※生理ネタです^q^
お腹が痛い。とても痛い。腰も痛い。とにかく痛い。
あたしは思うんだ。なぜ女子だけがこの痛みを背負わなければならないのか。
おかしい。おかしい。絶対おかしい。これは神による男女差別だ!
でなければ女子だけが背負うだなんておかしいだろ。理不尽だ。
「まじ腹痛い」
「大丈夫ですか?お薬持ってきましょうか?」
「ありがと、エステル。でももう薬は処方済みさ…」
「そうですか…じゃあ何か温かい飲み物でも持ってきましょうか?」
「おおう、そうしてくれるとありがたい…」
いやまじで死んじゃう。死んじゃうって。さすがに死んでまう。ううううう。
ていうかさ、なんなのほんとに。腰がさ、腰が痛い。お腹でなく腰も痛いんだよ。腰!
わかる!?腰だよ腰!このばかちくしょう!
腰が異次元。異次元in腰。あれ逆だ。腰in異次元だ。もうどっちだっていい!
どっちだって異次元は変わらないからね!
もう、なんだろう。異次元すぎてさ、こう四次元?四次元並?きっと腰からドラえもん
の道具とか出ちゃうんじゃないかな。今なら出せる気がする。もしもボックスくらいは。
いやむしろもしもボックス出したら勝ち戦。
あ、でもドラえもんごと出せちゃうかもしれない。それってもはや天下統一できる。
「死ぬ…」
「大げさだろ」
「殺すぞ男コノヤロー…」
「だってオレわかんないもん」
「ああ、そうだろうYO★わかったらおめえは女子だよ!無駄に髪さらふわってしてんな!」
「なんかいつもよりガラ悪いな」
「あたりめえよ!こうでもしないと、あたし爆発しそう…腰あたりから」
「ふうん」
「興味ねえってか!だったら話かけてこないでほんと頼むよ後生だからああああ」
「ユーリ!今日のは大変なんですからもういじめないでください!」
「へいへい。じゃあ男は退散しますよっと」
「鼻からスイカ出して死んでしまえ…!あ、これは出産のときのあれだった」
「、ホットミルク持ってきましたよ。ほらほらベッドに入って」
「ありがとうおねえちゃあん…ぐすぐす」
あたしの方がお姉ちゃんだけどね!年齢は。でも今は子どもにかえって甘えたいお年頃。
ホットミルクさん、どうかあわれなあたしを救ってください。異次元から。
「はう…なんだか沁みわたっていくようだぜえ。リフレーッシュ!」
「とりあえず今日は安静にしていてくださいね」
「うん、ありがとう。ほんと女って大変ね」
「そうですね。でも女の子ってすてきですよ?」
「まあ、そうかもしれないけどさあ。でも毎回あたしはこれで三途の川のちら見だよ」
「は重いですもんね…、何か軽くする方法ないか調べてきます!」
「おお、頼もしいお嬢さん…!良い報告を待っておりますDEATH」
「任せてください!行ってきます!ちゃんとお腹をあたためてくださいね!」
「おっけー」
と、エステルがあたしのために旅立ちました。
おーいおい。あたしは感動して涙がちょちょぎれちゃったよう。あたたたた。また波が!
痛みの波がざぶーん。防波堤が大変なことになってる!逃げてええええ!
◆
「ん…?」
気がつくと部屋が茜色だあい。夕方!?まじすか。さっきまでお昼だったのに。
なんかお腹空いたなあ。やっとこさ薬が効いてきたのか今は痛くない。腰に若干違和感
あるけど。でも昼よりはマシです。
みんなまだ帰ってきてないしなあ。さみしいわん。わんわん。
コンコンコン、ガチャ
控えめのノックと共にドアが開いた。ていうか返事してないんだから開けるんじゃあないよ。
それじゃあノックの意味ないでしょ、ノックの意味が!せっかく控えめなノックさんなのに。
「ちゃん、起きてる?」
「起きてるーていうか控えめのノック意味ないし声かけたらもっと意味ないよね?控えめ
くんがかわいそうだよ!」
「なーんだ、元気じゃないの」
「元気になったの!さっきまで三途の川の案内役の人と仲良くしゃべってたとこだよ」
「そかそか。んー、でもまだちょっと顔色悪いね?」
「そうかな、自分じゃわかんないや」
「あ、そうだ。お腹空いてない?」
「空いたーぐうぐう鳴っちゃうよ」
「おかゆつくったんだけど、食べる?」
「食べゆ」
「うむ、じゃあ今持ってくるわね」
レイヴンがお見舞いに来たようですね。
しかもおかゆを作ってくれたとは。やさしさをありがとう。どっかの男子とは大違いだぜ。
一番苦しい時に無駄に話かけてきてよーよーよー。女子になってみろってんだよ。
ぷんすかしているとレイヴンがおかゆを持って帰って来た。おかえりおかゆ。じゃないレイヴン。
「ほい、持ってきたよ」
「うわあ、おいしそう!たまご粥?」
「そうよー」
「いただきまーす」
「ちょっと待った!」
「え、なに」
「おっさんが食べさせてあげる」
「別にいいよ。いただきま」
「おっさんがやる!やるったらやる!」
「腹減ってんだよ早く食わせろちくしょう!」
「おっさんにやらせてやらせてー!」
「…わかったよ、はい。おねがいします」
「ふふふ!しょーがないなあ!任せて!」
「なにこれめんどくさい」
自分でおかゆ渡してきたくせに、食べさせたいのかよ!だったら最初からやっておねがい!
