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01: はじまりの 出会い に 出合う時 不幸体質の女の子は、エフティヒアというギルドを作りました。傭兵の仕事や護衛の 仕事をこなし、のんびりと生きてきました。 そんな彼女は、ふとした思いつきで騎士団に入り、気がつけば2年も所属していまし たが、刺激を求め、再びギルドの生活に戻ることにし、帝都を出発しました。 目指すは花の街、ハルル。 「花咲いてねえし」 帝都を出発して無事ハルルに到着したものの、花咲いてねえし。どういうことですか。 あたしは花見に来たんだっつーの。それなのに肝心の花が咲いてないってどういうこと なの。ていうか枯れてるし。ナメてんの?そうなの?切り倒すぞこのやろー。 あ、あのじいさんに聞いてみるか。 「あの、この樹枯れてますけど花は咲くんですか?」 「ああ、枯れた原因はどうやら魔物の血のせいらしくて……。そういえばこの樹を治すと 言っていた人たちがいたなあ」 「へえ。その人たちは今どこに?」 「たぶんよろず屋にいるんじゃないかな」 「そうですか、ありがとうございます」 魔物の血のせいで枯れたとはこれまためんどくさいことになってるわけね。でもここまで 来たからには花見したいからなあ。治すっていう人たちのとこにでも行ってみるか。 暇だし。 ◆◆ あそこかよろず屋って。あの人たちかな。ロン毛とお嬢様っぽいのと少年とわんこ。 どんな組み合わせだよ。 なんか買おうとしたみたいだけど、目的のものがなかったっぽいな。もしかして樹を治す ための材料を探しに行くーとかベタな展開になったりするのかな。だったら、あたしも ついていこうかなあ。暇だし。 「あのーすいません」 「ん?誰だ?」 「もしかして、ハルルの樹を治そうって人たちはあなたがた?」 「そうだけど、君は誰?」 「誰ってまあ、ユカリです」 「ボクはカロル・カペル!」 「あ、そうですかって自己紹介するために話かけたんじゃないんです!治そうとしてるって いうならあたしにも手伝わせてもらえます?」 「そりゃありがてえけど、なんで手伝いしたいなんて言うんだ?」 このロン毛疑ってる!なんか知らないけどめっちゃ疑ってる!あらやだこわーい。 ってどしてそんな疑いの目を向けられなきゃならないんだっつの。素直にありがとうって 言えばいいだろうが。このひねくれ者! 「そうですねー、強いて言うなら暇だから?」 「は?」 「まあほんとは花見しようとこの街に来たんだけど、肝心の花が枯れてるじゃない? でもここまで来たなら見たいし。そしたら枯れてる花を治そうって人がいる。だったら 暇だし手伝うぜ!って感じです」 「ほー」 「ユーリ!せっかくだから手伝ってもらいましょう?」 「と言われてもな」 「急に出てきたらまあ怪しいですよね。あたし、エフティヒアっていうギルドの者です」 「ギルド?」 「そーでーす」 「ボク聞いたことある!女の子一人でやってるギルドで、護衛とか傭兵の仕事は完璧に こなすっていうやつ!でも、その子は相当運がないっていう噂だよ」 「うるせーわ!余計なお世話だっつの!」 「どうやら本物らしいな」 「ユーリ、手伝ってもらおうよ」 「そうだな、じゃ、一つよろしく頼むわ」 「はーい。こちらこそよろしく」 「オレはユーリ・ローウェル」 「わたしはエステリーゼって言います。エステルと呼んでください」 「ご丁寧にどうもー。じゃ、行こうか。ってどこ行くの?」 「クオイの森にエッグベアの爪とニアの実をとりに行くんだよ」 「ふむ、おっけー」 というわけで、ついていくことになりましたー。さっさと爪もいで実を拾って花見を しようぜ花見を。いやー、楽しみだねえ花見! ◆◆ クオイの森に入って探索開始。ま、すぐ見つかるだろうけど。 ハルルで会ったよくわからん3人組は、魔導器の話をしている。別にどうでもいいじゃ ないか、そんなこと。というか、花見をした後はどうしようかなあ。ほんとにノープラ ンだとどこ行けばいいかわからんな。 「ねえ、ユカリは?」 「はい?」 「ユカリも持ってるの?」 「何を」 「魔導器!やっぱり、持ってる?ギルドに所属してるし」 「持ってない」 「持ってないの!?」 「なんでそんな驚いてるのかわからないですな。まったくさっぱりこれっぽっちも」 「だってギルドやってると手に入れるでしょ?1つくらいは」 「まあ、持ってた時もあったけど」 「それ、どうしたの?」 「どーしたもこーしたもぶっ壊れた」 「え!?」 「体質のせいかわからないけど、すーぐぶっ壊れるから、もう持つのやめた」 「ぶっ壊れるって……」 「そういうこともあるんだよ」 別に誰もが持たなきゃいけないわけでもないからなあ。あはあは。 それに、あたしが持ってると壊れるんだし、だったら壊さないで有効活用する人が持っ た方がいいと思うわけさ。いやあ、エコってやつですな。 とか言ってるうちに、ニアの実発見。さっさとエッグベアの爪もいで花見しよー花見。 「あとは、エッグベアの爪、だね」 そうそう、エッグベアを狩ってもいで花見だ。さっさとおびき出そうぜー。 だがしかし、エステルさんとユーリくんはどうやらエッグベアをおびき出すということ を知らないらしい。そんなもんで、ご丁寧にカロル少年が説明。 