「すきだよ」
「え!?」
「だから、これ」
「え、ああ、サバみそのことね!」
「レイヴンが聞いてきたんでしょーが!サバみそすきー?って」
「そうだったわね、ごめんごめん!」
「なにぼーっとしてんの?だいじょぶ?」
「え、ちゃん心配してくれてるの?おっさん嬉しい!」
「元気じゃねえか!っていうかひっつくな!」
「あー!レイヴンがセクハラしてるー!」
「セクハラって!少年ひっどーい!別にセクハラなんかじゃないもんねーちゃん?」
「いや、ほんとセクハラですから。離れてください35歳」
「年齢言わなくてもいいでしょ!ひどい!」
半透明
7
デイズ
−7日目−
なるほどね。そういうこともあったね、そういえば。まあ実はこの時こんなツン的な態度を
とっているけど恥ずかしかったからなんですよね。なんて純な乙女なんでしょうね!あたし!
でもすきなひとにひっつかれれば誰だって恥ずかしいだろ!胸どっきゅん乙!ってなるわ。
心臓爆発しちゃうよね、思わず。とか言ってるけど、昨日のことの方が恥ずかしいことこの
上ないけどね!思い出すだけでゆでダコですよ!タコがゆでられちゃいますよ。うひゃー!
恥ずかしい!まあ、そんなことは置いといて、今日は任務の邪魔にならないようにがんばろ。
そしてごはんはまだですか。
◇◇◇
ケーブ・モック大森林。特におかしな所はないと思う。いつものように魔物はいるけど、
凶暴化してるーとかそういう感じでもない。ほんとに何でここに来たんだろうか。ってあれ、
なんかこんなこと前にも思ったことがある気がするんだけど。確か、
「、行くぞ」
「え、ああ、うん」
「どうした?」
「ううん、何でもない。行こう」
シュヴァーンが隊を何人かに分け、それぞれ調査に向かわせていた。さすが隊長っす。
「シュヴァーン隊長!我々も一緒に行くであります!」
「いや、奥は俺一人で十分だ。お前たちはあっちを頼む」
「しかし、奥で何かあった場合…」
「大丈夫だ。さ、早く行け」
「了解しました!ですが、何かあったらすぐにお呼び下さい!」
「ああ」
なるほど、信頼されてるね。まああたしもいるから一人じゃないしね、実際。こう見えても
普通に戦えるので安心してください、シュヴァーン隊長!みたいな。
シュヴァーンと二人で奥に進む。しばらく戦闘から離れていたけど、さすがに体が覚えていた。
まあ結構長い旅してたからねえ、そりゃそうか。にしてもほんとに不自然なくらい何もないな。
これ大丈夫なのかな。シュヴァーンをちらっと見てみる。特にいつもと変わらない。うーん、
あたしが気にしすぎなのかな。それならそれでいいんだけどさあ。とりあえず奥に向かって
歩き続けた。うーん、でもやっぱり気になる。そもそも何でここに来たのか。どんな任務
なのか。聞くっきゃないない!
「シュヴァーン」
「何だ?」
「任務の内容ってなに?」
「…それは、言えない」
「誰かに言われたら困るから?」
「そういうわけじゃない。ただ、お前を巻き込みたくないだけだ」
「別に平気だよ。あたし巻き込まれるような立場にいないし。物理的にも」
「気持ちの問題だ」
「…ふーん」
「悪い。今は言えない。だがいつか、言う」
「うん、わかった」
仕方ないさ。うん、これは仕方ない。いつか言ってくれるならいいや。あたしは信じて待つ
のみさ。あれ、なんか素敵な響き。いやいや、浮かれるなこの馬鹿者。こんな時に浮かれる
なんてあたしってばなんて軽率なんでしょう。ごめんなさい。っておおう!魔物が出た!
ちくしょー!斬り捨てごめん★
◇◇◇
結局奥まで来たけど、何にもないんですね。ただの森だぜ、これ。もしかして収穫なし?ただ
の無駄骨?アレクセイぶっ飛ばす。帰ったら高そうな壺で殴る。高い壺があああ!という絶望
と肉体的ダメージで存分に苦しむがいい。ざまあみろ!
