act.2 「はじめての撮影会はどうだったの?」 「最高だよナミー!もうしびれました」 「そんなに美人だったの?モデルさん」 「あ、男の人だったんだよーそれが」 「へえ、詳しく教えなさいよ」 「危ない色気と少年のような笑顔にやられました」 「なに、惚れたの?」 「いやいや別にそうじゃないんだけどーうん」 「ふうん?ま、いいけどね」 惚れた、とかじゃないし。うん。 あ、でも、モデルさんとしては惚れたかもしれない。だって、すごく魅力的な人だもん。 それはやっぱり写真家としてはすごく撮りたくなるし。まだまだヒヨッコですが。 とにかく、良い経験をしたと思ってる。エースさんは滅多に撮れないって言ってたから またいつ会えるかはわからないけど、会えた時には撮らせてもらいたい。 その時までにあたしも腕を磨いておかなくては。 「そういえば、夏休み、行くわよね?」 「海?」 「そう。腕の良いカメラマンがいると思い出が一層鮮やかに残るからいいわよねー」 「いつかお金払ってね」 「冗談!これはあんたの腕を磨く協力をしているの」 「うまいこと言っちゃってー。ま、今後お宝写真になるようにがんばるわー。 で、電車で行くの?今年行くところ結構遠いんでしょ?」 「それなら車一台は確保してる。でも人数多いからもう一台、必要なのよね…」 「んー…じゃああたしも探してみる。足になってくれるひと。うふふ」 「あてがあるの?」 「まあわかんないけど、目星はなんとなくね」 中学からの付き合いのある友人たちと毎年海に行くのが恒例になっている。 その友人をざっくり紹介したいと思いまっす。 ・ナミ ・ルフィ ・サンジ ・ゾロ ・ウソップ ・ビビ ナミとルフィ、サンジは前にもざっくり説明したからいいと思うので省略しまーす。 ゾロは剣道で名を馳せている凄腕高校生。なんかこう、武士みたいな人。堅物って感じ なんだけど、意外と面倒見が良くて、なんだかんだやさしいと思う。そこがきっとゾロ の魅力なんだろうな。そして鍛え抜かれた肉体をいつか撮りた…海行けば撮れる! というか、毎年こっそり撮ってるんですけどね。それを毎年比べて大きくなったね、と お母さんみたいな気持ちで見守っているのは秘密。 ウソップは、鼻が長い。 ビビは家がお金持ちなんだけど、なぜかあたしたちと同じ都立に通っている。女子校 とかにいそうなのにね。でも、お金持ちだからってそれを鼻にかけるような子じゃなく、 すごく良い子。みんなのことをよく見ていて、気遣いが誰よりもうまい子だと思う。 そんな仲間たちとあたしは仲良くやっているというわけです。 で、話を戻すと、こういう旅行とかってすごく良い勉強になる。写真の。 いろんなところに行くことで、感性が磨かれるし、自然の風景も撮れる。それから、 友人たちというタダで撮れるモデルがいるもんで、それもまた勉強になる。 いつか仕事でみんなのことを撮れたらいいんだけどな。ナミとかはちゃっかりお金を 要求しそうだなあ。ルフィは肉ー!とか言いそうだし、サンジはレディの写真を焼き 増しでとか言いそう。ゾロは特に何も言わなさそう。ウソップは、おれ様の雄姿が ちゃんと撮れてるかーとか言ったりしてね。それに対して、ごめーん鼻しか撮れなかった と切り返す。楽しそう。ビビは素直に喜んでくれそうだなあ。 あー、しかもみんな顔が良いから人気出そうだよね。なんか、ずるい。 「ていうかさ、車一台確保してるって言ってたけど、どうやって確保したの?」 「ルフィのお兄さんが大学生でね、こないだ中古だけど車買ったんですって。 それで頼んだら乗せてくれるらしいわよ。だからルフィのお兄さんも一緒に来るのよ」 「へえ。ルフィのお兄ちゃんって会ったことないやあ。良い被写体になるかもしれないね」 「そっちかい。でも期待していいわよ」 「なにに?」 「ルフィのお兄さん!」 「どういうこと?」 「ルフィと違って常識人だし、なかなか良い男なのよ」 「そうなんだー。じゃあ被写体にはもってこいだね!でもさ、よく弟とその友人たちの あっしーになってくれたよね」 「ブラコンなのよ。お互い」 「ああ、なるほどね」 ルフィのお兄ちゃん。期待できますな。ルフィがもともと良い男だし、その兄弟となれば そりゃあ期待しちゃうよね。いや、きっと良い男のはずだ。ナミが言うんだからね。 それも楽しみだなあ。早く海行きたい! *** 「シャンクスー」 「おう、どうした」 「夏休みって忙しい?」 「それがよォ、今年は二週間も休みがあるんだ!いやーバカンスにもってこいだな!」 「あのさ、おねがいがあるんですけど」 「なんだ?」 「シャンクスって車持ってますよね?」 「おう」 「で、その貴重な二週間のうち4日間をあたしにくれないですかね」 「なーに言ってんだ!子どもにゃ付き合ってられんぞ」 「えー残念。せっかく女子高生の水着姿が見られるのになあ…」 「…なに?」 「でもシャンクスくらいの大人だと興味ないか。仕方がない、ベンさんにでも」 「待て待て待てェー!!」 「なんです?」 「おれがどこへでも連れってってやるよ、ちゃん」 「でも子どもには付き合ってられないんですよね?」 「いや、たまには弟子との交流もいいじゃねェかと思ってたとこだ」 「ほんとですか!」 「おう!」 