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ummer
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早いもので、高校1年の夏がやってまいりました。
ついこないだ高校に入学したかと思いきや、もう夏だよ夏!いやー早いです。ええ。
そして青春の夏がやってきましたよ!みなさんお待ちかねです!
夏休み突入寸前に、なななななんと!ユーリ・ローウェルなる先輩(イケメソ)とアド
レスを交換しました!ひゃっふうううううう!
すてき!なんてすてきな夏の始まりだよちくしょうコノヤロー!青春ありがとう!
でもアドレスを聞いたあたしってすごくね!?普通はいけないよ!普通は怖気づいてナ
ンパなんかできないよ!…あれ、ていうかやっぱりナンパなの?これってナンパなの?
どうなのかしら?とかなんとか。
でもでも実はこれには続きがありまして、このことをエステルに話したらユーリ先輩と
知り合いだったんですう!どうやらフレン先輩と親友らしいユーリ先輩とまあ自然と出
会い仲良くなったんですって!これは運命か?そうなのか?
だがしかし、どうやらエステルのご様子を見たところ、ユーリ先輩にちょっとホの字な
んじゃねえかと。乙女の勘です。
まあいいんだ!親友のすきな人を横取りなんてそんなことあたしにはできましぇん!
実際横取りできる技術兼魅力があたしにあるかはまた別の話なんですけどね。
そういうわけで、あたしはエステルの応援をすることにしますです!エステルが相談し
てきたら全力で応援します!それまでは静かにぬるーい目で見守ることにするぜい!
「で、準備した?」
「もちろん準備できました」
「まじすか。さすがエステルさん、お早いこって!」
「早いって、臨海学校は明日からですよ?」
「それを言われるとあいたたたー☆つって!」
「……」
「無言はやめて!無言は!」
「早く準備しないと明日遅刻しますよ?」
「うわあん!今からやるよ!夏の思い出作りたいよおおおお!」
「じゃあがんばって準備してください!」
「…うい」
「それではまた明日!遅刻しないようにしてくださいね!」
「はいいい!」
というわけで、明日から臨海学校です!でも実際旅行ですよ旅行!万歳!
しかも1、2年合同の臨海学校です!3年生ざまあ!嘘です!だって3年生は9月に修
学旅行あるしー!
さてさて、臨海学校でどこに行くか。それは、ななななんと!太っ腹です学校さまさま
あああああ!沖縄です沖縄!超ラッキーじゃね!?格安で行ける旅行ですよ!ほんとす
げえよこの学校!理事長は神ですね!ありがとう神!あたし幸せですううう!
とかなんとかで、準備しなきゃやばくね。ほんとに遅刻とかしたら爆笑。だからがんば
って準備する!
「ギリギリワロタ!」
「間に合ってよかったですね、」
「ほんとだよ!ギリギリすぎて冷や汗だか暑さのせいで出た汗だかわかんないくらい汗
すごいです!ていうかもっと余裕を持てよ自分!自分はばかです自分んんんん!」
「まあまあ!間に合ったんですから、沖縄おもいっきり遊びましょうね!」
「だよね!間に合ったんだしいいよね!終わりよければすべてよし!楽しみだー!」
うふふふー!と自分でも気持ち悪。と思いつつにやけ顔が止まらないあたしです。
そんなあたしに頭にPON☆と手が乗っかりました。らぶううう!なにが。
「お、てっきりは遅刻するかと思った」
「ユーリ、そんなこと言うものじゃないよ」
「ユーリ先輩!フレン先輩!」
「よう」
「久しぶり、2人共」
「何言ってるんです?フレンは昨日会ったばっかりですよ!」
「あ、いえ、そうなんですけど、すみません…」
「フレン先輩ってほんとにエステルに弱いんだねー」
「実に面白い絵だよな」
「それわかりますわー」
「2人共何勝手なこと言ってるんだよ!」
「うふふふ」
「あははは」
「なんだか2人とも気味が悪いです」
「気が合うみたいですね、どうやら…悪い意味で」
「そんなことないですよねーユーリ先輩」
「そうだなー後輩」
「「……」」
ここからあたしとユーリ先輩の悪友関係が築かれたのでした。
いじりがいがある人たちであたしってばにやにやが止まりません。にやにや。
「あ、そういえば先輩たちの担任の先生って誰なんですかー?というかそもそも文系と
理系どっちなんですか?」
「ん?ああ、そういえばお前には言ってなかったか」
「僕達は理系だよ。それに、クラスも同じだしね」
「へえ!そうなんですか!」
「で、担任が、」
と、ここで割り込む第三者。
「いやーバカンス楽しみだねえ」
「バカンスって、教師がそんなんでいいのか」
「あははは…」