「なんにもないね」
「ああ。…目的の物は見つからなかった。戻るぞ」
「らじゃー」
さて、さっさと帰ろう!なんかありそうな気がしたんだけど、何も起こらなかった。まあ、
何かが起こってほしいわけじゃないんだけどね。なんとなくそんな気がしていたから拍子
抜けっていうかなんというか。あー、明日からまたはんこと付き合っていくことになるのね。
でもシュヴァーンと一緒ならいいかなあ、なんてね。キモチワル!あたしがキモチワルイ!
というか気色悪い。どんまい。あたしどんまい!
おおー、このツタ痛そう。棘がいっぱいついてるよーあっぶねえな。うわ、先も尖がってる。
森って危険がいっぱいだね。さ、早く行こー。
…ん?いや、待てよ。こんなようなツタ見たことあるぞ。棘はついてなかったけど、この先
が尖がってる感じが、ああああああああああ!?
「シュヴァーン!!」
「!?」
あぶねえええええええ!おいいいいいいいい!こいつあいつの仲間か!あのーあれだよあれ!
あたしがここに来る前に戦ったあいつ!気持ち悪い植物系の魔物!っていうかデジャヴです!
これデジャヴです!無理無理!まじ無理!何なのこいつ!むしろあたしはあんたの仲間に
殺されました!うぜえ!むしろ全力で殺す!ていうか殺します!おつかれ!あとなんとなく
とっても大切なこと忘れている気がします!でも今はツタを避けることに集中してイイ!?
「お前は下がっていろ!」
「なんでよ!あたしもやるよ!というか、こいつと戦ったことあるし!」
「…わかった、挟み込むぞ」
「了解!」
あたしはこいつの後ろから、シュヴァーンは前から攻める。
俊敏に動くんじゃねえよこのツタヤローがよ!お前はタコの足か!もしくはイカの足ってか!
なんてなめらかな動きなんでしょう!ぶった切る!そおいっ!ざまあ!あああぶないって!
かすった!ツタかすった!もう本体に行こうにも行けないっていうんですよーい!ちっ!
めんどくせえ!ここにリタがいたら燃やしてくれるのにいいいい!あたしにも魔術が使えたら
よかったのに!今更言っても仕方ないけどね!前衛タイプなんですう★あたしってば!
そりゃ!とおっ!ちぇすと!ばあか!
というか、こいつあたしのこと見えてないくせに何でツタを正確にあたしを狙えんの?野生
の勘だったりします?そうなんですか?にしても野生の勘レベルがすごいですね!もしかして
レベルMAXとか?うわあ、すごーい!そんなあなたにプレゼント!これでももらってくだ
さいな!!!かまいたちの如くううううう!
よっしゃ!ツタをまとめて切り落とした!これでスムーズですね!やりましたよ!これで
やっと本体をぶった切れるね。だけどまだなんか大切なことを忘れている気がする。重大な
事実?何だっけ?何でしたっけ?とりあえずシュヴァーンの所に行って援護せねば。
シュヴァーンの方もほとんどツタを切り落としていた。どうやら後はこの本体だけだね。
よし、あたしもさっさと合流しよ…あれは、やばいんじゃない?
やばい…!スローモーションのように、シュヴァーンの後ろの土から出てきた。あれが、
本体。今思い出すとかあたしってば信じられない。これぞデジャヴパート2です。こいつは
カモフラージュなんですよ。本体はあいつで、シュヴァーンを殺そうとしているんだよ。
…だめ、だめ、だめ!だめだってばっ!!
「シュヴァーンっ!!!!」
「…な!?」
「あぶない!!!」
全速力でシュヴァーンのもとに向かう。シュヴァーンはあたしが絶対助ける!