「じゃあ、よろしくおねがいしまーす!」 あっしー確保。無事任務完了です。 少々手ごたえなさすぎな気もするけど、これで安心だね。おっさんを釣るなんてちょろい。 無事海に行ける。まあシャンクスのことだし、みんなと仲良くなれるでしょ。うん。 みんなもだいじょぶだよね。くせがある者同士だと逆にうまが合うだろうし。 あ、でも、ルフィのお兄ちゃんはだいじょぶかな。常識人だし平気か?うーん。 まあ、どうにかなるか。とりあえず車確保のメールをナミにしなきゃ。ちょろかったー。 *** 「女子高生はいいなァ!」 「くれぐれも罪は犯さないでくださいね、まじで」 「ちっとは信用しろよ、!」 「無理」 「ちょっと、!この人が車?」 「車ってナミ…まあそうなんだけどね。でも犯罪は起こさないから安心して、一応。 それに腐ってもあたしの先生だし」 「おいおいー聞こえてるぞーあっはっは!」 「…本当に大丈夫なんでしょうね?」 「…たぶん」 シャンクスのはしゃぎようになんか、自信なくなった。この人が罪を起こさないように 祈るしかないかもしれない。いや、だいじょぶだ!きっとたぶん。 「それよりルフィたちは?」 「もうすぐ着くみたいよ…ってちょうど来たわね、あれ」 「あーあれかー」 待ち合わせの場所に現れた一台の車。その車はあたしたちの前に止まると、次々とドアが 開かれた。 そして中から現れた人たちによって場が一気に賑やかになる。 「よう!今日は楽しみだなァ、海!しししっ!」 「相変わらず元気だねえ、ルフィ」 「ナミすわぁーん!ビビちゅわーん!ちゅわーん!元気だったかーい!?」 「相変わらずというかむしろクオリティ上がったね、サンジ。鬱陶しさの」 「久しぶりだなァ」 「あれ、ウソップいたの?」 「なんで!?おれだけなんでそんな扱い!?」 「ゾロー!今年も写真撮らせてね!」 「あげくに無視か!」 「あ?お前いつも勝手に撮ってるじゃねェか」 「まあそうなんだけどね!あは」 「あれ、お前」 「え?」 どっかで聞いたことある声が後ろからした。のでとりあえず後ろを振り向くと、運転席 から出てきた一人の男がいた。って、もしかして、 「エースさん?」 「おー!やっぱりか!ルフィの友達だったんだなァ」 「エースさんがルフィのお兄ちゃん、ですか?」 「あーそうだ。いつも弟がお世話になってます」 「いえいえ。でもうれしいです、また会えて!びっくりしましたけどね!そうだ、今回 シャンクスも来てるんですよ」 「そうなのか、って大丈夫なのか?犯罪とかそこらへん」 「まあ、たぶん…」 「おいおい!だから失礼だろお前ら!ったく。にしてもよかったなァ、」 「なにがです?」 「エースに会えて」 「え?なーに言っちゃってんですかおじさま!」 「何ってお前エースを魅了し」 「あーあーあー!!」 「何だ、。どうした?」 「余計な事は言わなくていいんです!」 「ははっ!おれもお前にまた会えてよかった」 「え」 「お前の視線はくせになる」 「それってどういう…」 「おーい!早く出発しよーぜー!」 「あーはいはい。じゃあ、またあとでな」 「え、あ、はい!」 エースさんは気になる言葉を残して車に乗り込んでしまった。 でもこのまま突っ立っているわけにもいかないので、あたしたちも車に乗り込むことにした。 エースさんの車には、ルフィ、ゾロ、サンジ、ウソップが。 シャンクスの車には、あたし、ナミ、ビビが。 サンジはレディと一緒がいいとなにやら騒いでいたけど、ウソップが無理やり車に 詰め込んでいた。まあこっちはこっちで、シャンクスの車に女子だけっていうのも 心配っちゃあ心配だけど、あたしが助手席に乗って見張ることにしたので安心です。 もちろん、セクハラ発言したら横からグーで殴っておきます。安全第一! そんなわけで、車にさっさと乗ろうとした時、シャンクスが声をかけてきた。 「よかったなァ、」 「だからもうその話はいいですってば!」 「違ェよ」 「はい?」 「お前の視線にあいつ、ハマったかもなァ」 「え?」 「も案外獣かもしんねェな」 「なに言って」 「じゃ、さっさと車乗れー」 「ちょっとシャンクス!」 勝手に気になることを言ってさっさと車に乗り込んだシャンクス。 謎が深まっただけじゃないか。だいたい獣ってあんた…。あたしはまだまだ小動物だ。 シャンクスのような獣にはまだまだなれそうもないっての。 だけど、ライオンの赤ちゃんくらいにはなれたのかな。そのくらいの成長をしたのかな。 もちろんあたしはまだまだだって思ってるけど、それでもほめられたことがうれしかった。 ていうか、エースさんとシャンクスが言っていた、視線ってどういうことなのかな。 自分のことだからよくわからないしなあ。視線がえろかったぜ!とか?違うか。 あたしにはエースさんのような色気は出せそうもないし、シャンクスの独特の色気も 出せない。じゃああたしの視線ってどんなのなんでしょうね。気になる。 それがわかるのはいつになることやら。 とりあえずあたしたちの車は、今年の夏の遊び場である、ビビの家が所有している プライベートビーチに向けて出発した。ぜいたくな夏ですこと。 あたしは、いつもとは違った夏に向けて走り出した。そこで待ち受けるすべてに期待して。 真夏 の 視線 |