再び春が来た。こんにちは春。あたしは前に会った時より、少し大人になったよ。 たぶん、きっと。ほんの少しだけ、ね。 今日は始業式。去年の今頃は入学式があった。始業式の日より少し前に、だけど。 入学式の日に遅刻とかありえないよね。ほんと、ありえない。でも今まさにもっと ありえないことが起きてる。それは、今日もまた遅刻ってことだYO! ふざけんな、まじで。どいうこと?これデジャヴってやつですか。なにそれすてき! ばかやろー!今日は大事な日なんだよ!わかるか!2年生になる新しい日なんだよ! つまり担任の先生が誰かわかる日なんだよ!ここにあたしのすべてがかかってる わけですよ、わかりますかばかやろー!っていう言葉はブーメランのようにあたし の方へ帰ってくるんですね。おかえりー。 とりあえず入学式の日のようにあたしはウイダーinゼリーをダイソン並の吸引力 で吸いながら走ってます。なんかもう鼻から出そう、ゼリーが! そして電車にすべりこみだーい!良い子はマネしちゃだめだからね! 「あぶねーあぶねーギリギリ!」 「アウトでしょ」 「え?」 「やほーちゃん」 「えええ!先生?」 「ん、先生」 まじすか。まさかのレイヴン先生に遭遇。ていうかあんたも遅刻かい。なんか余裕の 顔してるけどアウトはあなたもよって話だよね。でもまあ、ラッキー? とりあえず先生の隣にちょこんと座ってみた。 「先生遅刻ですよ」 「ちゃんもね」 「まあそうだけど。でも先生いつも遅刻ですね。入学式とか始業式とか」 「そうねえ、つい」 「ついってだめでしょ」 「ちゃんもなかなか同じような感じじゃない?」 「いやいや、先生ほどじゃあありませんよ」 「先生くらいになるとこれくらいはちょちょいのちょいよ」 「褒めてないから」 「およ?」 なんかいいな。先生と一緒に学校行くってすてき!もしかしてもしやもしやの良いこと が起こる予感!?そういうことかい。そうなのかい。 あ、でももう良いこと起きてるじゃん。あれ、じゃあもう運は使い果たしたよみたいな? あれれのれ。いやそんなはずはない!きっとこれはレイヴン先生が担任になる予兆だ! そうだ!その通り!そうだと信じたい! っていうか直接本人に聞いてみちゃう?そうしちゃう?それがいいわ、うん。 「あのさー先生」 「んー?」 「先生って今度何年生の担任持つんですかー?」 「ひみつー」 「とか言って教えてくれちゃうんでしょー!」 「いんやーひみつー」 「せんせーいおねがーい」 「だめー」 「おねがいおねがーい」 「だめだめー」 「けちー!」 「学校行けばわかるでしょー」 「けちけちー!」 「ま、一応先生やってますから!」 「一応ね、一応」 「ちゃんとした先生だもん!」 「ふーんだ」 だめでした。やっぱり先生教えてくれないヨ。さすがにだめだたヨ。わし、負けました。 しかたない。楽しみはまたあとでだぞ★って言われているんだという気持ちで行こう。 そうしよう。それが正解じゃボケェェェエエエエエ!!!ってな。 とりあえず先生の隣を堪能しよーっと。むふふのふ。 ていうか今思ったけど、まだクラス替えの紙って貼り出されてるよね?どうか出しっぱ でありますように。 電車でぐだぐだ先生と話して、駅に到着してから途中までは一緒に行った。 でももしなんか誤解されるようなことがあったらなんちゃらで、別々に学校へ向かった。ちぇ。 せっかくだから先生と一緒に学校に行きたかったけど、まあしょうがないもんね。 というわけで、こっそりこそこそクラス替えの紙を見に行った。そこにはまだ担任の名前 は書いてない。始業式が終わってからのお楽しみだよ! とりあえずエステルと同じクラスということがわかっただけでもうれしさ百倍! うはー、なんか今から緊張してきたよ。どきどきだよ。どうしよう!レイヴン先生で ありますように!なんか今日祈ってばっかだな。 あ、そういえば、桜が咲いてるね。すっかり桜の存在忘れてたけど。