そしてあたしはその第三者の姿を確認してびっくらこいた。開いた口がふさがらないと
はこのことを言うんだろうか。口がぽかーん現在進行形。
割り込んできた第三者とは、なんと放課後毎日のように会っていたレイヴン先生だった
のです!まさかの登場すぎてガン見です。ていうかほんとに教師なんだ。いや別に疑っ
てたわけではないんだけどね。ほら、校内で見たことなかったしい?なんていうか、ま
あとりあえず動揺してることは確かなんですけどね。あ、もちろんあたしが。
「、このおっさんがオレ達の担任のレイヴンだよ」
「ユーリ!先生に向かっておっさんは、」
「いいのよ、フレンちゃん。ユーリにレイヴン先生ー!って言われてもなんか今日どう
した!?ってなるし」
「それもどうだよ」
「面白い先生ですね、」
「え、ああ、うん」
面白い先生っていうか。うん。え?は?この人レイヴン先生だよね?なんかこう、おか
しくない?あたしのことスルーですか、コラ。
「というか、2人共かわいい後輩連れちゃって青春?そうなの?」
「いや、気持ち悪いからおっさん」
「ユーリ!」
「相変わらずシビアなユーリにおっさんは胸が張り裂けそうだよ」
「あの、先生もその辺にしておいて」
「そうね、さすがに後輩ちゃんが引いちゃうかもしれないものね」
「もう引いてると思うけどな。でも一応あいさつはしておけばいいんじゃねえか?」
「あ、初めまして、エステリーゼと申します」
「ご丁寧にどうも!この子が噂のフレンちゃんのご主人さまか、なるほど。今日からお
嬢と呼ぶことにしよう」
「お嬢て…、それ別のご主人さまじゃねえか」
「で、こちらのお嬢さんは?」
「え、あたし?」
「そそ、お嬢さん」
え、これはつまりあれですか。初対面を装えっていことですか。そういうことなんです
か。なんか、なんかそれって、複雑。
「…、です」
「ちゃんね、よろしくー」
「毎回思うが、教師がそんな馴れ馴れしくていいのか?」
「いいじゃないのー!堅苦しいよりこっちのがよっぽどいいでしょ?それともユーリは
ローウェルくん!って呼ばれたい?」
「どっちもやめてほしい」
「ひどい!そんな拒否しなくても!」
先生とユーリ先輩がじゃれあっているなか、なんだかあたしは複雑な気持ちなままです。
納得いかないんですけど!なんか納得いかないんですけど!大事なことだから2回言い
ました。でも絶対これは納得できないと思う!ですよね?そうですよね?と脳内に呼び
掛けてみた。無論、返事はない。
「あーっと、そろそろ搭乗の時間だから行くわよー」
「おう」
「はい。じゃあ、2人共また」
「じゃあな」
「はい、また沖縄で!…?」
「え?あ、そかそか。先輩たち自由時間で遊びましょうねー!」
「おー!」
あたしは先輩たちに声をかけながら、目はレイヴン先生を追っていた。先生は先輩たち
の前を歩き、こちらを振り返らなかった。
別に気にすることでもないのに、少し、寂しかった。
無事飛行機に搭乗。わっくわっくてっかてっか!な気持ちを返せ。昨日のあたしを返せ
コノヤロー。なんですか。このもやもや感。もっさり感。ごにょごにょ感。
すっきりしない。先生のせいだ。こんなの先生のせいだ。
「?」
「うん?」
「なんだか、元気ないです。もしかして酔っちゃいました?」
「だいじょぶだよ!心配してくれてありがと。昨日遅くまで準備してたから寝不足かも
しれない。ちょっと寝ようかな」
「そうですね、まだまだ時間ありますから。それに万全の状態で遊んだ方が良いですも
んね?」
「ははっ、そうだよね!じゃあおもいっきり遊ぶために少し寝まーす。おやすみ」
「おやすみなさい」
そりゃあ、授業もまだないし、仲良くなる要因とかないかもしれないけど、スルーって
ないじゃん。ひどいじゃん。悲しいじゃん。ばかじゃん。
しかもさ、ユーリ先輩の口ぶりからして、先生は他の生徒にも“ちゃん”って風
に馴れ馴れしく呼んでるってことだよね。…別にいいけど。
とかんとかで、目を瞑っても結局さっきのことがぐるぐる無限ループ。どんだけ気にし
てんだ、あたしは。
でもまああれだよ。スルーしたのはきっと秘密の花園をばらさないためなんだよ。うん、
そうだよ。むしろそうじゃなかったらどうしてくれようか。
だからあたしが気にする必要なんて1ミクロンもないんだよ。そうだそうだ!気にする
な!はい、じゃあそういうことで。よし、寝よう。おやすみーん。
◆
「沖縄ー!こんにちわ沖縄ー!ありがとう沖縄ー!海がきれいだー!」
「うわあ!海の色、すごいきれいですね!」
「ねー!早く泳ぎたいねー!」
「はい!」
南の楽園、沖縄到着です。すごいよ、沖縄!海がすごいきれい!ほんとに!透き通って
ます、まるであたしの心のように!ひゃっふー!