「う、そ…でしょ」
「…ぐっ」
シュヴァーンがゆっくり、ゆっくりと倒れていく。
あたしは確かにシュヴァーンを庇った。庇ったけど、守れなかった。どうして、どうして、
どうして?なんであたしの胸を貫いてるのに、どうして、シュヴァーンにツタが、刺さって
るの?何でよ…?何で、通り過ぎてんのよ!あたしがここにいる意味って何よっ!?
シュヴァーンを守るためじゃないの?どうして、守れてないのよ…?
「…っシュヴァーン!!」
早く、血を止めないと…!早くっ!…だめだ、その前にあいつを倒さないと。また襲われて
もあたしは庇えない。だったら今はこいつを先に、倒す!
敵の本体を見すえる。だが、わずかに視界がぼやける。泣くな!今は泣く時じゃない。先に
やることがあるんだから泣くのは後だ。泣いたって何も解決しない!
ツタをかわしながら本体へ一直線に走る。本体の前へと滑りこみ、一気に飛び上がる。
「…さっさと消えろっ!!」
「ギィィィイイイイイイイッ!!!」
敵の上に飛び、大太刀を思いっきり振り下ろした。物体を切っている確かな感触。魔物は
叫びながら崩れ落ちる。叫びは森中に響き渡るような大きさだった。これだけ響けばルブラン
たちが来てくれるはず。あたしは肩で息をしながら急いでシュヴァーンのもとに走る。
「シュヴァーンっ!!!!」
シュヴァーンに駆け寄り、身体を起こす。幸い致命傷には至らなかったようだった。治癒術
が使えないあたしは、自分に出来る最低限の応急処置をした。
なんて不甲斐無いんだろう。あたしがいたのに、こんな怪我をさせてしまうなんて。
ほんと、悔しくて、情けなくて、涙が溢れる。ごめん、ほんとに…ごめんね。
「…泣くな、」
「だって、だってっ…!」
「大したこと、ない。…平気だから、泣くな。お前に泣かれる方が、困る」
「あたし、シュヴァーンを守れなかった…!何のためにここに来たかわからないよ!」
「お前が、ここに来たのは、俺の傍にいるためだろう…違うか?」
「…そうだよ、そうだよっ!シュヴァーンのそばにずっといるために、来たんだよ…」
「だったら、泣くな。このくらいの傷、すぐに治る。俺はお前がいるなら、それで良い」
「…ごめん。ごめんね、シュヴァーン。痛かったよね、ごめん。ずっと、ずっとそばにいる
から、だから、」
「…もう謝るな」
「うん…」
シュヴァーンが手を伸ばし涙を拭う。その手を両手で包みこむ。あったかい。生きてる。
よかった…生きてる。これからずっとそばにいるから、早く元気になって。あたし、ずっと、
「…あ、れ?」
「?」
「なん、で?なんで?あたし…」
「…っ!!」
「どうして?ねえ、シュヴァーンっ!」
ずっとそばにいたい。離れたくない。これからずっと、ずっと一緒にいるって決めたのに。
どうして?ねえどうして…あたしの身体が、消えていくの?嫌だよ、嫌だよ!消えたく
ない。消えたくないよ!あたしシュヴァーンのそばにいたい。ねえ、どうして、どうして今
なの…?おねがいだから、ここにいさせて。おねがい、だから。
「いやだ!シュヴァーン、あたし消えたくない!消えたくないよ…!シュヴァーンのそばに
いたい!離れたくないっ…!」
「っ!!」
「…こわいよ、あたし、シュヴァーンに触れてるよね?ここにいるよね…?なのに、どうして
消えるの?どうして身体が、薄くなっていくの…?あたし、」
「っ!落ち着け、お前は消えない。絶対に、お前を連れて行かせない!」
「…だめ、だよ。あたし、消えちゃうよ。足が、もう消えちゃった。ね、シュヴァーン。
あたしが消えても忘れないでいてくれる…?」