うちの学校にも意外と 桜の木あるんだよなあ。秘密の花園にもあるんだけどね。ここだけの話! ◆◆ 「エステルおははー」 「あ、!遅刻しましたね?」 「あはあは★ごめんなさいいいい!」 「今度からは気をつけるように!です」 「わかりました、です」 かわいいエステルに怒られました。エステルから小言というか説教というか、そういう ものをいただくことが意外と多いちゃんです。うひー、ごめんなさい。 にしてもいつ教室の扉がガラッと開くのか気になって仕方ねえぜ。そわそわ、そわそわ。 「エステルー緊張するよう!」 「だいじょうぶですよ、きっと先生です」 「そうかなそうかなそうかなー」 「そうです」 「そうでしたか。いやーん、早く来てよう!もう心臓が持ちませんんんんん」 とか言ってるうちに扉がついに開いた。ガラッと開いたよガラッと! スローモーションのように扉ガラッからの、足が教室に入り込んでくるよう!誰だ! 「はーい、席ついてー」 「…うそ」 夢ですかこれは。夢なんですか。It's a dream★みたいな感じ? どうしよう、目がカラカラになってます。開ききってるので。なにそれこわい。 「このクラスの担任になったレイヴンです。よろしくー」 どうしようもうほんとどうしよう。とりあえずほっぺたつねってみようか。いたひ。 痛いよ。つねったら痛いよどうしよう!! 「!よかったですね!」 「うそだ夢だ気のせいだ」 「うそじゃないですよ!レイヴン先生ですよ!」 「うそだあ…」 うれしいのになんか夢じゃないかって思えてでもやっぱり最高にうれしい。 レイヴン先生があたしの担任だなんて。毎日教室で会えるなんて。そんなのってうれし すぎるよう。どうしよ。今なら感動して泣ける。うれしすぎて泣けるよう! そしてすかさず先生をガン見。これ基本でしょ、うん。うわあ、ほんとにレイヴン先生だ。 思わず顔がにやけちゃう。にやにや。うふふ。とかなんとかで目があった。あらやだ。 どっきどきです。胸がどきどきですよう! 「じゃあそこのお嬢さんちょっとこっち来て」 「は?あたし?」 「そうそう、お嬢さん」 「え、あ、はい」 なんだなんだ。急に呼び出しくらったぞ。ていうかみんながこっち見てあたしどっきどき なんですけど。意外とこういうのには弱かったりするんですー。てへへのへ。 とりあえず教壇に向かい、先生の前に立つ。 「お嬢さん、お名前は?」 「です」 「はい、じゃあ今日からちゃんは学級委員ね!」 「は?」 「学級委員!よろしくー」 「よろしく?え?なにこれ罠?」 「男の子の方はどうしようかなー。じゃあそこのきみー」 ちょ、待てコラおっさん。あたしが混乱してる最中にちゃっかりもう1人を決めようと するんじゃないよ!っていうかほんとなにこれ?どういうこと?学級委員て誰が? むしろ学級委員てなに?もうよくわかんないんですけど! 「はい、名前はー?」 「小野です」 「え?小野…だと?」 「よう、」 「げえええええ」 「あら、友だちだった?」 「友だちじゃないです元クラスメイトですただそれだけのことです」 「そういうことなら話が早いわね、じゃあ小野くん?学級委員よろしくね」 「はい」 「はいじゃねえええええ!断れよ!断ってよ!断ってくださいよ!おねがいだよ!」 「じゃあお前が断れば?」 「いやだ!お前が断れ!」 「まあまあ、2人とも仲良くしてー。はい、握手」 「ひいいいいい!」 なんてこったい!天国に昇れるくらいのうれしさが小野のせいで地獄に行き先変更★ ちなみに、小野を忘れている方もいらっしゃるんではないかと思うので軽く復讐、間違えた。 復習すると、1年の時に学園祭委員をやっていたあのむかつく野郎です。なにかとむかつく あいつです。あーやだやだ!なんでよりにもよってリア充爆発組の小野なんだよ! でも、仕方ない。ここはレイヴン先生のためにあたし我慢する。我慢を。 ここはあたしが大人になって我慢を「足引っ張るなよ」ぶっ殺す!