飛行機でのテンションから一変してこのハイテンション。自分がいかに単純なのかって
いうのを知ることができました。自己分析万歳。
でもね、せっかく沖縄まで来たんですもの!あんなおっさんのために悩む自分なんてば
からしいですよ。そんなことで悩むなんてばかのすることですよ。あたしは賢いから引
きずるのはやめます。過去なんて過ぎてしまえばただの過去!なんかよくわかんないけ
どそういう感じでおねがいします。
さてさて、これからの予定を確認してみたいと思います。
沖縄うはうは旅行は、2泊3日。この旅行の売りはなんと言っても自由。フリーダムで
す。F R E E D O M です。これほんとに学校行事?
現在午後1時、バスで宿泊ホテルに移動中。ホテルに着いてから、各自いろいろ整理を
します。そして、市内観光いえーい。そんで午後5時までにホテルに戻っておいでー、
午後6時からはみんなでご飯だいえーい。それでまあご飯食べてそのあとも各自あそべ
やあそべー。でも就寝は午後22時だからね!一応!という感じになっております。
もう1回確認するけどこれ学校行事?いいの?こんなんでいいの?
あ、ちなみに明日は海で泳げるんだよ!楽しみうわーい!水着も自由だようわーい!
あえてスクール水着とかちょっとコアな人狙いでもいいんだよ!ぐりーんだよ!あたし
は普通の水着だけど。どんなのかは秘密なんだぜ、ふふふ。とにかく、ユーリ先輩の裸
が楽しみだね!この変態!あたしが。
◆
ホテルにて。
「ホテルきれいだー!学校ありがとうー!」
「部屋も広いですよ!」
「うおー!ありがたーい!あ、見て見てエステルー!シャンプーとか持って帰れるよ」
「ですね!」
「ごめん、エステルは持って帰らないよね。お嬢だもんんんん!」
「いえ、持って帰ります」
「おお、さすがお嬢」
お部屋はエステルとの2人部屋です。きれいだよ!オーシャンビューだよ!この学校
すげえぞ!予想以上にすげえぞ!これほんとにだいじょぶ?卒業後にお金要求されて
も絶対払わないから!
そうだ、お部屋に先輩たち呼んじゃう?呼んじゃったりする?不純異性交遊!
◆
市内観光にて。
「シーサー!シーサーだ!」
「かわいいですねえ」
「あたしお土産に買っていこうかな!あ、シーサーのストラップあるー!かわゆす!」
「かわいいですね!そうだ、おそろいで買いませんか?」
「いいねいいね!買おう!わーい!」
「ふふっ、こういうのってすごい楽しいですね!」
「だねー!」
空が青い!海も青い!シーサーかわゆす!おそろいうれしす!
明日楽しみだなあ。早く泳ぎたいなあ。泳ぐっていってもじゃれるだけだけどね。だっ
てあんまり泳ぐの得意じゃないですから、あたし!うっけるー。まあ犬かきだけはプロ
と言ってもいいな。うむ。
◆
再びホテルにて。
「ご飯おいしいね」
「このお肉やわらかいですよ」
「この野菜も甘みがあっておいひい」
「このスープもおいしいですよ」
「このお魚もおいしいぜ」
「このフルーツも食べたことない味でおいしいです」
ご飯は全部おいしかったです。おかげでエステルとこのこの合戦が延々続きました。
とりあえず全部おいしかったっていうのを一つずつこのこの言って食べてただけだね。
なんて女子高生だよ、おそろしい。ねー。
「明日楽しみだねえ」
「ですねえ」
ご飯食べて、お風呂入って、友達の部屋遊びに行って、お菓子でも食べながらトランプ
やったり、UNOやったり、ガールズトークしたりで、あっという間に就寝時間になったの
で、エステルと自分たちの部屋に戻った。
それから明日の支度とか、歯を磨いたりなんだりで気づけば0時を迎えました。いえー
い。そしてベッドに入って雑談なう。まだやるかってな。女子ってそんなもん。
「エステルの水着どんなの?」
「はどんなのです?」
「明日のお楽しみだよーふふふ」
「じゃあ、わたしも明日のお楽しみです」
「ちぇ」
「ふふっ」
「先輩たちとも遊べるといいね」
「そうですね」
「ユーリ先輩は色気がすごいんだろうなあ。そしてフレン先輩は眩しいんだろうなあ、
いろんな意味で」
「どんな意味です?」
「まあいろいろよ!さて、じゃあそろそろ寝るかあ」
「ですねえ」
「おやすみ、エステル」
「おやすみなさい、」
沖縄万歳。海がきれいなのってほんとすてきだね。と思いました。