と同時にニアの実に火をつける。そうすると起こる現象とは、いかに。 「くさっ!!おまえ、くさっ!」 「ちょ、ボクが臭いみたいに!」 「いや、実際臭いから。離れてくれないかな、少年」 「ひどいよ!」 これは犬には相当キツイだろうなあ。いや、人間にも十分効いてますけどね。 さっさと出てこい、ケダモノ。 まだかなまだかなーと待機中のあたしです。相変わらず3人組はわいわいやって楽しそ う。お気楽なんですかね。まあ、人のこと言えないか、あはあは。 「お、吠えてる吠えてる」 「ユカリってばなんでそんな余裕なの!?」 「ケダモノごときで騒ぐな少年。そろそろ来るよ」 「うわわわわわ」 やんややんや言ってるうちに、小さい植物の魔物が出るというフライングの後、本命が 大きな声で登場。 「うわああっ!」 「こ、これがエッグベア……?」 「いらっしゃーい。さ、気合を入れてやっちまおー」 久しぶりだなあ、こういうの!とわくわくしながら、わいわい騒ぐ3人とケダモノ狩り。 「いやあ、なるほど。4人で倒すとあっさりしすぎてつまらんな」 物足りない感にしょんぼりしていると、爪をもぐのにまた一騒ぎ。ほんと、愉快な人た ちですこと。あ、そういえば、犬もいるの忘れてた。ごめんよ。こんどから3人と1匹 にするわ。 「さ、戻ろうぜ」 「やっと花見ができるってもんだね」 「お前は花見をするためにハルルに来たのか?」 「当たり前じゃん。それ以外にすき好んで来ないでしょ」 「まあ、そうかもな」 花見!花見!念願の花見!そうだなー、花見で一杯やるか。酒をかっくらってから、 その後どこに行くか決めようっと! 軽やかな足取りで森を抜けようとした時、変な声が聞こえた。 「ユーリ・ローウェル!森に入ったのはわかっている!素直にお縄につけぃ!」 「この声、冗談だろ。ルブランのやつ、結界の外まで追ってきやがったのか」 「え、なに?誰かに追われてんの?」 「ん、まあ、騎士団にちょっと」 「またまた、元騎士が騎士団になんて……」 なんだなんだ。素直に花見させてくれないってか。こいつら、あたしより厄介なもんに 巻き込まれてんじゃないの?いやだなあ。あたしは自分のことで精一杯だよ。 森には変な声が増えて、ごちゃごちゃ言ってるし、少年は少年でどんな罪?とか問いつ めてるし、めんどくせえったらないわ。 ていうか、こいつも元騎士だったのか。どっかで会ったかな?んー、いや会ってないな。 そういえばさっきも騎士団の話ちょっとしてたわな。魔導器の話んとこで。どうでもい いけど。あたしは花見ができればいいんだ!花見が!あー!めんどくさい! ◆◆ なんとか無事に帰ってこれた。もう、花見したらさっさとこの街出よう。こいつらとい るとロクなことない。離れるが吉。 材料を集めたとかなんとかで、パナシーアボトルを合成してもらってやっとこさ樹を治 すとこまで来たよ。たかだか、アイテム1つ合成するのに時間かかりすぎ。いかに、1 人が楽かということがよくわかったね。うん。 「さー、早く花見だ花見」 「ユカリ、それしか言ってないよね」 「それが目的なんだから当たり前でしょ。早くしてよ少年」 「今向かってるでしょ!」 「ったく、すっかり夜だよ夜!」 「ボクのせいじゃないよ!」 ぶーぶー言ってるうちにハルルの樹の前に来る。そこには、樹を治すという話を聞いた であろう、住人たちが期待を寄せて待っていた。ああ、どうでもいいから早くして。 やっとこさ、カロルがパナシーアボトルを吹っ掛ける。樹が淡い光を放つが、すぐに消 えてしまった。……治らねえじゃん。 ないわーまじ、ないわー。あたしは何しに森まで行ってケダモノを狩ったんだ……。 ショックでうなだれていると、エステルが祈り始める。そんなもんで、どうにかなるん だったら……お? 「エステル……」 「咲いて」 ハルルの樹が治った。治った?治ったのか。まあ、いいか。結界も元通りになったよう だし、花見はできるな、花見。 エステルは力が抜けたように地面に座り込んでしまった。お嬢様が地面に座るんじゃな いよ。座りたいならそれでいいと思うけど。 「エステルよくやった!よし!酒でも飲むかな」 「ユカリ」 「はい?」 「オレたちは事情があって、ここを離れる」 「ああ、そうなの。達者で」 「来ないのか?」 「どこに?」 「いや、そうだよな。元気でな」 「うん、ばいばーい」 いそいそと立ち去る彼らには、まあ理由があるんでしょう。あたしは軽く手を振った。 せっかくの花見だからね。お酒を飲んでわいわいしよー!オンリーワンだが。 「そういえば、あたしの故郷なるものはどこなんだろうなあ」 魔物に連れ去られたのは赤ん坊の頃。当然記憶なんかありゃしない。ということは、 あたしには故郷もないのか。うーん、寂しいもんだね。仕方ないけど。 「故郷にも、この樹のような立派なのがあったんだろうか。いや、ないか」 あったら、あたしはたぶん連れ去られてないだろ。うん。 今日は色々あったなあ。あの3人と1匹も、元気でやってほしいね。うんうん。 「ま、世界は広いから会う運命だったら、また会うだろう。たぶん」 ハルルの街での出会い。 これが今後の彼女にどう影響するのでしょう。彼らとの出会いは、彼女に何かをもた らすのでしょうか。 彼女の冒険はまだまだ始まったばかり。これからの出会いを見守るとしましょう。 |