小野このやろおおおお!! ◆◆ 「先生!」 「んー?どしたのちゃん」 「どしたもこしたもあーりませんよ!」 「え?なになに?」 「なんでよりにもよって小野に…!いやそんなことはどうでもいいか。ていうか担任 ですよ担任!」 「そうねえ。おっさんもびっくりしちゃったわよ。まさかほんとにちゃんの先生 になるとはねー」 「ですねー」 関係ないけど、ちゃんの先生って響きいいね。録音しておきたい言葉ですね。 なんかあたしだけの先生!みたいな。ばかか!恥ずかしい!きゃっふー! 「ま、これもなんかの縁ということでよろしくねー」 「こちらこそよろしくおねがいしまっす!」 「はいはいー」 「ってそういえば、どして学級委員なんかにしたんです?」 「うーん、なんとなく?」 「なんとなく…だと?」 「うそうそ!だってちゃんと先生は仲良しじゃなーい」 「うええ?」 「せっかくだからちゃんにやってもらった方がいいかなあと。頼みやすいし、 いろいろと」 「ふうん」 「お気に召さない?」 「べっつにーそうじゃないですけど?」 「これが噂のツンデレ?」 「ツンツンツンツンです」 「デレてよ!」 「そのうち」 「今デレないのね、ざんねーん。あ、そうだ。物理係の方もおねがいしまーす」 「はい?」 「学級委員兼物理係ね」 「はい?」 「よろしくね、ちゃん!」 「いやいや!兼っておかしくないですか兼って!」 「剣?」 「兼!」 「県?」 「兼!」 「券?」 「え、これ殴られたいパターン?」 「ごめんなさい」 「なんで掛け持ち?」 「いやまあお得かなあと」 「なにがだ」 確かに先生と一緒にいられるのはうれしいけどさ。でもさでもさ、掛け持ちってあんた。 ぐーたら一番のあたしに掛け持ちって!悪いけど器用な子じゃないんですよ、あたし。 それを覚悟で頼むのかい。そうなのかい。ま、でもノート集める程度か、係なんて。 「どうせノート集めるくらいですもんね。まあやりますけど」 「あとは必要なものを運んでもらったり?」 「でもそれくらいですもんね」 「授業中にいろいろ手伝ってもらったり?」 「それくらいですもんね」 「パン買ってきてもらったり?」 「パシリじゃねーか!」 「ばれた!」 「いやいやいや」 「冗談よ、冗談。ま、そんな感じだからよろしくねえ」 「はあい」 とにもかくにも、先生といられる時間が増えたことにるんたったしています。心の中で。 だってさー、そんなあからさまに喜んじゃったりしたらだめでしょ。ね! 先生って変な所で勘が良いから。いやこれ推測なんですけどね、あくまでも。 こういう掴みどころがない人ってだいたい鋭い人多いんだよ。これも推測ですけど。 だから好意を丸見えにするわけにはいかないのです!恋する乙女は大変です。 いつかはね、そりゃあ先生にアタック!するかもしれないんですけど。ええ。今はまだ その時ではないのです。タイミングを見計らうのも大変さ。 でもなにはともあれ、今日は良いことあったと思う。うん。もう学校楽しみだよう! 「そんじゃ、そろそろあたし帰りまーす」 「はいよー気をつけて帰んなさいよ」 「はあい」 「あ、ちゃん」 「はい?」 え。なんですかなんですか。 先生に呼びとめられて向き合うと急に先生が手を伸ばしてきた。ちょ、なんすか! 自分の心臓の音がうるさくて、先生にも聞こえてしまうんじゃないかってくらいどきどき いってる。なになに、一体なんなの! 「せんせ、」 「ほい、とれた」 「は?」 「これ」 「桜の、花びら?」 「ん。頭についてたわよ」 「え、あ、そうですかさよなら」 「さよならってえええ!あ、行っちゃった」 急にそういうことするなって話ですよ。そんな、あんた!急に触られたら、だって、 緊張するじゃんか。どきどきするじゃんか。もう!また顔が熱いよ。 このくらいで顔赤くするとかなに、とんだお子様じゃないか!このくらいで、さ。 いや、でもあのそのほら。 「…恥ずかしいよう」 少女は恋に真っ直ぐまっしぐら。 |