act.3 プライベートビーチ、すげえ。 自分が想像していたよりもはるかにすごいです。むしろプライベートビーチっていうか ビビがすごいです。こんなきれいな海を貸切とか素敵すぎる。うれしすぎる。ハッピー! これでまた、あたしは写真家としての腕を上げられる。たぶん、きっと。 いやあ、すばらしい被写体の友人たちがいると便利だね!便利っていうか、ほら、あれ ですよ。うん。こう、安くレベルアップ?よくわからなくなった。ま、いいか。 「早く泳ぐぞー!」 「ルフィ!荷物を片付けてからだぞ」 「えー」 「ほら、さっさと運べ」 「んー」 エースさんがお兄ちゃんしてる!なんか、イイ!あ、今カメラに収めておけばよかった! もったないことしたなあ。でも4日間もあるんだからいくらでも機会はあるか。うん。 ほんと、今回はラッキーだよなあ。ものすごい素敵な被写体を見つけ、しかもその人は 友人の兄で、タダでカメラに収めることができるんですから!めっちゃお得。 きっと、エースさんを撮りたいっていう人は指をくわえて、ぐぬぬ状態でしょうね。 なんと気分の良いことか!ひゃっふー! 「!あんたもぼけーっとしてないでさっさと運ぶ!」 「あ、すんませーん」 ナミに怒られてしまいました。てへへ。よし、さっさと片付けてみんなを撮りまくろう。 あー、楽しみ。 *** 「うわあ、めっちゃおしゃれだね!」 「さすがビビの別荘よね」 「お風呂とかジャグジーついてるんですけど!まじでか!レベル高すぎだよ!どうしよう ナミちゃーん!」 「テンションあがりすぎ」 「早くお風呂入りたーい!」 「その前に海でしょ、海」 「そうでした!」 とりあえず素敵なお部屋をカメラに収めまくる。なんて素敵なんだ!ここは天国か! いや、楽園だ!そうだ、楽園だ!美しいエメラルドグリーンに染まった海がすぐそばに あって、このおしゃれな別荘の荘厳さ。 ちなみに、男子と女子は部屋別々ですから!当たり前ですよね。それに男子と言っても おっさんが入っちゃってますから。ていうか、男子6人もいるのか。多いねえ。それに 対して女子は3人しかいないと言うのに。だいじょぶ?これだいじょぶです?野獣共に かわいらしい女子が襲われないかとても心配です。いや、だいじょぶか。ビビはちょっと 心配だけど、そこはあたしとナミが全力で守りますから。 そんなこんなで、部屋は2人ずつ。あれ、あたしってばはぶですかはぶううううう!? ま、いいか。どうせ寝るときは雑魚寝ですよ、雑魚寝☆ナミのところに潜り込んでやる わいな。ぷっはー! 「さ、大方片付けできたし、海に行きますか!」 「やったー!待ってましたー!いらっしゃいませー!」 いざ、出陣!もちろんMYカメラを忘れずに首から下げる。みなさん撮り放題です。 *** 「海だー!入るぞー!」 「入るぞーってルフィ、泳げないんじゃなかった?」 「だからちゃんと浮き輪持ってるじゃない」 「あ、ほんとだ」 泳げないけど1番に海へと駆け出すルフィはすごい。しかもこのやり取り毎年やっている。 でも言わずにはいられないんだよね。泳ぎまくるぞーって走るけど、浮き輪にすっぽりと はまってぷかぷか浮いているんだから見てて複雑ですわよ。まあ、それでも良い身体して るんですけどね。いやあ、何度も言うけど被写体がすばらしすぎるぜ。 眩しい太陽に目を細めて、白く輝く砂浜を駆ける友人たちを見た。元気だなあ。ていうか 早い。みんなさっさと海に駆け出しすぎ。あ、遠くでサンジがナミとビビに向かって何か 叫んでいるのが見える。どうせ、ばかみたいな甘い言葉を吐いているんでしょうけど。 うん、あれって一種の才能だよね。砂糖を口に突っ込まれているようなほど甘い言葉。 むしろ、サンジが砂糖を吐いてるんじゃないのか。ううん、すごい。