「馬鹿っ…!お前は消えない!消えるはずないだろう!」
「シュヴァーン、あたし、あたしも、シュヴァーンのこと、すきだよ」
「…っ!」
「きっと、ほんとはずっと、会った時からすきだった。あたしは、シュヴァーンに恋する
ためにここに来たのかもね?」
「…」
「シュヴァーンに会えて、よかった。ここに来れてよかった。シュヴァーンをすきになれて
よかった。おねがい、あたしのこと、忘れないで。変な奴がいたってくらいでもいいから、
忘れないで。…そしたら、きっとこれからもあたしは、幸せだから」
「…忘れるはず、ないだろう?お前を初めて見た時から、俺は、お前に惹かれてた。おかしな
身体をして、あたかも俺を知っているかのように話してくる。子供みたいで、時々女の顔
になるお前が綺麗で、俺は…お前が好きだ、」
「…うん、うれしい。ありがとう、シュヴァーン。あたしもすきだよ。消えてもずっと、
ずっとだいすき」
もう、身体の半分が消えていた。あたしはどうなってしまうんだろう。でも、ついさっきまで、
あんなにこわかったのに、不思議ともうこわくない。きっと、幸せだからだ。あたしの気持ち
がシュヴァーンに届いて、シュヴァーンの気持ちがあたしに伝わってきて幸せ。
だから、こわくない。こわくないよ。
「…シュヴァーン、最後にぎゅってして」
「…ああ、」
シュヴァーンが強く、強く抱きしめてくれる。すきなひとの腕の中で死ねるなんて、あたし
は誰よりも幸せ者だ。こんなにも温かい。こんなにも優しいぬくもりに包まれて、嬉しくて、
でもちょっと悲しくて涙があふれた。
…ありがとう。ほんとに、ありがとう。こんなあたしを助けてくれて、お世話をしてくれて、
すきになってくれて、ほんとにありがとう。
シュヴァーンが頬を包む。きれいな瞳。そんな顔しないで。悲しまないで。また、会えるよ。
今ここにいるあたしではないけど、未来にまた、会えるから。
あたしは笑う。…忘れないで、あたしを。
そっと、シュヴァーンがキスを落とす。
意識が白くフェードアウトしていく。ありがとう、またね。だいすきだよ、シュヴァーン。
「…、」
真っ白な世界。誰もいない。あたしだけがここにいる。ここは死んでしまった人が来る場所
なのかな?…まあ、いいか。
とりあえず寝っ転がってみた。あたししかいない空間。ひどく、寂しい。
このまま、このままずっとここにいるのかな。上も下も右も左も、全部真っ白。この白に
あたしは溶けていくのだろうか。でも、それはそれでいいかもしれない。
こうやって、あたしは消えていくんだね。いろいろあって疲れたよ。
また、来世で会いましょう。おやすみ、世界。
誰?なんであたしの名前を呼ぶの?もう、いいんだよ。あたしは寝るんだから。
おねがい、もう寝させて。疲れたんだよ。
どうして、そんな悲しい声で呼ぶの?どうして、そんなにあたしの名前を呼ぶの?
…誰なの、あなたは?
ちゃん
どうしてそんなに呼ぶの?どうしてそんな悲しい声なの?誰がそんな悲しい声にさせてるの?
あたしが言ってあげるから。あなたに悲しい思いをさせないでって。
だからほら…だいじょうぶ。もう、悲しくないから。そんな声出さないでいいんだよ。
――遠くに海が見える。きれいな海。いつか見た海。碧色の海。あたしの、一番すきな海。
海が泣いてる。泣かないで。そんな悲しい顔をしないで。
そっと、手を伸ばす。ほら、だいじょうぶ。あたしがついてるから、もう悲しくなんかないよ。
「…泣かないで」
悲しい顔をしている彼の顔を包む。すると、その拍子に涙がこぼれた。どうして、泣くの?