それっていわゆる二度手間だからね。二度手間★
レイヴンがベッドの横にいそいそとイスを置いて、サイドテーブルにおぼんを置いた。
で、おかゆをレンゲで掬ってふーふーしはじめた。なにこれ、ちょっと、かわいいじゃねえか。
「よし!はい、ちゃん。あーん!」
「あ、なるほどね。やっぱりそれやるんだ、なるほど。うん、なるほどなるほど」
「ほらほら早く口開けて!」
「……」
「はーやーくー」
「…あーん」
「はい、あーん!」
「…おいしい」
「そらよかった!はい、じゃあ次。あーん」
全部これで食べるの!?恥ずかしいだろ!でもなんか断れない雰囲気。だって、レイヴンが
めっちゃにこにこしてやってるんだもんんんんんん!断れないよ!あたしにはできないよ!
そんな酷なことできないよ!
ので、あきらめてあーんします。あーん。
「ごちそうさま、おいしかった。そして恥ずかしかった」
「お粗末さまです。そして楽しかった」
結局全部やりました。恥ずかしかった。とっても恥ずかしかった。よくがんばった。
そしてレイヴンはずーっとにこにこしてました。楽しかったみたいで、よかったです。
…よかねえわ。よくないんだよ!もう終わったことだから仕方ないけどね。
「顔色もよくなったわね」
「んー」
「眠くなっちゃった?」
「んー」
「そ、じゃあゆっくり寝なさいな」
「んー」
ベッドに再びもぐる。お腹いっぱいだし、身体があったかくてねむねむだよ。
なんか、レイヴンの声が心地いいし。
「ねえ、ちゃん」
「んー?」
「おかゆおいしかった?」
「んー」
「ねえ、ちゃん」
「んー?」
「おっさんのことすき?」
「んー」
「俺もちゃんのことすきだよ」
「んー」
「おやすみ」
「んー………ってまてまてまてえい!!」
「ん?」
「いや、どさくさにまぎれてなにを言ってるんですか、おじさま」
「告白?」
「あ、なるほど告白か。ってこらこら!違うでしょ!なにが俺もすきだよ、だよ!」
「え、だってちゃん、おっさんのことすきって言ったじゃーん」
「言ってねえよ!」
「んーって言ったじゃん!」
「ねむかったからだよ!つまり流れで返事しちゃっただけだよ!」
「…すきじゃないの?」
「は?」
「おっさんのこと、すきじゃないの?」
「え、いや、別にすきとかきらいとかそういう、」
「すき?きらい?」
「……」
え、どういう状況?なにが起こってるの?イマイチ把握デキテナイヨー。ワケワカメ。
どうしてあたしすきかきらいかの2択を迫られてるの?なぜ2択?真ん中ないの?真ん中。
「どうなの、ちゃん」
「どうなのって言われても、あのー」
「どっち?」
ちょ、ちけえよ!どうしてあんたもベッドに乗っかってきてんだよ。じりじりくんな!
ひいいいいい!やめて!こないでええええ!
そしてそんな顔で見んな!こっち見んな!かわいこぶるな!
「どっち!」
「あーえー、すき?な方?かもしれない?」
「ちゃーん!」
「うわあ!あだっ!頭ぶつけた!ゴンッていった!」
「ちゃーん!俺もすきー!」
「いやいやあたしのぶつけた頭を先にいたわれよ!」
すきな方かもしれないと言った途端、大型犬のように飛びついて来たレイヴン。
のおかげでヘッドボードに頭をゴン★ってなった。痛い。
感動してないでいたわれよ!ていうかぐりぐりしてくるのヤメテ!
「ちょ、レイヴンてば!まだかもしれないって言っただけじゃん!というかすきな方って
だけですきってわけじゃ」
「ないの?すきじゃないの?俺はすきだよ」
「急にまじめになんないでよ!恥ずかしいいいい!」
「やっぱりちゃんもすきなんでしょ?」
「えええ!…はい、すきです」
「ちゃんが具合悪い時は俺が面倒みてあげるからね?」
「はいはい、よろしくおねがいしまーす…」
レイヴンに、してやられた気がするんだけど気のせいかな。気のせいだよね?
でも、なんかしあわせだからいっか。