とりあえず、すごい。 マネできないし、したくない。絶対したくない。うん。でも、そんなサンジも一応カメラ に収めておく。黙っておけば、金髪が似合うイケメンフェミニストですから。ああ、ずっと 黙っとけばいいのに、まじで。 続いてルフィとウソップに目を向ける。ばか騒ぎとはこのことよ。その横で呆れながらも 付き合ってあげているゾロの姿も見える。こいつらもなあ、良い身体してるんですよね。 もう、なんでそんなたまらん身体をしているのですか。けしからん!思わずシャッターを ものすごい速さできっちゃったよ。ていうか連写です、連写。シャッターをきる指がとまら ないのです。カシャカシャカシャ。良い音。 それでは女性陣も撮っちゃおうかな。この2人もさ、良い身体してるんですよ。なんなの その身体は!うらやましすぎるぞ!それに比べてあたしは…いかんいかん!あの2人と 自分を比べるなんて自殺行為だ!死ぬぞ!あたしが!とにもかくにも、撮りまくれ! それにしてもすばらしいなあ。あたしもあのくらいの色気を出せるようになりたいじぇ。 そうしたら、色気ムンムンの写真家として有名になっちゃうかもね!なにそれすてき。 カメラを構えたまま女性2人から視線をずらすと、赤髪のおっさんの姿が。アロハシャツ 似合いすぎでしょ。まあ、かっこいいけどさ。ダンディズムを感じます。たぶん。あの人 も黙ってればすてきなおじさまだし。歳の割りには身体は引き締まってて、うん、イイ。 なんといってもシャンクスのカメラ越しの視線はすごいもんね。女性は孕みます。はい。 あ、あたしはそこんところだいじょぶなのでご心配なく。なんつって。 そういえば、今さらだけどエースさんの姿が見えない。はて、一体どこにいるのやら。 キョロキョロと、エースさんの姿を探していると、後ろの方から笑い声が聞こえた。 なんだ?と思って後ろを向くと、少し離れたところにエースさんが笑いながらこっちを 見ていた。なんてすてきな身体…!じゃなかった。 「エースさん?どうしたんですか、そんなところで」 「いや、ずっとお前を見てた」 「はい?」 「ほんとに楽しそうに撮るんだなァ、お前は」 「え、あ、どうも?」 「それに、途中で百面相するもんだからおもしろくてよ」 「え」 「見てて飽きねェよ」 目を細めて笑うエースさん。その無駄なかっこよさは何なのだ!ずるい。なんかずるい。 って、そうでなく、見られてたのか!恥ずかしい!百面相とか恥ずかしい!いやん! 「声かけてくれればよかったのに!」 「邪魔しちゃ悪いと思ってな」 「全然かけてください!百面相見てるくらいなら!」 「ははっ!かわいかったんだから別に問題ねェよ」 「かっ…!?」 ひいいいいい!この人ナチュラルにかわいいとか言ってるうううう!天然ちゃんんん!? 自分顔が赤くなっているのを感じた。ちくしょう恥ずかしい! 「は泳がないのか?」 「え、ああ、はい。でも、せっかくだからみんなのこと撮りたいんですよね」 「そうか。だけどもったいねェな」 「なにがですか?」 「水着、着てるんだろ?」 「まあ、そうですけど…」 「あ、いいこと思いついた」 そう言うと、エースさんは悪戯っ子のような笑みであたしの方へ近づいてくる。 なんか、こわいんですけど。近づかれると、ついつい後ろにさがってしまうしまうのが 人間というもので。エースさんが近づく度に後ろにさがるあたし。プラマイゼロな距離 が続く。 「なんで逃げてんだよ」 「いや、なんか反射的に」 「いいからおとなしくしとけって」 「はあ…」 仕方ないのでおとなしく待っていると、エースさんの腕がこちらに伸びてきた。何事!? 思わず目をぎゅっとつぶった。すると、今まで首にあった重みがすっと消えた。首にあった 重みって、あたしのカメラじゃん。