もう、悲しくなんかないよ。
「…、ちゃん」
「もう、泣かなくていいんだよ?レイヴン…」
「…っちゃん!」
「くるしいよ、レイヴン」
「本当に、よかったっ…!ちゃんが死んじゃったら、俺は、」
「死んでないでしょ、ここにいるよ?…ねえ、ずっと、名前、呼んでてくれたの?」
「…俺にはそれしか、出来なかったから」
「そんなことない。…ありがとう。聞こえてたよ、おかげで、帰って来れた」
「…そっか、よかった」
「ねえお兄さん、どっかであたしと会ったことない?」
「え…?」
「レイヴン。あたし、レイヴンに、シュヴァーンに会ってきたよ」
「…っ嘘、あれ、夢じゃないの?ほんとに、ちゃんだったの?」
「夢じゃないよ。確かに、あたしは会ったよ。…待たせてごめんね、ただいま」
「…おかえり。ずっと、夢だと思ってた。でも忘れられなくて…。俺はちゃんに
2回恋したのね」
「あたしも、2回恋したよ。レイヴンとシュヴァーンに、恋してた。ううん、恋してる」
「…3回目は無しよ?もう、離さないから」
「うん、今度こそずっと一緒にいる。もう消えないから…」
「…好きだよ、ちゃん」
「うん、あたしもだいすき」
嬉しい。またこの腕の中にいられることが嬉しい。あたしは帰ってきた。大切な人のもとに
帰ってこれた。全部、あなたのおかげだね。あたしを呼んでくれたから、ずっと呼んでくれた
から。あたしが守ってあげなきゃ悲しい顔しちゃうもんね?もう悲しい顔はさせないよ。
幸せにしてあげるから。一緒に、生きていこう。
――あたたかなレイヴンの手ががそっと頬に触れた。
「ちょっとユーリ!なんで目隠しするの?」
「まあカロル先生にはまだ早いってことだ」
「意味わかんないよー!」
「何であたしまで目隠しされんのよ!ガキんちょと一緒にするな!」
「あら、リタもまだガキんちょだと思ったのだけど、違うの?」
「違うわよ!」
「パティ?どうしてわたしの目を隠すんです?」
「エステルもまだまだ子供だからじゃ!」
「おいおい、逆転してるぞここ」
「ワフッ!」
「というかお前らもう少し小さい声で話せ」
「なんで?もう起きてるんじゃないの?なんでボクたちは入っちゃだめなの?」
「今うちらが入ったらお邪魔虫なのじゃ!」
「そうなんです?」
「ちょっと早く手どけなさいよ!」
「もう少しの我慢よ、リタ」
…おいおい、聞こえてるよ。全部聞こえてるよ。お前ら空気読むなら今すぐここから立ち去れ
コノヤロー。空気を読め切れてないよ。肝心なところが読めてないよ。解読出来てないよ!
「……」
「…ちゅーしとく?」
「は?調子乗るとぶっ飛ばすよ、おっさん」
「ごめんなさい」
「ちょっと!あんたたちもそろそろ出てきたら?丸聞こえだよ。全然聞こえてるよ。おっさん
でも聞こえてるよ」
「ちょ、ちゃんそれはひどい!」
「いいから出てこいやあああああ!!!!」
「「「「「「ごめんなさい」」」」」」
「ワフッ!」
結局最後はこうなるのね。でも、こういうのを幸せって言うのかもしれない。
仲間がいて、すきなひとがいて、あたしは世界一幸せ。そう思えるよ。
神さまか、仏さまかの悪戯であたしは幽霊になった。
2回恋をした。違う人のようで、同じ人に恋をした。嘘みたいで不思議な7日間をあたしは
過ごした。でもこれは、確かに存在した日々だった。かけがえのない、大切な日々。
きっとこれ以上の恋はできないだろう。ううん、しない。シュヴァーンに、レイヴンにしか
恋できない。あたしの人生で誰よりも何よりも大切な人です。
…もう、独りにしない。離れない。ずっとずっと、嫌ってくらい、愛してあげるから。
だから、あたしを逃がさないで。半透明になったって、透明になったって、あたしを見つけて。
忘れないで。ずっと、すきでいて。あたしの、大切でだいすきなひと。
――過去のあなたに恋をした、半透明7デイズ。