見ながら、先生を待っています。




「んー。夕日がきれいだよう」




あれからもう1年経ったのか。早いなあ。ここではじめて先生を意識したと思う。
夕日に照らされた先生がすごくきれいだった。男の人をきれいっておかしいかもしれないけど。
でも、すごく夕日が似合うと思った。先生の目は海みたいで、夕日の色が似合うんです。




「加山雄三唄わないの?」
「…先生。今日は唄わないんですー」
「あらそうなの」




ほらね、やっぱり会えた。そんな気がしてたんです。
先生は、去年と同じようにあたしの隣に座った。全部が去年と同じ。あたしの気持ち以外は。




「先生、これありがとうございました」
「ん?ああ、Tシャツね。足、だいじょぶ?」
「はい。先生が丁寧にやってくれたから平気ですよー」
「そか、よかった」




波の音。潮の香り。橙色の空。隣には先生。穏やかな気持ち。
この瞬間がすごく大切で、愛しいなって思う。




「去年を思い出しますね」
「そうね」
「来年は、ここにいないんですね。…なんかさみしい」
「また来ればいいわよ」
「そう、ですね」




その時は先生が隣にいないじゃない。先生はわかってる?
あたしは、先生と一緒にここにいたいんだよ。先生とまたここに来たいんだよ。
隣にいるのに、遠いよ。どうしてかな。あたしを見てほしい。あたしだけを見てほしいよ。
どんどん、欲張りになっていく。もう止められないし、止まらない。




「そろそろ、戻りましょーか」
「…はい」
「よいしょっと。ほい」




先生が先に立って、手を差し出す。今だって、夕日を背に受けて立つ先生がきれい。
すきですきで仕方ないって、きっとこういう気持ちを言うんだね。




「ほら、ちゃん」
「……」
ちゃん?」
「おんぶ」
「え?」
「おんぶしてください、おんぶ」
「なーに言ってんの!ほらほら早く」
「足痛い!おんぶー」
「…もう。わがままなんだからー」




と言いつつ先生はあたしの前でしゃがむ。




「うわーい!」
「よいしょっと」
「せんせ、重くないですか?」
「そうねえ、ちょっと膝にくるかな」
「……」
「うそうそ!このくらい軽い軽い」
「じゃあ走ってください」
「走れってか!砂浜走れってか!」
「GO!」
「むぐぐ。おうりゃー!」
「はやーい!先生意外とやれる子!」
「あたぼうよー!」
「あはは!」




先生の首にしがみついて、今この時だけのしあわせを噛み締めた。
ねえ、先生。あたしをすきになってよ。あたしも先生をしあわせにしたい。
でも、今はまだいいよ。これからすきになって。少しずつ、あたしをすきになって。
その時をずっと、待ってる。

















橙色のあなたがすきです。