と思って目を開けると、エースさんがあたしのカメラ を首に下げていた。なにそれかわいい、じゃなかった! 「なにしてるんですか、エースさん!」 「ん?お前もたまには被写体になってもいいんじゃねェかと思ってな」 「いやいやいや!だいじょぶです!間に合ってます!結構ですううう!」 「まま、そう遠慮せずに」 「してなああああい!」 急いでエースさんからカメラを取り返そうと奮闘するものの、背の高い彼には届かない。 ていうかそもそも足はやい!あたしを置いていかないで!待てえい! 必死に追いかけてもつかまらない。そんなあたしをよそに、エースさんはカメラを構え、 あたしを撮ろうとする。やめてええええ!あたしは撮るのはすきだけど、撮られるのは すきじゃないんですううううう!でも、これ確実に撮られている。いやんばかん! 「ちょ、待って、ほんとに…!てか、あつっ!日差しがあついいい!」 「お、シャッターチャンス」 「やめてえ!」 このままだと、エースさんの思うつぼだ。よし、ここは気合を入れて追いかけますよ。 ま、さっきから気合十分だったんですけどね^q^ そういうわけなので、今までTシャツとショーパンはいてたので脱ぎます。水着で追い かけてやります。揺れる乳などありはせんが。なんつって★自分で言ったら悲しいぞ。 脱いだついでに準備体操をして、準備万端です。よっしゃああああ! と、顔を上げると、いやに真剣なしたエースさんがこっちを見ていた。え、なにそんな 見つめてくれちゃってんですか。心臓が大きく音を立てた。どきんどきん。なんだか、 初めて彼を撮った時に見た、レンズ越しの獣がそこにいるように思えた。 「エース、さん?」 「……」 黙って近づいてくるエースさんに、今度は動けなかった。どうしてだろう。まるで、獣に つかまってしまったようだ。さっきと同じようにあたしに手を伸ばす。つかまる、 「ー!」 「え?」 「お前ずいぶん色っぽい恰好してんじゃねェか!」 「は?何言ってんの、シャンクス」 「お前が水着になるなんて珍しいなァ!ははは」 「はははじゃないし!酒でも飲んでるんですか!…ってほんとに飲んでるよ!」 「海と言ったら酒だろー!あ、やべ、酒切れた。ちょっととってくるわー」 「勝手にしてください…」 あのオヤジは!って、そういえばエースさん…と思って顔を上げるとすぐそばにいた。 びびびっくりした!なになに?これどうなってんの?相変わらず動けません。あたしを 見下ろすエースさんの眼が、なんだか、すごく色気があって…目が離せない。 さっきと状況変わってないじゃん。ここからどうやったら脱せるのか、わからない。 「エース、さん?」 「…」 「はい、」 「隙あり」 「え」 カシャ、と聞きなれた音がしたと思うと、そこにはいつもの人懐っこい笑顔のエースさん。 しばらく呆然としていたが、ふと我に返ると、エースさんがにやにやしながら見つめていた。 一体何が?カシャってなんか、こう、聞きなれたシャッター音。シャッター音?まじか。 まじでほんとに撮られたとか恥ずか死する! 「ちょ、か、かえしてくださいいいい!」 「も、良い被写体になれるんじゃねェか?」 「そんなわけないです!あたしは撮っている方がすき、ですもん」 「へェ。でも、レンズ越しのお前、なかなか色気あったぞ」 「なななっ!」 「ほい」 「あ、ど、どうも」 「カメラもいいけどよ、せっかくだから泳ごうぜ?」 「…はい」 カメラを日陰に置いて、海へと向かう。けど、ふと日陰に戻り、カメラのメモリーを見る。 そこには、エースさんが撮った自分が写っていた。 「…これ、あたし?」 「ー?」 「あ、はーい!今いきます!」 エースさんが撮った自分は、まるで自分じゃないような、知らない女の人だった。 夏 の 魔物 |